【新体操】全日本チャイルド選手権で見せたフェアリージャパンPOLAの熾烈なポジション争い

エキシビション演技後、声援に応えるフェアリージャパンPOLAの選手たち

2月23日、高崎アリーナで行われた「第22回全日本チャイルド新体操選手権」は、小学生の日本一を決める大会で、昔も今も小学生の新体操選手たちにとっては憧れの大会だ。

今年も全国から394クラブ、854名の小学生がエントリーし、3日間にわたる熱戦が繰り広げられた。

現在のフェアリージャパンPOLAメンバーの中でも、鈴木歩佳が、3・4年生の部で2年連続3位(2009~2010)、末永柚月が5・6年生の部で優勝(2016)、稲木李菜子が準優勝(2016)、もっとも若いメンバーの生野風花も5・6年の部で優勝(2017)と、この大会を経験してきている。

そんな縁のある大会で、フェアリージャパンPOLAが演技披露するというので、会場の小学生やその親、関係者たちは色めきたった。

23日の全競技終了後にフェアリージャパンPOLAの演技は行われたが、ほとんどの観客は席を立たず、大観衆がフェアリーの演技を見守った。

披露されたのは、チャイルド競技でも馴染みの深い「ロック・アラウンド・ザ・クロック」を使用したボール×5の演技。

軽快な曲にのせたチャーミングな「ボール×5」の演技
軽快な曲にのせたチャーミングな「ボール×5」の演技

現在、フェアリージャパンPOLAは、ロンドン五輪、リオ五輪とすでに2大会連続で五輪に出場しているチーム最年長のベテラン・松原梨恵の骨折による離脱でピンチに陥っている。

昨年の作品よりも大幅に技を増やし、D得点を極限まで上げた作品の完成度を上げることに悪戦苦闘していたところに、1月末から松原を欠くことになった。2月頭に行われた東京都清瀬市での公開練習や、先週栃木県小山市で行われた公開練習などでも、なかなかノーミスが出ず、演技を通すことに苦労していた。

この日の演技も、完璧なノーミスとはいかず、会場で見ていた小学生に目にも明らかなミスはいくつかはあった。

しかし、それでも、少々の狂いは執念で飛びつき、落下を防いだり、細かいミスは笑顔を見せながらカバーするなど、すでに五輪や世界選手権などの経験も豊富に重ねてきた、今のフェアリージャパンPOLAの強さ、しぶとさを見せる演技ではあった。

演技終了後、バックヤードで見守っていた山口留奈コーチとハグし合っていたときの様子からも、「まずまず」の演技はできた! という手ごたえはあったのだろうと思う。

演技終了後には、山口コーチとハグ(撮影:筆者)
演技終了後には、山口コーチとハグ(撮影:筆者)

今回のエキシビションのメンバーは「杉本早裕吏・熨斗谷さくら・鈴木歩佳・竹中七海・横田葵子」だった。

昨年末から精力的に全国で公開練習を行っているフェアリージャパンPOLAだが、12月~1月の公開練習では、「杉本・熨斗谷・鈴木・松原」がほぼ固定メンバーで最後の1席を竹中と稲木李菜子に競わせている様子が見受けられた。

ところが、松原の骨折によって2月に入ってからは、「杉本・熨斗谷・鈴木・竹中・稲木」というメンバーで、清瀬、小山の公開練習は行われた。それまでは竹中と同じポジションに交代で入っていた稲木が、松原のポジションに入り、慣れないポジションに苦労しながらも技術力の高さでなんとかついていっている、という状況にあった。

ところがこの日のエキシビションでは、そのポジションに横田葵子が入っていた。

とくに囲み取材などはなかったため、どういう事情でそうなったのかはわからない。

稲木が不調なのか、故障でもあったか。

もしくは横田と稲木を競わせている最中なのか。

この日のエキビション演技では、横田は見事にその役割を果たして見せた。

12月の福岡での公開練習での横田はどこか故障もあったようで、フルパワーの練習ぶりではなかったように思う。

しかし、1月の熊本での公開練習は、正メンバーには1度も入ることなく、むしろ若手中心のサブチームのリーダー的な役割を担っているように見えた。

すでにリオ五輪は経験している横田は、最悪、東京五輪のメンバーには、入れなかったとしてもすでオリンピアンであり、昨年の世界選手権のメダリストでもある。故障などもあり本調子でないのならば、後進を育てるという形でチームに貢献しようとしているのか、という風にも見えていた。

それでも、福岡でも熊本でも、時には、正メンバーが演技しているフロアをじっと見つめる姿が印象的でもあった。かつて山崎強化本部長が、横田のことを「メンバーに入りたい!私を使ってほしい!という気持ちをすごく出せる選手」と評していたことを思い出す、そんな姿だったのだ。

過去最高に技のつまった高難度演技に挑むフェアリージャパンPOLA
過去最高に技のつまった高難度演技に挑むフェアリージャパンPOLA

横田がメンバーに入っていなかった清瀬や小山の公開練習のときも、サブフロアでの横田はおそらく腐ることなく、諦めることなく、自分の置かれた場所で最大限の努力を重ねていたのだろう。

だから、この日のチャンスが巡ってきた。

そして、この日の演技で、横田は一度もミスをしなかった。少し慎重になっているかな?というところは見受けられたが、このところあまり正メンバーに入っていなかったブランクはほとんど感じられないくらいにチームにも溶け込んだ堂々たる演技を見せたのだ。

ここ1番でこの演技ができる準備を怠らずにきた横田の姿勢もさることながら、そのメンタルの強さ、粘り強さには舌を巻くしかなかったが、そう言えば、彼女はそういう選手だった!と思い出した。

ジュニア時代、まだ個人では無名に近かったときに、所属していた安達新体操クラブには、力のあるシニア選手がいたために、ジュニアメンバーとしてチーム戦でイオンカップに出たことがあった。

あの頃の横田は、イオンカップという大舞台でどんなに萎縮してもおかしくない、まだまだひよっこの選手だったが、本番での演技は驚くほど堂々としていたのだ。落下しそうな場面でも執念で飛びついて手具をつかみとる、そんなガッツのある演技は、観客を沸かせ予想以上の得点も獲得していた。

横田葵子は、昔からそういう本番での強さを持った選手だったのだ。

今回の演技で横田のメンバー入りの可能性も一気に高まったと言えるだろう。

これから五輪本番までに、今が伸び盛りの若さと技術力をもつ稲木がどこまで進化できるのか、

さらには松原が復帰、復調は間に合うのか。

メンバー内でも屈指の華やかさをもつ竹中は、このままレギュラーに定着するのか。

フェアリージャパンPOLA5つめの椅子を巡るこの切磋琢磨は五輪メンバーが正式登録されるその日まで続くのだ。

<写真提供:清水綾子>