凄まじいまでの緊張感に選手たちは襲われていたと思う。

「3人中2人」が選ばれる今回の代表選考会は、その選考方法もあいまって誰も最後まで安心はできない、そして誰もあきらめることのない熾烈な戦いだ。

2日間にわたる戦いの1日目。クラブ対抗戦(全日本クラブ選手権)も兼ねた6月19日の個人総合でトップに立ったのは喜田純鈴(エンジェルRGカガワ日中/国士舘大学)だった。

喜田は1種目目のフープで、ノーミスのダイナミックな演技を見せ、24.550。さらに続くボールでは25.700というこの日一番のハイスコアをマーク。この前半2種目でのった。

クラブでは惜しい落下が1か所あったが24.550と大きく崩れることはなく、最終種目のリボンでは名曲「リベルタンゴ」にのせてぐっと大人びた情熱的な演技を見せた。ミスの出やすい選手たちにとっては鬼門のリボンだが、この日の喜田は冷静でリボン操作も危なげなく22.550。4種目合計97.350で全日本クラブ選手権個人総合シニア優勝とともに、東京五輪日本代表に向かって大きく前進した。

2番手につけた大岩千未来(イオン/国士舘大学)は、1種目目のボールでは「いつもとは違う緊張感で体が固まってしまった」と言うが、その後の種目ではのびのびと演技し、これまでの試合では自滅することが多かったリボンでも22.200をマーク。得意種目というクラブでは勢い余った感の落下が1回あったがそれでも25.050とポテンシャルの高さを示した。4種目合計96.950は、喜田とは0.4差の僅差だった。

初日に出遅れた皆川夏穂(イオン)にとっては、1種目目ボール冒頭での落下場外のミスがあまりにも大きかった。落下したボールを取り戻すための移動も大きく、20.700。リボンでも細かいミスが散見し、20.800。フープは24.000、クラブでは25.250と健闘したが、喜田、大岩には大きくへこんだ種目がなかっただけに、このミスを取り戻すことができなかった。「残り1日しかない。自分の体と今までやってきたことを信じることが一番。最後まであきらめずにやり切りたい」と会見で語った皆川。「今日は入れ切れなかった技もあり、Dスコアも取り切れなかったが、明日は技を抜いている場合ではない」と最終決戦に向けての覚悟は決まっているようだ。

今回の選考では、2日間の個人総合の得点で高いほうから2選手が選出されるため、皆川も2日目に、96.950(1日目2位の大岩の得点)以上を出せばまだ代表入りの可能性は十分にある。しかし、喜田、大岩が2日目にさらに得点を伸ばす可能性も残っており、苦しい状況であることには違いない。2日目の皆川は、最低でも96.950、可能な限りそれを上回る得点を目指して「攻めた演技」をするしかなくなった。

「日本での演技は緊張する」過去にも、そうコメントすることが多かった皆川は、この日も「久しぶりの日本での試合で、自分の気持ちがどうなるか想定できていなかった。体や技のことばかりに気をとられ、冷静ではなかった」と言った。

8年にも渡ったロシアでの強化。

たまに帰国した際の皆川は常に「強化の成果を見せなければ」という重圧にさらされてきたのだと思う。その責任感の強さが、「日本での試合は緊張する」という精神状態に繋がっているのだろう。

リオ五輪にも出場し、今回の東京五輪の出場枠獲得にも貢献した皆川のことを「強化の甲斐がなかった」と思う人なんて誰もいない。仮に今回の代表を逃したとしても、それは皆川夏穂という先駆者であり、お手本がいたからこそ、喜田や大岩が育ってきた結果なのだ。日本の新体操関係者もファンも、みんな皆川の演技を楽しみにしている。彼女の努力も成長もみんなわかっている。その先によい結果がつかなかったとしても、彼女の存在意義はなんら損なわれることはない。

そのことを忘れずに、自分らしく、自信をもって堂々と、自分のために演技してほしい。日本は、皆川夏穂の「ホーム」なのだから。

新体操日本代表選考会2日目は、本日13時から以下のチャンネルでライブ配信される。日本代表が決まる瞬間をぜひ目撃してほしい。