【男子新体操】男子新体操は団体だけじゃない! 個人選手たちの華麗&熱い戦いに注目!

全日本選手権初優勝を成し遂げた川東拓斗(国士舘大学)

「男子新体操? 知ってるよ、なんだっけ、鹿児島の・・・おもしろいやつ」

「男子新体操、テレビで見たことある。6人でバク転するのすごいよね!」

男子新体操に対して、その程度の認識しかない人のほうがまだまだ多いと思う。

競技人口のわりには、男子新体操のメディア露出は多いほうだとは思うが、そのほとんどが団体競技だ。

かなり認知度が高いと思われる鹿児島実業のコミカル演技、あれも団体競技だし、過去にバラエティー番組で取り上げられたときもほとんどが団体をフューチャーしていた。

が、じつは男子新体操には個人競技もある。

団体競技は徒手で競い、手具を使わないが個人競技は、女子同様に手具を使う。

公式試合の場合は、4種目(スティック、リング、ロープ、クラブ)が行われる。

団体は見たことがあっても、個人は知らない、という人も案外多いと思うが、この男子新体操の個人競技、なかなか面白い。

とくに2015年にルール改正が行われてからは、ぐっと手具操作の比重が上がり、上を狙う選手達は果敢な手具操作に挑戦するようになってきたため、見ていて面白い、飽きない演技が増えてきている。

それでも、現在、非常に忙しいルールになってしまい、「表現」まで行き届かなくなってきている女子の新体操に比べると、男子の演技にはまだ余裕がある。選手のタイプにもよるが、体操をじっくり見せてくれる、または表現を見せつける、そんな演技が見られるのが男子新体操の個人競技だ。

今年の全日本選手権でも女子の関係者から、「男子が面白くなってる」という声が聞こえてきた。

曰く「手具操作のレベルが上がって、面白い」または、「表現しながら技もやるバランスがいい」のだという。

かつては、手具が飾り物のような演技でも勝てた、が、今はそうはいかない。

手具操作が売りという選手ではなくても、以前よりは手具操作もレベルアップしなければ上位にはいけない。

そして、一方で「表現」にもこだわる男子新体操では、手具操作や難度など技ばかり! という印象の選手に対する評価は低くなりがちだ。技術先行型の選手たちは、そこで「表現を磨く」という課題にぶつかる。

4回転ジャンプを何種類も跳べないと勝てなくなった男子のフィギュアだが、

4回転ジャンプを跳べさえすれば勝てるというわけではない、のと似ている。

そんな時代だけに、今年の全日本選手権のトップ8は、技も表現も、柔も剛も併せ持った選手達が並んだように思う。

それだけ、男子新体操の個人競技は進化しているのだ。

8位:臼井優華(大垣共立銀行OKB体操クラブ)

臼井優華(大垣共立銀行OKB体操クラブ)
臼井優華(大垣共立銀行OKB体操クラブ)

2017・2018・2019と社会人大会3連覇中。

2016全日本チャンピオン、2014・2015・2016インカレチャンピオン、2011・2012インハイチャンピオン、2009ジュニアチャンピオン。書き出すだけでも一苦労なほどのタイトルホルダー。

現在の手具操作の比重が高まった男子新体操の元祖的な存在だ。高校~大学時代から圧倒的なタンブリングに、手具操作が合わさった一段階上の新体操を体現していた選手で、社会人3年目の今年も健在ぶりを見せた。今大会は、珍しく大きなミスが出たため8位となったが、本来の力が出せればまだ表彰台にものれる選手だ。

7位:田中啓介(国士舘大学)

田中啓介(国士舘大学)
田中啓介(国士舘大学)

2017ユースチャンピオンシップ優勝、インターハイ3位。

2018全日本選手権17位、2019インカレ11位からのジャンプアップを果たした。

長身の恵まれたプロポーションで、美しく雄大な演技にはジュニア時代から定評があったが、ここにきてやっと「欲」のようなものが見えてきた。今大会では、ロープを新しい作品にしてきたが、これまでのイメージとは少し違う曲調に挑戦し、新しい一面が垣間見えた。

大学生活残り2年で大化けしそうな予感がする。

6位:佐藤颯人(青森大学)

佐藤颯人(青森大学)
佐藤颯人(青森大学)

2015インターハイ4位。

2018全日本選手権8位、2019インカレ6位。

ジュニア時代から有名だった三つ子の佐藤兄弟の中で、大学進学後もっともコンスタントに好成績を上げているのがこの選手だ。

持ち前の高い身体能力に加えて、手具操作の巧緻性も上がり、表現の幅も広げてきた。基本徒手も基本から見直したかのような上達ぶりで、まだまだ進化を見せてくれそうだ。

5位:向山蒼斗(国士舘大学)

向山蒼斗(国士舘大学)
向山蒼斗(国士舘大学)

2018インターハイチャンピオン。

ジュニア時代からうまい選手だったが、意外に優勝とは縁がなく、高校3年だった昨年やっとインターハイを制覇。

大学ルーキーイヤーの今年は、インカレでは10位だったが、今大会では個人総合4種目ノーミスで、種目別決勝にも4種目で出場。そこでもノーミスを4本揃えるという「ミスターパーフェクト」ぶり。現在の演技でもすでに日本トップクラスの高難度演技だが、まだ高校時代から演技を変えていないとのこと。

手具操作の技術の高さだけでなく、音取りをはずさないリズム感のよさ、欠点の少ない体操など、非常にバランスよくすべての要素を兼ね備えているのが強み。この先どこまで伸びるのか計り知れない期待の星だ。

4位:城市拓人(青森大学)

城市拓人(青森大学)
城市拓人(青森大学)

2018全日本選手権11位、2019インカレ2位。

大学入学前の戦績を調べてみると、2016インターハイ10位が最高順位。

とにかく故障やミスが多い選手で、力を発揮できないまま大学生になった印象だった。

しかし、その選手が今年のインカレでついにブレイクした。今大会ではリングでのミスが響き、総合4位に終わっているが、4種目ノーミスなら優勝争いにも絡む存在にまでなってきている。

3位:堀 孝輔(同志社大学)

堀  孝輔(同志社大学)
堀 孝輔(同志社大学)

2018全日本選手権4位、2019インカレ5位。

2015インターハイチャンピオン。同期には絶対王者・安藤梨友がいたが、その安藤に高校時代土をつけた唯一の選手がこの堀孝輔だ。

新体操の練習環境だけを考えれば恵まれているとは言い難い同志社大学進学後も、スプリングマットのない中で、着実に力をつけ、今大会ではついに3位と表彰台にのった。演技からはクールな印象を受けるが、なかなか熱い気持ちをもった選手で、男子新体操を続けるうえでの選択肢を増やすという命題を自分に課している。

2位:安藤梨友(青森大学)

安藤梨友(青森大学)
安藤梨友(青森大学)

全日本ジュニア3連覇、2014・2016インハイチャンピオン。

大学進学後もルーキーイヤーから東日本インカレ優勝など輝かしい成績を収め、2018全日本選手権5位、2019インカレ優勝と、いよいよ男子新体操の頂点に近づいてきた。今大会でも、優勝に限りなく近い準優勝となった。

もともとタンブリングも手具操作も強く、男子新体操の申し子のような選手だったが、動き、体操の美しさ、表現力などが課題と言われてきた。それを克服すべくあらゆることに挑戦し、試してきた大学時代、ジュニア~高校時代とは見違えるような柔らかさを身につけ、それでいてよりパワーアップした選手に成長した。男子新体操の上限を変えていく可能性を秘めた選手と言えるだろう。

1位:川東拓斗(国士舘大学)

川東拓斗(国士舘大学)
川東拓斗(国士舘大学)

2018全日本選手権2位、2019インカレ3位。

2015インターハイでは、目の前にあった優勝を自らの手具落下で逃して3位。そこからずっと「日本一」を自分に課してきた選手が、大学4年生になった年、最後の最後の大会で日本一になった。

男子新体操に関わる人なら誰もがあこがれる「ザ男子新体操」的な良さをもった体操。大学生になってから磨きのかかってきた表情豊かな手具操作。なによりも演技からあふれ出るエネルギーで、安藤梨友との僅差の勝負に競り勝ったように見えた。

本人もよく言うが、川東拓斗の演技は、「オーソドックスな古き良き新体操」だ。この先に生まれるチャンピオンには、なかなかもうこういうタイプは出てこないのではないかと思われる。だからこそ、彼の優勝に多くの人が拍手を送った。

今、この時点での男子新体操の理想形にもっとも近い選手だったからだろう。

CSチャンネル・スカイAでは、本日(11/25)20時から「2019全日本新体操選手権男子個人総合」を放送する。

スタジオゲストとして川東拓斗選手も登場するそうなので、それも併せて期待したい。

※スカイAの「全日本新体操選手権」放送予定

<写真提供:清水綾子>