【新体操】「JAPANで観たい!」vol.7~団体、個人ともに充実期を迎えた日本女子体育大学の風格

2020年度全日本インカレ団体総合優勝の日本女子体育大学

※第73回全日本新体操選手権 ライブリザルトはこちら!※

↑ 「新体操NAVI」インカレ後インタビュー動画・清澤選手、団体キャプテンのインタビューも有

今年度の全日本インカレ団体女王の座に輝いたのは日本女子体育大学だった。これで6連覇となるが、昨年が武庫川女子大学と同点優勝だったため、単独優勝は2年ぶり。

しかも、その勝ち方がなかなか圧巻だった。

1日目の「ボール×5」では、ミスで崩れるチームもある中、ほぼ完璧な演技で29.500という高得点をたたき出した。

演技の難易度が反映されるD得点も22.100と高かったが、特筆すべきはE得点だ。E7.400は、この種目で2位だった武庫川女子大学の5.0と比べても2.400も高い。武庫川女子もDは21.000とかなり高かったが、E得点の差が日女との差を大きくした。

この高いE得点は、単に落下や移動がなかったというだけでなく、いわゆる芸術的欠点が少なかったということだろう。

たしかに、この日女の「ボール×5」は、凄みを感じさせるほどの美しさだった。

高いD得点を得るためには、かなりの技を詰め込んでいるはず。となるといかに実施力が高くても、どうしてもバタバタ見えてしまったり、全体が美しく見える瞬間が少なかったりするが、日女の「ボール×5」はとことん美しかった。否定的な意見も多い現行ルールだが、構成の工夫と選手たちの質を上げていくことでこんな作品ができるのだ、と新体操の可能性を感じさせてくれる演技だった。

初日は、当然暫定首位。2位の武庫川女子との得点差は、3.500と最高のスタートを切った。

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2日目の「フープ&クラブ」では、惜しいミスはあった。フープ、クラブそれぞれ1回ずつ落下(それも同時に)があり、「ボール×5」ほど完璧な演技というわけにはいかなかった。が、それでもD19.700、E6.900の26.600をマーク。先に演技をしていた武庫川女子大学が26.150というかなりの高得点を出していたが、ミスが出てもなお、それを上回る点数だった。Dは、武庫川女子が20.000と上回っていたが、落下があったにもかかわらず、Eは日女のほうが高かった。それだけ芸術性と実施力が抜けているということだろう。

もちろん、今のルールでは、ひとつ大きなミスが出れば、点数は大きく変わる。

インカレ女王・日女といえど、全日本を勝ち切ることは容易ではないはずだ。

しかし、インカレで見た日女団体の強さには、かなり確固たるものがあった。今回もその強さを見せてくれるに違いない。

全日本インカレでの日本女子体育大学は、個人でも強さを見せた。

2位に清澤毬乃(4年)が入った。清澤は、ジュニア~高校時代から線の美しさでは目を引く選手だった。が、同じ長野県に1学年上の猪又涼子という大選手がいたため、どうしてもその影になってしまうところのある選手だった。

それだけに、清澤にはよくも悪くも「トップを走り続けてきた選手」にはないのびやかさ、素直さ、無邪気さがある。

そこが彼女の魅力であり、大学最後の年まで進化し続けられた理由なのではないかと思う。

インカレでは1日目のフープ、ボールを見事に決めた。どちらも会心の出来と言えそうな演技で19.800、19.200と2種目19点台を並べた。

2日目のクラブも少し慎重になっていることは感じられたが、明るくキュートな曲にのせて、生き生きと踊り、見せ場のスローなターンも決まり18.650。おそらく清澤毬乃史上最高の3種目だった。

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ラストのリボンも、前半は素晴らしかった。このままいくな~と思わせる勢いのある演技だった。が、後半になってリボンの操作に乱れが出た。細かいミスが連鎖し、最後には結び目を作ってしまった。15.850は、今大会の清澤にしては痛恨の得点だが、リボンは他の選手もミスが多く点数を伸ばしきれなかったのが幸いした。終わってみれば、リボンでも6位にあたる得点で、個人総合2位という過去最高順位を獲得したのだ。

日本女子体育大学には書籍の撮影でかなり行く機会が多かった。清澤にもかなりモデルを務めてもらったこともある。撮影のときのやりとりを通して強く感じていたのは、彼女の無欲さだった。何位になりたい、とか何点取りたいというこだわりがない。ただ、純粋に「自分がどこまでやれるのかな」と、未来の自分を楽しみにしている。そんな選手だった。ビッグタイトルには縁がなかったのはその無欲さゆえんかもしれない。が、おそらく。どうしても力が入ってしまいがちな「大学4年生のインカレ」で、これだけ力を出せたのもまた、その無欲さゆえなんじゃないかと思う。

明日からの「最後の全日本」にも、どうかいつも通りの無欲で無邪気な笑顔で臨んでほしい。そうすればきっとその魅力を100%発揮できるに違いない。

清澤に続き、個人総合3位となった柴山瑠莉子(2年)は、この大会を通じて「なにか」をつかんだように見えた。

柴山は、大学1年生だった昨年のインカレでも個人総合3位。昨年はアジア新体操選手権の日本代表選手にもなっている選手なので、インカレ3位に驚きはない。

が、この1年の間に、柴山は練習環境に大きな変化があり、かなり調子を落としていた時期もあったと聞いている。それでも、インカレに出場できるところまで調子を戻してきた。まず、そのことが嬉しかった。

そして、1日目のボール、フープと、緊張感は伝わってくる演技ではあったが、大きなミスなくまとめた。とくにボールは、柴山の懸命さが痛いほど伝わってきた。この演技がまとめられた瞬間に、「新体操の神様はきっといる」と思えた演技だった。

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2日目のリボンは、マイケル・ジャクソンの「ビートイット」。今までの柴山にはない選曲だったが、今の彼女にはこの曲がはまった。いや、はまったというのは正確ではないが、この曲で踊ることをきっかけに新しい自分を模索していることが伝わってきた。ビートのきいた曲にのせられるように演技中に笑顔がこぼれた。本来の表現者たる柴山なら、もっともっと音をつかんで踊れるはずだ。きっとこれはまだ完成形ではない。でも、いつかホンモノの笑顔でホンモノの「ビートイット」を柴山瑠莉子は見せてくれると思う。

3種目、大きなミスなく乗り切ったことで、最終種目のクラブでは、柴山らしさがかなり戻ってきたように感じた。1日目の緊張感がかなりほぐれ、いつもの音が聴こえてくるような演技を、彼女は取り戻しつつあった。

全日本インカレでつかんだ「なにか」を忘れなければ、全日本選手権での柴山瑠莉子は、今までとは違う輝きを見せてくれるだろう。

そう信じていいと思う。

この他、日本女子体育大学からは、全日本インカレ7位の関谷友香、8位の五十嵐遥菜、13位の植松桃加、15位の中村花が全日本選手権への出場権を得た。1大学から6人の出場は、女子では東京女子体育大学と並んで最多だ。

団体も個人も。

充実の時期を迎えている日本女子体育大学は、全日本選手権でも旋風を巻き起こせるか期待したい。

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※第49回日本女子体育大学新体操部演技発表会(ライブ配信有)の情報はこちら。

※全日本選手権は無観客での開催となる。テレビ放送予定は以下のとおり。

「スカイA」全日本新体操選手権放送予定

<写真提供:日本ビデオアルバム協会>撮影:清水綾子