【男子新体操】コミカル演技で毎年人気の鹿児島実業男子新体操部が、ついに始動!

タンブリング練習に入る前にフロア脇に整列する選手たち

2020年6月7日。

鹿児島実業高校の体育館では、男女新体操部、バスケット部が練習していた。

館内は活気にあふれ、ほんの数週間前まで部活禁止になっていたとは信じられないような、そんな「いつも通り」の光景だった。

しかし、実際は、違っていた。

鹿児島実業男子新体操部の樋口監督によると、

「コロナの感染拡大が広がった2月後半から、5月下旬まで、部活は禁止でした。学校も休校になり、選手たちはそれぞれ自宅でのトレーニングでできる限り、力が落ちないようにやってくれていましたが、集まって練習できるようになったのはつい最近です。」とのことだ。

今年は、新入部員が8人も入り、11人の2年生、5人の3年生と合わせると24人!(女子マネージャーも3人いる)

部員数の多さでは、全国の男子新体操部でも屈指ではないかという賑わいだ。

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この日は、日曜だったので、さらに鹿実RGとして活動しているジュニア選手たちも練習に参加していてじつににぎやかだった。

おそらくまだ体育館で練習できることの喜びが大きいのだろう。

どの選手も意欲的に練習していた。が、いつもとは違うことも多かった。

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本来なら6月には、高体連の九州ブロック大会が行われるはずで、そこにインターハイの出場権がかかっていた。

6月1週目の日曜となれば、例年ならばもう通し練習で完成度も上がっていなければならない時期だ。

ところが、この日の鹿児島実業は、朝9時から始まった練習で、延々と基礎トレーニングを行っていた。

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ストレッチ、縄跳び、アイソレーション、体幹トレーニング、筋トレ、アップ(マット運動)。

これらのトレーニングを終えたときには、11時を過ぎていた。

そこからフロアの対角線を使ってのタンブリング練習。これも長い。

それぞれの選手が、自分のレベルに合った、そして、そこから少し上げていけるように、様々なタンブリングをやっていた。

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まだバク転ができない生徒は、腰に柔道の帯を巻いて、補助をしてもらいながら練習していた。

また、ワンランク上の技に挑戦するために、帯を巻いて補助をしてもらっている生徒もいた。

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補助には、樋口監督が入る。

帯で選手を支持しながら、選手と同じスピードで走る。

そのエネルギッシュな姿は、10年前、初めて鹿児島実業の取材に来たときとなんら変わっていなかった。

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あのころは、新入生が入ってやっと部員が6人だった。

新入部員はみんな初心者で、その子たちもこうやって帯を腰に巻いてバク転の練習をしていた。

鹿児島実業男子新体操部の知名度は、あのころとは比べものにならないくらいに上がり、部員も増えた。

が、おそらく樋口監督の本質は変わっていない。

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「この練習自粛期間や、大会や演技会など様々な発表の機会を失ったことは、もちろん残念なことではあります。

でも、うちのチームにとってはよかった面もあると感じています。今までは演技会や、大会に追われるところがあったのが、今年はじっくり基本をやる時間がありました。これは今後に繋がってくると思っています。」

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3か月近く体育館で練習できなかったこと、高校選抜大会もインターハイもなくなってしまったことさえ、樋口監督は前向きにとらえていた。とは言え、とくに3年生のことを思えば胸は痛む。

「鹿児島では6月20日に、高校3年生中心のメモリアル大会が開催されることになっているので、そこには3年生が全員出る団体を出します。演目は、彼らが1年生だったとき、最初にやったウルトラセブンを本人たちの希望でやります。

 日本体操協会もWEB選手権開催を承認したようなので、詳細を見て、可能であれば、これにも3年生を中心にしたチームで出ようかと考えています。インターハイはなくなってしまいましたが、いつもとは違う形で思い出になるような演技を3年生にさせてやりたいと思っています。」

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キャプテンの吉留大夢(3年)にも話を聞いた。

「部活ができなかった間は、チームの仲間とメニューを決めて、各自が自宅でトレーニングをやっていました。

昨年は地元開催のインターハイだったので、出場はできましたが、九州大会での成績は5位。開催地じゃなかったら出場を逃している順位でした。それが悔しくて、今年は絶対に九州大会でインターハイの出場権を勝ち取って出るんだ! と練習を重ねてきたので、九州大会もインターハイもなくなってしまったことは残念でした。

でも、自分は、大学でも新体操を続けたいと考えているので、気持ちを切り替えて、今年を大学に入ってからの準備の期間だと考えるようにしていました。大会が目の前にあるとできないような練習にも取り組んできたつもりです。

ここにきて、メモリアル大会やWEB選手権など目標ができたことは嬉しいです。チームで1つの目標に向かって一緒に練習できると、練習の質も上がってくるので、とてもありがたいです。先生に見てもらい、指導してもらえるありがたさも改めて感じています。」

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インターハイがなくなった悔しさはあっても、彼はしっかりと前を向いていた。

「WEB選手権に向けての演技は、自分たちで話し合って考えています。もしも出ることが決まったら、やっぱり鹿実の演技はいいなあ、と思ってもらえる、鹿実らしい演技を見せたいと思っています。」

例年とは違う夏ではあるが、新たにできた目標に向かって。

鹿児島実業は、走り始めていた。

ただ悔しかった、残念だっただけでは終わらない。

他の年では経験できなかった「最高の夏」を自分たちの手でつかむために。

<写真撮影:筆者>