【新体操】「JAPANで観たい!」vol.11~アツい3年間を駆け抜けた復活・鹿児島純心女子の集大成

2年前は1年生7人だけだった部員も増えた鹿児島純心女子高校

このチームが目に留まったのは、2018年5月の鹿児島県大会個人競技のときだった。

この年は、鹿児島県男子個人の代表争いが激戦で、その取材で訪れていた鹿児島県大会で、女子の演技を見ていたら、目につく選手が多く、それがことごとく鹿児島純心の1年生だったのだ。

調べてみると、この年の鹿児島純心の新体操部員は全員が1年生の7人だった。

※参考記事 2018年5月Gymlove

新体操のオールドファンなら知らない人はいない。

鹿児島純心は、かつての強豪だ。卒業生の中には、現在の新体操強化本部長・山崎浩子氏もいる。

しかし、近年は、インターハイ出場さえも困難になっていた。

2018年の鹿児島純心は、選手たちの平均値が高く、目には留まったが、それでも部員が7人しかいないということからも、当時の鹿児島純心の苦しい台所事情が垣間見えた。

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折しも2019年には鹿児島インターハイ、2020年には鹿児島国体を控えていた。

おそらくジュニア時代から国体に向けての強化は進められてきたのだろう、と感じる選手たちがこの年の鹿児島純心には揃っていた。

そして、私が個人競技を見た翌日に行われた団体で、まさに新生・鹿児島純心というに相応しいオール1年生のチームが、インターハイ連続出場を続けていた鹿児島実業高校を破り、じつに14年ぶりに鹿児島純心団体のインターハイ出場を決めたのだ。

※参考記事 2018年8月Gymlove

この年はまだ「インターハイ出場が嬉しい!」という段階だったと思う。

インターハイでの成績は、18位。

ここが彼女たちの全国でのスタートラインだった。

翌2019年。

1年生が入ってきて、団体メンバーにも入れ替えがあった。

どこのチームにもあり得ることではあるが、1年生のときはメンバーに入っていた選手でも、より有力な選手が入ってくればその座を奪われる。代えられた選手が悪いわけではない。成長だってしている。それでも、本番のフロアに上がれるのは5人だけなのだから。

こういうとき、代えられた選手がくじけてしまうようだとチームの雰囲気は悪くなる。

が、鹿児島純心はそうならなかった。

おそらくそれは、1年生のときから控えだった選手たちの力だ。

1年時から控えだった選手たちは、自分たちは本番のフロアにのるチャンスがなかなか巡ってこなくても、じつに熱心に練習していた。

そんな彼女たちがいたから、一度は選手としてフロアに立っていた選手も、控えに回ったからといって腐っているわけにはいかなかったのだと思う。

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そうして、フロアの外にいる選手たちが、たとえフロアにはのっていなくても、団体の一員としての力をつけようと努力し続けていることで、フロアの中にいる選手たちは覚悟を決めざるを得なかったと思う。練習がつらいとき、うまくいかないとき、「もういやだ」と音を上げれば、いつでも代われるだけの練習をしている控え選手たちがいる。それも、2019年には部員が増え、控え選手の数も増え、レベルも上がっていた。

この環境では、フロアにのっている選手たちは頑張らないわけにはいかない。

鹿児島純心の練習はいつ行っても、ぴりっとした緊張感が漂っている。

そんな中で、彼女たちはずっと、全員が一丸となって努力し続けてきた。

高校の3年間という短い期間に、インターハイが地元で開催されるという幸運はなかなか巡ってくるものではない。

その幸運がときには大きなプレッシャーとなり、選手を苦しめることもある。

が、2019年の鹿児島純心は、この幸運を力に変えて、地元開催のインターハイで、そのときでき得る最高の演技を披露した。

※参考記事 2019年8月Yahoo!ニュース

そして迎えた2020年。

今度は、地元鹿児島での国体を迎えるはずだった。

着実にそこに向けて力をつけ、実績を積んできたこのチームが、そこでどんな活躍を見せてくれるのか。

楽しみにしていた。

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春先に取材に行ったとき、今年の「フープ&クラブ」の作品を見た。

今年の曲は、映画「おもいでの夏」のテーマ曲だった。聴けば誰もが知っている懐かしく、美しい名曲だ。

第二次世界大戦が終わった年・1945年を舞台にしたこの映画の原題は「Summer of 1945」。

鹿児島純心の今年の「フープ&クラブ」を見たときに、これは彼女たちの「Summer of 2020」だな、と感じた。

過ぎてしまったら、もう二度とは帰ってこない。取り戻せないかけがえのない日々。

しかし、その最後の日々は、新型コロナによって思い描いていたものとは大きく違ってしまった。

高校選抜がなくなり、インターハイがなくなり、国体の開催も危ぶまれていた。

どんなに落胆してもおかしくない。

中には自暴自棄になる選手もいるかもしれない。

そんなことも案じていたが、6月になってやっと開催された代替大会で彼女たちが見せた演技からは、「まだあきらめていない!」ことが感じとれた。

※参考記事 2020年6月Yahoo!ニュース

そして、10月に行われた全日本クラブ団体選手権で、鹿児島純心は、見事に2位を勝ち取った。

このときすでに、全日本選手権への出場は2019年度インターハイの実績によって推薦で決まっていた。

上位3チームに全日本選手権出場権が与えられるこの大会で、堂々と出場権を獲得したのだ。

※参考記事 2020年10月Yaho!ニュース

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11月8日。

全日本選手権を目前に控えた鹿児島純心の練習の取材に行った。

いつも通りに、彼女たちはひたすら練習に打ち込んでいた。

いつも通りに、控えの選手たちもフロアの外で、フロアの中の選手たちにも負けない熱量をもって練習していた。

2年前と違うのは、フロアの外にいる選手の数が増えたため、控えの選手たちもちゃんと5人でチームを組んで練習できていたことだ。

この充実した熱い3年間を駆け抜けてきた3年生たちは7人。

一気に7人が抜けた後のチームはどうなるのか? と案じてもいたが、その心配もない。

そう思えるだけの部員がいて、その部員たちも先輩たちの頑張ってきた姿、成し遂げてきたことを間近に見て、同じ練習をしてきている。

この先もきっと、鹿児島純心は簡単に落ちてはいかないだろう。

なにしろ、今年は延期になってしまった鹿児島国体も、2023年の開催が決まったのだから。

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「無謀」に思える目標だって、本気で頑張れば、限りなく達成に近いところまでいける!

この3年間の鹿児島純心は、後輩たちだけでなく、全国の新体操に打ち込んでいる選手たち、指導者たちにも教えてくれたように思う。

このメンバーで演技できる最後の大会を、彼女たちには思い切り楽しんでほしい。

「Summer of 2020」ではなく、もう冬に近い秋になってしまったけれど。

過ぎていく時を慈しむようなあの曲で、彼女たちがこの3年間を愛おしむように踊る「フープ&クラブ」は、きっと見る人の心を動かすに違いない。

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今大会は、無観客で開催されているがライブスコアが一般公開されている。

団体競技が行われる今日、ぜひライブスコアで会場にいる気分をあじわってほしい。

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※全日本選手権のテレビ放送予定は以下のとおり。

「スカイA」全日本新体操選手権放送予定

<撮影:筆者>