【新体操】世界が認めたローテーション~アジアンビューティー・大岩千未来のポテンシャル

2019イオンカップでの大岩千未来

3人の特別強化選手の中で一番最後に選ばれたのが大岩千未来だ。

まだ高校3年生。年齢ももっとも若い。

大岩は、2018年4月に国内の代表決定戦を1位で勝ち抜き、8月に行われた日本代表としてアジア競技大会に出場し、個人総合4位になっている。

この試合が、いわば大岩の正式な日本代表デビューだったが、そこでの4位は合格点の成績と言えるだろう。

しかし、このときの大岩の得点を見てみると、

フープ16.450、ボール16.450、クラブ15.700、リボン12.400=61.00 だった。

この大会で優勝したADILKHANOVA選手(KAZ)は、

フープ17.550、ボール17.550、クラブ16.900、リボン15.250=67.250。

4種目合計点には6.250の差があった。

しかし、その1か月後の世界選手権決勝では、ADILKHANOVAが66.175で19位、大岩は、63.450で23位だった。その得点差は2.725。アジア競技大会よりもぐっと縮まった。

特別強化選手1年目にして大岩は、「この先が楽しみ」「東京五輪出場もありか?」と思わせたのだった。

2019イオンカップでの演技
2019イオンカップでの演技

2019年になってからも、大岩の快進撃は続いた。

2月に行われたシーズン初戦のモスクワグランプリでは、国際トーナメントではあるが(トップ選手たちはグランプリのほうに出場)、個人総合2位。クラブでは18.100と18点超えを果たした。

3月のリスボン国際には、特別強化選手3人が揃って出場。大岩は、3人の中では最下位だったが個人総合8位。この大会のフープ、ボールでも18点台をマーク。ミスなく実施できたときに出る得点が着実に上がってきた。

4月になると、ワールドカップペサロ大会で、フープ、クラブを19点台にのせ、ワールドカップバクー大会ではボールも19点台にのる。

世界選手権直前の8月には、ワールドカップミンスク大会で、リボン以外の3種目で20点台を突破。

そして、9月に行われた世界選手権でも、予選では、フープ20.100、ボール18.900、クラブ19.300、リボン18.300。世界選手権では予選4種目の高いほうから3種目の得点が生きるため、58.300の23位で決勝進出。

決勝では、フープ20.850、ボール19.250、クラブ18.400、リボン18.850=77.350で19位となった。決勝では、1種目目のフープが素晴らしい出来で、その後の3種目では少しずつミスがあってのこの得点と順位は、大岩の評価の高まりを図らずも証明してくれた。

ちなみに、2018世界選手権決勝での大岩の4種目合計点は63.450。じつに、13.900の得点アップを果たしている。

2019全日本選手権ではエキシビションで演技を披露
2019全日本選手権ではエキシビションで演技を披露

2018年にD得点の上限がなくなり、D得点がうなぎのぼりになってきている。2018年はそのためミスも増えていた印象があったが、それがこなれてきた2019年は、大岩だけでなく多くの選手の得点が上がった。

皆川夏穂も、世界選手権決勝での4種目の得点を見ると、2018年の70.950から2019年は80.300と9.350のアップを果たしている。

2018年のアジア競技大会で優勝したADILKHANOVA(KAZ)は、2019年の世界選手権では予選35位で決勝に進めなかった。予選での4種目合計得点は73.350。2018年より得点を伸ばしてはいるが、7.175アップに留まっている。

ADILKHANOVAや皆川と比べても、大岩の13.900はかなりの急成長と言ってよいだろう。

さらに大岩は、世界選手権後に日本で行われたイオンカップでは、地元開催ならではののびやかな演技を見せ、予選のボールで21.400、決勝のボールでも21.400、クラブでは21.350という圧巻の演技を見せた。

ローテーションの回転数、スピードが大岩の強み
ローテーションの回転数、スピードが大岩の強み

ジュニア時代から、その線の美しさでは「国際規格」と言われてきた選手だが、決して手具操作が器用なほうではなく、コントロールシリーズなどでは、ミスが連鎖して演技になっていないこともあった。表現力にも課題ありと言われており、演技中、無表情だと指摘されていた時期もあった。

が、ジュニアの後半からぐっと変わった。そして、高校生になってからその輝きはますます増してきた。

線の美しさに加えて、軸がしっかりとしてきた大岩は、抜群の開脚度を生かしたパンシェローテーションという強みを手にした。かかとを人一倍高く保持できる大岩のローテーションの回転数は、海外の選手たちにもひけをとらず、ワールドカップや世界選手権の動画を見ても、そのローテションに会場が沸いているのがわかる。

「CHISAKI OOIWAのローテーション」は、世界に通用する。いや、凌駕すると、証明した2019年だった。

2013年から日本の新体操個人を背負い、引っ張ってきた皆川夏穂の経験値と風格。

抜群の身体能力に、故障を乗り越え粘り強さを身につけてきた喜田純鈴の強い気持ち。

そして、まだまだ天井が見えない大岩千未来のポテンシャル。

東京五輪の新体操個人枠を「2」に増やせるのかどうか。

そして、「1」もしくは「2」の出場権を手にするのは、誰なのか。

決定するその瞬間まで、予断を許さない展開になってきたが、東京五輪の前年を、こういう状況で終われることは、新体操界にとっては喜ばしいことだと言えるだろう。

今年の活躍で、一躍「東京五輪メダル候補」としてメディアにも引っ張りだこなフェアリージャパンPOLA(団体)とともに、個人選手たちも、最高の状態で2020年を迎えられるように、心から祈りたい。

<写真提供:清水綾子>