【新体操】22回目を迎えた全日本新体操チャイルド選手権に見る「2020後の新体操」の希望と課題

5・6年生の部で優勝した馬場せせら(イオン)

感染症の不安が広がる中、果たして開催できるのか?

と案じられた全日本新体操チャイルド選手権だが、先週末、なんとか無事に開催された。

全日本とはいえ「チャイルド選手権」だ。

つまり出場するのは小学生ばかり。

それも地方予選があるわけでもない。

コロナウィルスの不安があるなら、中止にしてもよさそうなものだし、棄権者も多いのではないかと思われそうだが、そうもいかないくらいにこの大会の存在感は大きい。

もちろん、中にはこの大会に出場することが夢、というレベルの選手もいて、想像以上に大きな会場に萎縮してしまい、思うような演技ができず悔し涙にくれる姿もある。

が、上位に名前を連ねるような選手たちは、まさに「日本の新体操の未来を背負う」くらいの覚悟はもっているように見える。

小学生でもそれくらい真剣。

それが全日本チャイルド選手権であり、新体操という競技なのだ。

このところ、フェアリージャパンの公開練習が増えたため、その練習ぶりが多くの人の目にふれたり、報道される機会が増えている。

そうなると、今まで新体操なんて、ましてやその練習なんて見たことがなかったという人たちは、その練習の過酷さに驚く。

本番1本の演技の可憐さ、華やかさからは想像もできない泥臭く、汗と涙にまみれたハードな練習がその裏にはあるのだ。

フェアリージャパンが「日本代表」だから厳しい練習をしているわけではない。

日本全国で、新体操をやっている、とくに大会という目標に向かっている選手たちは大学生も高校生も、ジュニア、にいたるまで、かなり厳しい練習をしている。

チャイルド(小学生)も例外ではない。

23日に行われた決勝では、そんなチャイルドのトップレベルの演技を3・4年生の部35人、5・6年生の部35人、たっぷり堪能することができた。そして、日本の新体操の未来は明るいぞ、と感じる面もあれば、「このままで大丈夫?」と少しばかり不安になる面もあった。

3.4年生の部に関しては、希望が多く感じられた。

優勝した兵働心春(イオン新体操スクールマリンピア)は、非常にオーソドックスで丁寧な実施の中で、無理のない十分な柔軟性とチャーミングさあふれる演技を見せた。よい意味で「ザ・チャイルド」という印象の演技であり、選手だった。

兵働心春(イオン新体操スクールマリンピア)
兵働心春(イオン新体操スクールマリンピア)

準優勝の加藤乙叶(チェルシーRGC)は、同クラブの大先輩である古井里奈(現・国士舘大学)が全日本チャイルドで優勝したとき(2010年)を彷彿とさせる「きらっきら演技」を見せた。身体能力の高さもさることながら、内からあふれ出る「新体操大好き!」オーラが凄まじい演技だった。

加藤乙叶(チェルシーRGC)
加藤乙叶(チェルシーRGC)

3位の真嶋あのん(エンジェルRGカガワ日中)は、喜田純鈴、未来乃姉妹ほか、多くの「エンジェルRGカガワ日中」の選手たちに脈々と受け継がれている「エンジェルらしさ」を体現した早熟な選手だった。まだ4年生とは思えぬ能力の高さ、妖艶ささえ感じさせる表現力。それでいてかわいらしさも垣間見えるそのアンバランスさも魅力的だ。

真嶋あのん(エンジェルRGカガワ日中)
真嶋あのん(エンジェルRGカガワ日中)

現在の全日本チャイルド選手権は、基本的にはFIGルールをそのまま適用しているが、3.4年生の部に関しては、身体難度の選択に制限を設けたり、手具難度(AD)が評価対象にならない、など、年齢が低いうちからあまりにも難しいことをやりすぎないように配慮されている。

そのため、311名による予選を勝ち抜いた上位35人であっても、比較的易しい演技内容を丁寧に美しく、ミスなく実施して勝ち上がってきたのだろうと思う選手も見受けられた。3.4年生に関してはそれが大会側の意図するところでもあっただろう。これらの配慮が功を奏してか、決勝を見ていても、手具操作でのミスはあるにせよ、概ね「基本に忠実で美しい」と感じられる選手が多かった。

身体難度も左右同じ難度を入れるように求められているため、左右差の少ない選手が多く、長く新体操を続けていけるトレーニングをしていることが感じられた。

しかし。

これが5.6年生になると、様子が激変した。

5.6年生の部には、難度選択の制限もなく、ADもカウントされる。いわゆる通常通りのジュニアルールだ。

そうなると、やはり左右同じ難度を入れるわけもなく、得意なほうでより高難度の技を入れる。高いD得点を目指して可能な限りのADを入れ込む。

それをミスなく、あるいは少ないミスで演じるきる上位選手たちはさすが、ではある。

日本の新体操選手たちの技術力の向上は凄まじいと感心するしかない。

この全日本チャイルド選手権も2012年までは手具を使わない徒手演技で競われていたことを思えば、たった8年で別世界のようだ。

5.6年生の部優勝:馬場せせら(イオン)
5.6年生の部優勝:馬場せせら(イオン)

しかし、さすがに。

小学5.6年生で、このレベルの演技をするとなると、四肢の美しさは多少なりとも犠牲になるのだな、と感じてしまった。

今年の選手たちのレベルが低いとかそういうことではないと思う。

5.6年生の部準優勝:西本愛実(Eslella RG Venus)
5.6年生の部準優勝:西本愛実(Eslella RG Venus)

この選手たちもおそらく3.4年生のルールの間は、美しいつま先、膝を意識して演技できていたはずなのだ。

今でも、徒手で踊ろうものなら、一部の隙もない美しい演技をする力はもっている選手たちだ。

それが、「より多くのADを!」「より高難度な技を!」となると、ほころびが見えてしまう。

そういうことなのだと思う。

5.6年生の部3位:島崎もも(Estella RG Moon)
5.6年生の部3位:島崎もも(Estella RG Moon)

それでも希望はある。

全日本チャイルド後、「5.6年生の脚が汚かった」という話が多くの指導者から聞こえてきたことだ。

みんなわかっているのだ。

わかっているけれど、現在の「手具操作偏重ルール」において、上を目指すときの優先順位が変わってきているのだろう。

たとえ今回のチャイルド選手権でよい成績を収めたとしても、このままでいいとは誰も思っていない。

なにしろ彼女たちは、まだ12歳かそこらなのだ。

22歳まで新体操をやるとしたらあと10年。

もっともっと洗練された選手になるための時間はたっぷりある。

今は少しばかり「技先行」になっているとしても、この先、改善されないわけはないのだ。

22回を重ねる中で、様々な変革を行ってきた全日本クラブチャイルド選手権。

やはりこの大会は、日本の新体操の未来を担う大会だ。

<写真提供:清水綾子>※3.4年生は筆者撮影