【体操&新体操】コロナの恩恵? アスリートたちが続々とYouTubeデビュー!

徳洲会体操クラブの公式チャンネルではチーム対抗戦を配信

体操、新体操の世界は、比較的保守的な印象がある。

とくに日本の場合は、スポンサーの関係もあるのか、体操競技も主要大会はテレビ放送はされるが、ライブストリーミングもなければ、体操協会による動画公開もほとんどない。新体操に至っては、テレビ放送もほとんどなく、近年は、CS放送のスカイAが、精力的に放送してきていたが、それもここにきて取り上げる大会が減ってきている。

海外で行われるワールドカップなどは、ライブストリーミングのあるものが多いので、どうかすると日本の選手でも海外派遣される選手だと、海外の大会での演技のほうが見る機会が多かったりする。

動画を配信することによる弊害も考えられなくはない。だから、あまり協会も積極的にはなれないでいたのかもしれない。

であれば、それが規範となり、選手やクラブがそれぞれに発信することも憚られる、そんな雰囲気に支配されていたようにも思う。

そして、結果的には、違法アップロードをしているようなYouTubeのチャンネルが再生数を稼ぐ、そんな構造になっていた。

それが、コロナショックで一気に変わった。

とくに、体操はこのところ、急激に動画による配信が増えた。

代表的なのが、徳洲会体操クラブの監督である米田功氏のチャンネルだ。

ラジオ体操など、おそらくクラブ生たちを対象とした親しみやすい動画もあるが、まるでオンライン授業のような趣で、米田氏が、アスリートに必要な様々な考え方を語る動画や、インタビュー動画もあり、興味深い。

さらに、先日アップされていたのが、徳洲会体操クラブのチーム対抗戦の中継動画だ。

こちらは、2時間超の超大作だが、これだけのハイレベルな選手たちの演技がこれだけたくさん見られることは、選手、種目が見られるのは、相次ぐ大会中止により極度の体操観戦不足に陥っていたファンにとってはありがたいだろう。米田氏によるテレビ中継さながらの解説もついており、練習もままならない状態にいる選手たちにとっても、おおいに参考になるに違いない。

ここにきて、急激に動画による情報発信が増えたた理由を、米田氏に聞いてみた。

「まずは、うちのクラブで体操を習っている子たちの体操に対する気持ちを維持しなければ、という必要に迫れたということがあります。

『米田功体操クラブ』というチャンネルは、それを主目的にしてやっています。」

※米田功体操クラブ

チーム対抗戦など、その他の動画配信に関しては、

「以前からこういったものを発信したほうがいいと思ってはいたんですが、今まではそこまで必要に迫られていなかったんです。例年なら、今この時期も代表選考戦の最中ですし時間もなかった。ただ、今回は時間ができたこと、体操クラブなどの配信を通して技術もついてきたこと。さらに、春の大会が延期になり、体操が話題にのぼることがない時期が長くなってしまうことへの危機感もありました。体操を見たい! と思ってくださっている方に応えたいという思いもあります。」 と言う。

五輪や世界選手権になれば、金メダルが期待され、話題にもなり、テレビ放送もある。

体操競技は、ややそのことにあまんじていた面がある。米田氏の発言からもそれはうかがえる。

が、これからはそうはいかない。

コロナ後の不確定な時代には、体操競技といえど生き残っていくことは容易ではないと思われる。

観るスポーツとしても、子ども達が習うスポーツとしても、選ばれるための努力は必須となってくる。

若い選手たちの間では、その思いから発信に動く選手も増えてきた。

かねてよりアグレッシブな今林開人選手は、個人のYouTubeチャンネルを開設。

また、今林選手と順天堂大学から同期の野々村笙吾選手が語り合う動画も、順天堂大のモチベーションビデオを手掛けてきた「Athelete Life」で配信されている。

さらに、こちらはまだ動画はアップされていないが、徳洲会体操クラブ所属の3選手が「HAND STAND MAN」というチャンネルを開設している。体操界きってのエンターティナー・長谷川選手もからむこのチャンネルが、どんな発信をしてくれるのか楽しみだ。

※HAND STAND MAN(岡準平選手・長谷川智将選手・武田一志選手)

新体操でも、コロナによる活動自粛期間に、多くの発信が行われた。

もっとも精力的に、かつ実用性の高い配信を続けてきたのが東京女子体育大学新体操部・秋山エリカさんだ。

自分のクラブでオンラインレッスンを実施するだけの余裕がないクラブでは、この秋山さんの動画がおおいに活用されていたとも聞く。

秋山さん自身、「自分が教えている選手かそうじゃないか」という区別なく、少しでも多くの新体操をやっている子ども達に届けたいという思いで配信を続けてきたという。思いは通じているのだ。

※秋山エリカチャンネル

秋山さんの教え子でもあり、2019年で競技生活から引退したばかりの藤岡里沙乃さんも自身のYouTubeチャンネルを開設した。

まだ2本の動画しか上がっていないが、1本目は自己紹介的な内容から自身の演技動画も公開。2本目は現役時代に行っていたトレーニングを公開している。今後もトレーニングや、新体操のことをより多くの人に知ってもらえるような動画を配信していきたいと言う。

「新体操は素晴らしいスポーツだと思っているので、もっと多くの人に見てほしい、知ってほしいと思います。そのために自分にできることはなんだろう、と考え、できることはなんでもやっていきたいと思っています。」と藤岡さんは意欲的だ。

男子新体操でも、2012年には全日本チャンピオンにもなった松田陽樹さんのYouTubeチャンネルがある。

現在は、BLUE TOKYOでパフォーマーとして活動するほか、パーソナルトレーナーとしてボディメイクの実績も着々と積んでいる松田さんのチャンネルには、男子新体操以外の話題もあるが、元チャンピオンならではの話も配信されていて、現役選手にはおおいに参考になりそうだ。

松田さんも参加した「チャンピオンによる座談会」の動画を配信しているのが、「全日本新体操オンライン演技会ONE」の公式チャンネルだ。こちらには、元インターハイチャンピオン・祝陽平氏の表現力トレーニング動画も上がっているが、なんといってもこの座談会動画は貴重だ。個人総合で全日本のタイトルを獲ったことのある4選手の話は、「勝てる選手」になるための示唆に富んでいる。現役選手、指導者にはぜひ見てもらいたい。

そして、最後に紹介するのは、「男子新体操OBカップ」だ。

つい先日、日本体操協会による「男子新体操WEB選手権」の開催も発表になったが、これはそのさきがけとなったWEB大会だ。

男子新体操OBの4人が集まり、インターハイをはじめ各大会の中止で落胆しているだろう後輩たちのモチベーションをなんとか上げよう、自分たちにできることを! と動き、実現したこの大会。

第1回は、すでに動画公開中で、投票は本日(6/6)が締め切りとなっている。

よいと思った動画に「高評価」を押すだけで一票を投じることができるので、ぜひ今日中に動画を見て、お気に入りの演技に「高評価」を押してほしい。

出場しているチーム、選手、そして企画したOBたちの気持ちがひとつになって踏み出した大きな第1歩だったと思う。

※第1回男子新体操OBカップ

体操競技、新体操、男子新体操ともに、見ればきっと感動できる。ファンになる人も多い。

それだけのポテンシャルをもったスポーツだと思う。

が、今まではそれが届く範囲が狭かった。広める努力をする余裕がなかった。

これからきっとそうじゃない。たとえコロナは収束しても、この流れはきっと不可逆だろうし、そうあってほしいと思う。