※第73回全日本新体操選手権 ライブリザルトはこちら!※

もしもこの夏、五輪が開催されていたなら、今ごろ新体操界はどうなっていただろう。

そんなことをふと思う。

昨年の世界選手権の種目別ボールで初の金メダルを獲得してのりにのっていたフェアリージャパンPOLAが五輪でメダルを獲得する可能性はかなり高まっていた。もしも、予定通りに五輪が開催されていたら、今ごろ新体操はちょっとしたブームになっていたかもしれないな、と考えたりもする。

もしもそうなっていたら、今日から始まる全日本新体操選手権も満員の観客、になっていたのかな、と考えたとき、2020年は本当になんて1年だったんだろうと思わずにいられない。

ただ、過去の例を見ていて感じるのは、トップ選手たちが国際試合で活躍して注目されても、そこにほんの少し届かなかっただけの国内のトップ選手達には、マイナースポーツではなかなか陽が当たらないということだ。

五輪、それも東京五輪でのメダル獲得ともなれば、過去とは比較にならないくらいの注目スポーツになる可能性はあると信じたいが、それが国内の選手たちへの注目にまでつながるのかに関しては、私はやや懐疑的だ。

全日本選手権はいつも素晴らしい。

新体操をやっている選手たちの最高峰の大会であり、みんなこの場に死力を尽くし、それでいてこの場に立てることを心から楽しんでいる。

引退試合にあたる選手も多く、万感の思いのこもった演技をたくさん見ることができる。

そんな素晴らしい大会なのだが、そこで見られた素晴らしい演技も、そこで息づいていた素晴らしい選手たちも、ほとんど報道されることもない。

「新体操=フェアリージャパンPOLA」

悲しいことだが、世間はそういうもの、なのだ。

でも! 本当は、フェアリージャパンPOLAじゃなくても、素敵な選手はたくさんいる! すごい能力を持った選手はいる!

そんなことを伝えたくて、20年近くずっと新体操を追ってきた。

「フェアリージャパンPOLA以外の選手たちのことをもっと多くの人に知ってほしい!」

ただ、それだけのためにやってきたような気がする。

少しは実ったこともある。

が、まだまだ道半ばだと感じることのほうが多い。

自分の非力を呪いたくなることもある。

が、全日本インカレで見た松坂玲奈(東京女子体育大学)の演技。

こういう演技を見ると、ずっと新体操を見てきてよかった! と思う。

そして、こういう選手がいるから、自分はこうして伝え続けているのだ、と思う。

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松坂玲奈は、チャイルドのころから全国レベルの選手だった。

幼いころから能力は高く、とくに手具操作の器用さでは目を引く選手だった。

が、とにかく「技術者」のように淡々とものすごい技をものすごい量、演技中にこなす、そんな選手だった。

「表現力」となると、本人も苦笑、そんな印象だったが、とにかくその手具操作の凄まじさは、まさに「国際レベル」だ。

大学に入ってから、めきめきと力をつけてきていたが、今年のコロナ禍でなぜかますます磨きがかかっていた。

大学で練習できない時期が長かったと聞いていたが、その間は、かなり公園など屋外で練習していたという。

どんな環境でも練習できる、その強さが、演技の強さにもつながっているのかもしれない。

そんな風に感じられる、今年の松坂玲奈の演技。

ものすごく難しいことをしているのだが、もはや本人が楽しんでやっているように見えるところまできた。

これは凄いことだ。

リアルタイムでは見られないことは残念だが、後日のCS放送でもいい。ぜひ見て、楽しんでほしい。

もう一人、「国際レベル」の柔軟性と美しさを持った選手を紹介したい。

今年が最終学年になる立澤孝菜(国士舘大学)だ。

2017年度には全日本チャンピオンにもなっているが、その後、故障で苦しんだ年もあり、やや不運な印象がある。

その不運さも相まってか、演技の印象も静的で美しく、どこか儚げだ。

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そんな立澤選手の最大の武器が「突出した柔軟性」だ。

柔軟性に秀でた選手達の多くがやっている「リングを伴うパンシェ(パンシェの形でつま先を頭につける)」は、どの選手を見ても凄いなあ、と思うし、一般の人から見れば「びっくり人間」レベルだろうが、立澤選手のそれは段違いなのだ。

立澤選手は、今年、大学4年生のため、もしかしたら最後の全日本になる可能性もある。

日本人では稀有な柔軟性と美しさをもったこの選手の演技も、ぜひ見逃さないでほしいと思う。

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※全日本選手権は無観客での開催となる。テレビ放送予定は以下のとおり。

「スカイA」全日本新体操選手権放送予定

<写真提供:日本ビデオアルバム協会>撮影:清水綾子