【男子新体操】「JAPANで観たい!」vol.6~ 城市拓人&満仲進哉(ともに青森大学)の克己心

2019年度インカレ準優勝・城市拓人(青森大学)は全日本に雪辱を懸ける

 今年9月に行われた新体操フェスタ岐阜・男子新体操クラブ選手権個人総合2位になったときの満仲進哉(青森大学)の演技は素晴らしかった。男子選手としては異質なまでの柔軟性を存分に生かした、音楽性の感じられる演技で、他の誰とも違う個性が輝く演技だった。

※参考記事「2020年男子クラブ選手権」

 しかし、10月の全日本インカレでの満仲は、初日につまずいた。1種目目のスティックでは2回の落下があり15.900。上位争いの選手たちは17点台にはのせている中でのこの得点は痛かった。2種目目のリングはなんとかまとめて17.200。それでも岐阜で見せたパーフェクトな演技とは少しずつ違っている印象は否めなかった。

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 2日目、最初の種目ロープは気迫のこもった好演技。ノーミスだったが、細かい減点がされやすい種目だけに得点は17.200にとどまったが、落下2回という最悪のスタートで始まったこの大会だが、なんとか上位に踏みとどまろうとする執念は感じられた。

 圧巻だったのは、最終種目のクラブだ。高校生のときから演じ続けてきた、「僕の新体操人生を変えてくれた」とリスペクトする先輩・松田陽樹(2012全日本チャンピオン)の作品を、彼は万感の思いを込めて演じ切ったのだ。見慣れた演技ではあった。それでもまるで「こんな演技は初めて見た!」と感じさせるものがあった。得点は17.625。

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 4種目終わってみれば、11位につけていた。クラブ選手権での2位から思えば、不本意な順位かもしれない。が、初日のスティックの得点を見た瞬間は、「これは18位以内(全日本出場権獲得ライン)も危ういかも」と思われたところから、よく巻き返したと言える順位だ。

 クラブ選手権2位の満仲は、仮にインカレで18位以下に沈んだとしても全日本選手権の出場権は確保していた。だが、やはり「インカレ18位以内」には入り、文句なしに全日本に進みたかったのだろうし、なによりも、クラブ選手権でやっと発揮できた自分の力を出し切れずに最後のインカレを終えたくない! 彼のそんな気持ちが演技からズンと伝わってきた。

 満仲をジュニア時代に指導していた山下智也コーチ(Leo RG)は、「(同期の)堀孝輔に負けないくらいの素質はある選手だった。ジュニア時代はそれを生かしてやれなかった」と語ったことがあった。故郷・三重を離れ、青森山田高校に進学してからは、インターハイやユースチャンピオンシップに個人選手として出場し、入賞する選手に成長。さらに青森大学でも力をつけてきた。8月に青森大学の練習を取材したとき、満仲は絶好調だった。一分一秒を惜しむように練習していた他の選手たちも、満仲が通すときは手を止めて見ていることがある、それくらい「惹きつけるもの」のある演技をしていたのだ。

 だから、クラブ選手権での躍進は、当然といえば当然だった。むしろインカレの1種目目でつまずいたことに驚いたが、もともとの彼はそういえば浮き沈みの激しい選手だったと思い出した。「凄い!」と思う演技を見せたあとに、途中からあきらめたようにも見える覇気のない演技をすることもあった。そのむらっ気ゆえに、抜群の能力は持ちながらも安定して上位に入る選手、ではなかったのだ。

 最高の演技と結果だったクラブ選手権の1か月後の試合の1種目目で2回落下、はある意味、昔から満仲進哉が持っていた「脆さ」だったとも言える。しかし、青森に行って7年目、大学の最終学年まで粘り強く新体操を続けてきた満仲は、その「脆さ」もほぼ克服していたということを、残り3種目で示してくれた。これこそが、支え続けてくれた人、応援し続けてくれた人にとっては、一番見たかったもの、だ。

 学生として、あるいは選手としても、かもしれない「最後の全日本選手権」で、「脆さ」が一度も顔を出さない4種目を見せることができれば、それはまさに満仲進哉の集大成となるのではないか。今の彼なら、それをやってのけてくれる。そんな予感がしている。

 2019年の全日本インカレでは準優勝という、自己最高順位を得た城市拓人(青森大学)は、最後の年である2020年に懸けていた。昨年2位だったとはいえ、なにしろ強い選手が目白押しの同級生たちの中で昨年同様、あるいはさらに上の成績を残すことは容易ではない。それは重々承知の上で、8月に青森で会ったときの彼は「日本一になりたい!(安藤)梨友にも負けたくない!」と公言していた。そしてそう言うだけはある、と思える練習をしていた。そして、10月の全日本インカレを迎えた。

 1種目目のスティックは、すでにおなじみになっている「ニューシネマパラダイス」の曲にのせた、城市のしなやかさや手具操作の繊細さ、多彩さが存分に発揮できた演技だった。自分の良さ、強みをよくわかっている、と感じさせる演技で17.600。トップ争いに食らいつける得点が出た。

 ところが2種目目のリングで、落下のミスが出る。ただ、これは悪くない演技だった。曲を「カルメン」だろうか、クラシカルなものに変え、攻めた演技内容だった。攻めた結果のミスで次に繋がるとは感じたが、16.500。昨年以上の結果も、と意気込んでいた城市にとっては厳しい点数になってしまった。

 2日目の1種目目・ロープでは、片端を取りこぼす場面もあったが、必死さは伝わってきた。城市もまたズルズルと後退はしたくない! という意地の見える演技ではあったが、得点は16.550。

 城市は、クラブ選手権に出場していなかったため、全日本選手権出場のためには、インカレ18位以内は必須だった。スティックでの貯金はあるものの、16点台が2種目続くと、最後の種目・クラブで大崩れした場合は、18位以下に沈む可能性もなくはなかった。それだけ中盤の選手たちの得点差はつまっていたのだ。最終種目に向かうときの城市が、それを意識していたかはわからない。

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 結果的に、城市の最終種目・クラブは、一応「ノーミス」だった。投げ受けには危ないところが何か所かあったが、なんとかクリア。落下にはならなかった。そして、彼の代名詞ともいえるこの作品「You raise me up」の世界観を絶対に壊さない! という執念が感じられる演技だった。細かい減点は免れないだろう部分はあったので、得点は17.300に留まったが、彼がこの作品で見せたかったものは出し切れたのではないか、と思える演技だった。

 4種目合計による最終順位は、9位。今年に懸けていた城市の気持ちを思えば、到底納得できる成績ではなかっただろう。リングやロープでのミスは悔んでも悔やみきれなかっただろうし、クラブで少しずつ綻びが出てしまった自分に腹が立っていたかもしれない。

 が、満仲同様、城市も危うく「永遠に未完の大器」で終わるかもしれない選手だった。ジュニア時代は、なんとなく華のある選手ではあったが、大会で見るたびにミスをしていて目立った成績は残していない。高校時代には、近畿大会などで存在が話題にはなっていたが、全国の舞台ではやはりミス、あるいは故障による途中棄権など、なかなかそのポテンシャルを開花させられないまま大学生になった。

 親元から離れた青森での寮生活でやっていけるのか? そんな不安があったことは否めない。1年生時は、全日本インカレには進めていない。しかし、2年生になると、全日本インカレ11位という上々の位置につけ、全日本選手権への出場も決めた。しかし、このときの成績を見直してみると、個人総合ではリング3位、ロープ9位にあたる得点を得ている。が、スティック、クラブがこのときは足を引っ張り11位。ジャンプアップした年ではあったが、安定感という点では今一歩、だった。この年の全日本選手権でも11位となった城市だが、今度はインカレとは逆にスティック8位、クラブ4位という得点をマークしながら、リング、ロープが沈んでの11位。なかなか4種目ノーミスで揃えることができなかった。よい種目ではメダル圏内の点数が出るだけに、「未完の大器」という印象が強く、「4種目揃えられば、トップ争いに絡めるだろうに」と言われてきた。

 そして、それが現実になったのが3年生時のインカレだった。スティック、リングが3位、ロープ、クラブが2位という高値安定の試合で、総合2位。「4種揃ったときの城市拓人」の力を見せつけてくれたのだ。

 だから、今年のインカレでの9位にも落胆することはない。失礼な言い方ではあるが、それが城市拓人のデフォルトだ。なかなか4種揃わない、揃わなければこのくらいの順位。今までもほとんどそうだった。

 だからこそ。

 もしかしたら最後の試合なのかもしれない全日本選手権で、「4種揃った城市拓人」をもう一度見たい! そう願うことを許してほしい。無用なプレッシャーをかけたくはないが、そう願ってしまうのだ。その結果、どんな順位がついたとしても、きっとみんなハッピーな気持ちになれるはずだ。

 満仲進哉も、城市拓人も、高いポテンシャルがありながら、出し切れない時期が長かった選手だ。そんな選手たちが最後に、自分に打ち克つ姿を見せてくれたら、きっと「新体操って最高!」と思えるに違いない。

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※全日本選手権は無観客での開催となる。テレビ放送予定は以下のとおり。

「スカイA」全日本新体操選手権放送予定

<写真提供:日本ビデオアルバム協会>撮影:清水綾子