【新体操】ついに夏の甲子園も中止! 2020の悲劇に直面しても自ら立ち上がった昭和学院のスピリット

インターハイの中止決定後に、昭和学院高校の運動部の生徒たちが制作した動画

2020年5月20日、夏の高校野球の中止が決定した。

スポーツに限らず、合唱や吹奏楽、競技かるたなど、あらゆる部活で春以降の全国大会、さらにその予選大会もほとんどが中止になり、高校生活の多くの部分を部活に懸けてきた生徒たちには、慰めや励ましの言葉のかけようもない。

「これで人生が終わったわけではないから前を向いて」

そんな正論を当事者である若者に軽軽しくぶつける気にはとてもなれないし、仮に高校生たちがやさぐれた気持ちになったとしても、それを「甘えだ」と切って捨てる気にもなれない。こんな悲劇は初めてのことなのだから、誰も乗り越えた経験はない。自分の経験を楯に偉そうに意見する資格など誰にもないのだ。

大きな目標を失った高校生たちに対して、なにもできることがない無力さに苛まれていたが、ある動画に元気をもらった。

全国レベルの運動部を数多く抱える昭和学院高校(千葉県)の公式ホームページで紹介されていたこの動画だ。

昭和学院高校の新体操部は、コンスタントに全国大会で上位に入る強豪チームだ。

2018年はインターハイ優勝。昨年は6位入賞にとどまったが、それだけに今年のインターハイでの王座奪還に懸ける思いは強かったと思う。そして、それを成し遂げられそうな戦力も備わってきていた。

しかし、その夢は戦わずして費えることになってしまった。選手たちの落胆、絶望は想像に難くない。

落胆していたのは選手だけではない。昭和学院を率いる塩屋恵美子監督も、今年のインターハイは自らの出身地である群馬県での開催だという縁もあり、例年以上に、「2020年のインターハイ優勝」には思い入れがあったという。

元来、選手との一体感が非常に強いチームだけに、選手たちにつらい思いをさせている、という状況に、いつもは太陽のように明るい塩屋監督でも笑顔を作ることも難しいほどの傷心ぶりだったそうだ。

インターハイの中止が決まった日。

選手たちも泣き、保護者も泣き、いつも応援してくれていた先生たちも、塩屋監督も泣いた。

演技後の選手たちを笑顔で迎える塩屋監督。インターハイでは恒例の姿だった。
演技後の選手たちを笑顔で迎える塩屋監督。インターハイでは恒例の姿だった。

だが、先に立ち上がったのは選手たちだった。自分たちもどんなにか落胆していただろうに、そんな自分たちのために心を傷めている監督や学校の先生たちを元気づけたいと、リレー動画を作成。

その動画が好評で、「元気が出た」という先生方の反応があり、新体操部以外の運動部にも声をかけ、作成したのがこの動画だ。

新体操部のほか、バスケットボール部、ハンドボール部、バレー部、ソフトテニス部が参加しているが、いずれも全国レベルで活躍している強豪チーム。当然今年のインターハイ出場、さらにはそこでの全国制覇もと日々練習を積んでいた仲間たちだ。

それぞれの競技に打ち込んできたからこそ、インターハイの中止で絶望を味わったはずの高校生たちが、ひとしきり泣いたあとは、「つらいのは自分たちだけではない」と気づいた。自分たちのために、いつも心を砕き、汗を流し、指導し応援してきてくれた監督や学校の先生方の気持ちにも思いを馳せることができたのだ。

おそらくそれは、日頃から「選手の思いを尊重した指導」があり、選手と指導者がお互いに思いやり、信頼し合う関係ができていたからこそだ。さらには、学校全体で運動部の活躍を応援してくれていることを選手たちが感じられていたのだろう。

今の高校生、とくに3年生は、どんなに落ち込んでも、泣いても、やさぐれても無理もないと思う。

それでも、自ら立ち直り、周りを元気づける側になろうとする、そんな高校生たちがいるということに大きな希望を感じる。

かつてない悲劇に見舞われた今の高校生たちは、人の痛みを思いやることができ、コロナ後の世界を明るいものにする力をもった世代になっていく、そんな予感がする。

<写真提供:清水綾子>