【男子新体操】「JAPANで観たい!」vol.8~黄金ルーキー・岩渕緒久斗&尾上達哉&遠藤那央斗

左から遠藤那央斗、岩渕緒久斗(ともに青森大学)、尾上達哉(花園大学)

※第73回全日本新体操選手権 ライブリザルトはこちら!※

今年の青森大学は個人選手が充実しすぎている。

全日本インカレ優勝の安藤梨友(4年)、3位の佐藤嘉人(4年)、4位の佐藤颯人(4年)、6位の佐藤綾人(4年)、8位の吉田和真(2年)、9位の城市拓人(4年)、11位の満仲進哉(4年)、そしてルーキーの岩渕緒久斗(1年)も堂々7位に入っている。

今年の全日本インカレは、予選となる東日本インカレがなかったため、はじめから各大学「8」と出場枠が決まっていた。それぞれの大学でなんらかの形で学内選考が行われたのだろうが、青森大学のそれはどんなにか熾烈なものだったのだろうかとこの出場選手の顔ぶれとインカレの結果を見てもわかる。

この8名以外にも、青森大学は「クラブ選手権組」として新体操フェスタ岐阜にも個人選手を多数出場させていた。全日本インカレ出場の学内選考でもれた選手でも、クラブ選手権で上位に入れば、全日本選手権への出場権を得ることができたからだ。

結果、クラブ選手権からも、青森大学の個人選手、清水琢巳(3位)、遠藤那央斗(15位)、山上和輝(17位)の3人が全日本選手権への出場を決めている。(注:クラブ選手権上位5選手に出場権が与えられるが、インカレで出場権を獲得した選手の分が繰り上げになっている)

2019年、高校3年のインターハイで3位だった岩渕緒久斗は、この熾烈だった青森大学の学内選考で「インカレ組」に選出されていた。

高校時代の実績もあり、柔らかくて大きく美しい体操、タンブリングの強さ、安定感など非常にバランスのよい選手であった岩渕は、入学当初から一目置かれる存在だったようだが、たしかに8月の青森での練習を見ても、その堂々たる存在感には圧倒された。「インカレ組」「クラブ選手権組」とフロアを使う時間が分かれていたのだが、「インカレ組」は1年生ならちょっと萎縮しそうなくらいのメンバーが揃っている。そんな中で岩渕はじつにマイペースに、淡々と自分のやるべきことを行える選手だった。

「最後のインカレ」に向けて、4年生たちが目の色を変えて練習している中で、ある意味、もっとも落ち着き払った練習ぶりを見せていたのが彼だ。

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インカレ1日目のリングは、高校時代から演じている作品だった。グレイテストショーマンの「Never Enough」にのせて、どこまでも伸びやかな演技を見せ、17.200。続くスティックは「シンドラーのリスト」で17.425。鮮烈な大学デビューとなった。

後半種目のクラブ、ロープはどちらも17.100と前半種目よりは点数が低めだったが、それでも4種目を17点台で揃える安定感。これが岩渕の強さだ。体も大きく、柔軟性にも秀でているので、とにかく動きの一つ一つが大きく見え、体そのものに表現力が宿っている。まだ「表現にこだわっている」というような演技ではないのだが、表現力が感じられる、こういう選手は珍しい。1年生でインカレ7位はすでにトップレベルの成績ではあるが、まだまだ磨き切っていない、のびしろ十分なのもこの選手の魅力だ。

インカレでは17位と、岩渕には少し差をつけられたが、ルーキーの中では2番目の成績を勝ち取ったのが尾上達哉(花園大学1年)だ。尾上はクラブ選手権にも出場しており、ここでは8位になっている。

尾上は、岩渕とは逆に、ジュニア~高校時代から「表現力」で目を引く選手だった。もちろん、身体能力も高いのだが、それ以上に演技のもつエネルギー量が凄まじく、一度見たら印象に残る、そんな選手だった。岩渕がのびやかでしなやかな演技をするのに対し、尾上はもっとガツガツしたファイターのような演技で、それはそれで彼の魅力だった。

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ところが、大学に進学して初の大会となったクラブ選手権で見た尾上の演技は、まるで別人だった。高校時代にはなかった艶やかさ、柔らかさに溢れていた。大げさな表現だが「華麗な演技」だったのだ。尾上をジュニア~高校時代に清風中学・高校で指導していた木村功監督は、現役時代、非常に美しい演技をする選手だった。今でも過去の選手たちで「最も美しかった選手」として名前があがることのあるくらいのレジェンドだ。その木村が育ててきた選手、ということが、木村の手を離れた大学生になってから、開花したように感じられる。大学生になってから1年足らず、それもコロナ禍で練習は十分にできなかっただろう期間でこれだけの変化を見せたそのポテンシャルには舌を巻くしかない。

短期間で大きくジャンプアップしたと感じたのは、クラブ選手権15位だった遠藤那央斗(青森大学1年)も同様だ。遠藤もジュニア~高校時代から同世代ではトップレベルで岩渕、尾上とは戦ってきた力のある選手だ。ジュニア時代はうまいながらも体が小さく細く華奢な印象だったのだが、高校時代にぐっと体が大きくなった。そして、体の大きさがそのまま演技のスケール感につながってきていた。

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そして、大学生になって初の大会となったクラブ選手権での遠藤は、いきなり大人の演技になっていた。淡々と能力と技を披露するのではなく、一つ一つの動きに含みを感じさせる。クラブでは惜しい落下はあったが、その雰囲気は、青森大学の先輩であり、現在はダンサーとして活躍中の永井直也の後継のようにも感じられた。この選手の大学時代があと3年もあると考えると楽しみでしかない。

岩渕、尾上、遠藤は、昨年も全日本選手権に出場しているがそれぞれ24位、27位、29位という結果だった。高校生が上位に食い込めるほど全日本選手権は甘くなかったという結果だが、じつは昨年の上位陣のほとんどが今年もまだ残っている。そんな中で彼らがどこまで上がっていけるのか、おおいに注目したいと思う。

今年のゴールデンルーキーたちは、個性は違えども、共通しているのは、非常にバランスのいい、オーソドックスな育ち方をしているということだ。「タンブリングだけ」「表現力だけ」「手具操作だけ」といった偏りがなく、すべての能力が高いレベルで揃っている。男子選手には多い、足先や脚のラインなどの欠点も少ない。つまり穴の少ない選手たちだ。本格派と言ってもいい。

こういう選手たちが、大学生になってより技術をつけ、個性を磨き、表現力を発揮できるようになってきたら、今まで見てきた男子新体操のさらに上をいく、そんな領域に達するのではないか。そんな期待をもたせてくれるルーキーたちの健闘に期待したい。

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※全日本選手権は無観客での開催となる。テレビ放送予定は以下のとおり。

「スカイA」全日本新体操選手権放送予定

<写真提供:日本ビデオアルバム協会>撮影:清水綾子