【新体操】喜田純鈴、種目別ボールで銅メダル獲得!~グラシアカップ(ハンガリー)

ボールで種目別決勝銅メダルを獲得した喜田純鈴(写真は2019全日本のもの)

2013年11月、中学1年生で全日本新体操選手権個人総合準優勝を勝ち取った喜田純鈴は、そのときから「東京五輪の星」と称されてきた。

ジュニア時代の喜田純鈴
ジュニア時代の喜田純鈴

ジュニア時代は当然のように全日本ジュニアを3連覇。

2017年からは特別強化選手として、ロシアでの長期合宿に入り、ワールドカップ、アジア選手権、世界選手権などに出場。

2016年全日本選手権
2016年全日本選手権

いわば世界デビューとなった2017年は、6月のアジア新体操選手権では個人総合4位(皆川夏穂が2位)、9月の世界選手権では決勝進出し個人総合12位(皆川が5位)、種目別フープでは決勝進出を果たし、7位となった。

世界選手権直後、日本での凱旋試合となったイオンカップでは、皆川の6位を上回り、個人総合5位。

「東京五輪の星」の前途は洋々たるもの、に見えていた。

2017年イオンカップ
2017年イオンカップ

しかし、2018年に入ると暗雲が垂れ込めてきた。

古くからの故障を悪化させ、思うように練習できない日々が続き、2~4月に予定されていたワールドカップシリーズを欠場。

4月には大岩千未来(イオン)が、世界選手権代表の座を国内予選で勝ち取り、喜田との「日本の二番手争い」が熾烈になった。

十分に復調しておらず大会出場もままならなかった喜田には、精神的にもかなりきつい時期ではなかったかと思う。

この年の8月。

喜田は、「再起を懸けて」全日本クラブ選手権に出場。国内選手の中に混じっての個人総合10位という成績は、かつての喜田なら考えられないものだったが、この大会でなんとか4種目を演じるきることができたことで、喜田はかすかな自信を採り戻した。

約1年ぶりの実戦となった2018年全日本クラブ選手権
約1年ぶりの実戦となった2018年全日本クラブ選手権

8月のワールドカップミンスク大会、9月のワールドカップカザン大会と、個人総合で出場しながらもクラブ、リボンは棄権。

10月の世界選手権でも、フープ、ボールのみの出場。

この年が世界選手権初出場となった大岩は決勝進出を果たし、決勝でも23位。水を開けられた形になった。

喜田の失意は大きかっただろうと思う。

が、1か月もたたないうちに、喜田は全日本新体操選手権で個人総合優勝を成し遂げる。

ここでも負けるようなことがあれば致命傷になる。そんな試合で、喜田はなんとか踏みとどまったのだ。

2018年全日本選手権で優勝
2018年全日本選手権で優勝

そして、ここから喜田の復活劇が始まった。

2019年は、4月のワールドカップソフィア大会17位、タシケント大会10位。

4種目をノーミスでまとめることはなかなかできずにいたが、できばえがよかった種目の得点は着実に伸びてきた。

8月には全日本クラブ選手権で個人総合優勝し、1年前のリベンジを果たした。

2019年全日本クラブ選手権
2019年全日本クラブ選手権

そして、9月の世界選手権では、今年も2種目(クラブ、リボン)のみでの出場ではあったが、クラブでは19.175と20点近い得点も出した。

出し得る得点では、大岩や皆川にも迫ってきた。

さらに、10月の全日本新体操選手権では個人総合連覇を達成。

2019年全日本選手権
2019年全日本選手権

この時点では、五輪代表の座を争う特別強化選手3名の中では、2018年に停滞してしまった分、3番手ではある。

しかし、一時期、見失いかけていた何かを取り戻しつつある、と2019年の喜田からは感じられた。

そして、迎えた2020年。

喜田にとって初めての大会となったグラシアカップで、喜田ははっきりと変わった姿を見せた。

とくにボールは、予選から素晴らしい演技を見せた。

今シーズンから曲も作品も新しくしたボールは、明るくそれでいて少し妖艶な雰囲気もある曲「Helele」を使っている。今の喜田の年齢によくマッチした曲調で、無理なく背伸びせずに演技しているように見えた。

レオタードも明るいオレンジ色を基調にしたもので、ここ数年来なかなか見ることのできなかった「強気な喜田純鈴」を、その演技の随所で見せてくれた。

今年になってから、喜田選手が地元・香川県でジュニア時代からの恩師・劉コーチと二人三脚で五輪を目指すという報道が出始めた。

あの苦しかった2018年から、喜田は日本で新体操を続け、五輪を目指すという道を選んでいた。

個人、団体ともロシアの懐に飛び込むことで、現在の地位を築いてきた日本にとって、喜田の選択が手放しに歓迎されたとは思えない。新体操を究めるためにはこの上ない環境であるロシアを離れることで、有形無形の不利をこうむる可能性もあったのではないかと思う。

それでも、今の喜田の演技を見ていると、この選択は間違いではないと思わずにいられなかった。

グラシアカップでは、ボール以外の種目はノーミスでまとめることができなかった。

しかし、ミスしたところ以外は、どの種目もキレがよかった。アピール度も高く、得意のローテーションでは会場も沸いていた。

4種目まとめることができれば、皆川、大岩との勝負も面白いものになりそうだと予感させる演技だった。

ボール以外の種目は、昨シーズンから曲も変えていないそうだが、まるで違う曲と演技に見えるほど、動きがよくなっていた。

さらに、顕著に違うのはその表情だった。

演技中も、また表彰式後に見せた笑顔にも、ほんとうに久々に見る「晴れやかさ」があった。

※国士舘大学「スポ魂」(銅メダルと喜田選手の写真有)

コロナウィルスの影響で、新体操も海外の大会への派遣中止が出始めている。

喜田の「東京五輪出場」を懸けた戦いは、4月から続く予定だが、状況次第ではどうなるか。予断を許さない。

が、そこに向けて、喜田はもう迷いなく進めるのではないかと、グラシアカップでの演技を見て感じた。

五輪出場できるかどうか、それは誰にもわからない。

かなり厳しい道だということは本人もわかっているだろう。

それでも。

今の喜田純鈴は、きっと自分のことも、自分の演技も好きなんじゃないか。

そんな今の自分で勝負したいという気持ちになっているんじゃないか。

そう感じた。

どうか一刻も早く、コロナウィルスの騒動がおさまって、4月からの大会派遣がなされるように。

そこで、最後の瞬間まで全力で戦う喜田純鈴が見られるように。

そう願わずにはいられない。

<写真提供:清水綾子>