【男子新体操】まだ男子新体操に出会ってない人のための「2019JAPAN」観戦の手引き

今大会で全日本選手権団体6連覇を成し遂げた青森大学

「男子新体操? 男が新体操? レオタード着るの?」

「女子みたいにリボンひらひらやるの?」

嘲笑とともに、そんな風に言われていたのは、いつ頃までだったろうか。

一時期は、「絶滅危惧種」と言われていた男子新体操が、今、上り調子だ。

その飛躍のきっかけになったのがテレビドラマ「タンブリング」(後に舞台化もされた)だが、

なんとその「タンブリング」の舞台も、来年、5年ぶりの復活が発表された。

東京五輪の年、2020年。

男子新体操は五輪種目にこそはないが、五輪ムードの中で、男子新体操もますます活躍の場が広がっていきそうだ。

10年前に比べると、男子新体操の認知度、人気はあがってきている。

が、それでもまだ「知ってはいるけど、見たことはない」という人が圧倒的多数だろうと思う。

そんな人たちに、ぜひ一度、見てもらいたい!

そのチャンスが、今日から始まるCSチャンネル・スカイAでの「全日本新体操選手権」の放送だ。

男子新体操の大会がテレビで放送されることはめったにないうえ、このスカイAの映像は非常にクオリティーが高く、演技を終えたあとの選手たちの表情まで追ってくれている。

「全日本選手権」という国内最高峰の大会なので、初めて見るという人には間違いなくお薦めだ。

さらに、コアな新体操ファンにとっても、観客席からでは見ることのない演技後の様子まで見せてくれるのはありがたい。

2023年の国スポ(現・国体)からは、国体種目への復帰も決まった男子新体操。

この注目のスポーツをぜひ、この機会に一度、見てみてほしい。

本日(23日)は、男子団体予選・決勝を一気に放送されるので、団体上位8チームの紹介をしておく。

初めて男子団体を見る人でも、少しばかりの前知識をもって見ることでより楽しめるのではないだろうか。

8位:埼玉栄高校(埼玉県)

埼玉栄高校(埼玉県)
埼玉栄高校(埼玉県)

今年度インターハイ8位。

「関東の雄」である。2014年にはインターハイ優勝経験もある。

その演技は、一種独特で他のチームとは違った趣きがある。とくに今年のチームは、身長が高く6人が並んだだけでもスケール感があった。

使用曲は「Ameno」。ドラマチックで、重厚な曲調が彼らの持つ雰囲気にとてもよく合っている。埼玉栄を率いる石田渓監督のセンスのよい振付と、高校生で完成を求めていないというおおらかな指導が、このチームの持ち味であるスケール感に繋がっている。

7位:盛岡市立高校(岩手県)

盛岡市立高校(岩手県)
盛岡市立高校(岩手県)

今年度インターハイ6位。

一時期、男子新体操がテレビのバラエティー番組でしきりに取り上げられていたころ人気だったリーゼント先生・野呂和希が長く指導してきた盛岡市立だが、2017年までで監督を退き、教え子である藤原大貴(青森大学卒)が現在は指揮を執っている。

監督としてはまだ2年目の藤原だが、岩手県は、全国でも早い時期からジュニア⇒高校の一貫育成ができていた地区だ。ジュニアクラブ、滝沢南中学、そして盛岡市立高校と継続的に地元で新体操を続けることができるのだ。さらには青森大学への進学者も多く、近年は卒業生も地元に多く戻ってきて指導にあたっている。指導に若い力が増えてきたこともあり、盛岡市立高校の演技も、ここ数年、洗練されてきた。独創性のある組み技や振りには要注目だ。

6位:坂出工業高校(香川県)

坂出工業高校(香川県)
坂出工業高校(香川県)

今年度インターハイ8位(埼玉栄と同点)。

坂出工業といえば、かつてはインターハイ、国体などを制したこともある男子新体操の古豪だ。

当時の監督が、現在青森大学を率いる中田吉光氏だが、その偉大な監督からチームを引き継いだのが坂出工業で中田の教え子だった林晋平監督だ。まだ指導経験もほぼない中で全国レベルのチームの監督就任はプレッシャーだったに違いない。そして、チームの低迷、部員数減など様々な試練もあったというが、近年はジュニアクラブの活動も盛んになってきており、今年のチームは、坂出工業初の「新体操経験者のみのチーム」が組めた。例年は、高校始めの初心者たちでいかに作品を作り上げるかに心を砕いてきた林監督が「やっとやりたいことができた」という自信作で、全日本では大学生、社会人と同じ土俵で、インターハイよりも順位を上げるという快挙を達成した。

5位:福岡大学(福岡県)

福岡大学(福岡県)
福岡大学(福岡県)

今年度全日本インカレ3位。

福岡大学は、かつては全日本で優勝争いを演じるほどの強豪チームだったが、一時期は団体が組めないほどの部員減、指導者不在などで存続の危機にあった。しかし、2009年に団体復活。その後は、継続的に団体競技にも出場。まだ優勝には届かないが、表彰台にものる年も出てきた。

現在も、監督を務めているのは福岡大学の卒業生で大学院生の大坪俊矢。こうして卒業生たちが監督を引き継ぎながら、学生たちが自律的に活動をしているのだ。その活動ぶりは、演技にも反映している。福岡大学の演技は、いつもどこか新鮮で斬新。それは若い感性で作品作りをしている学生たちの意思が生きている所以なのだ。

4位:国士舘大学(東京都)

国士舘大学(東京都)
国士舘大学(東京都)

今年度全日本インカレ5位。

近年は、青森大学に次いでの2位がほぼ定位置だった国士舘大学団体にとっては、今年は厳しい年になった。

全日本インカレでは予選で大きなミスが出て5位。今大会でも予選、決勝ともノーミスの演技が出せず表彰台を逃した。

今年の作品は「パイレーツ・オブ・カリビアン」という定番曲を使って、情景やストーリーの浮かぶ名作だったが、本番での実施が伴わなかった。先日行われた多摩祭での演技披露は素晴らしい出来で、実施がよければ十分観客に伝わるものがある! と感じさせる演技だった。男子新体操にはあるようでないテーマ性という点では、今年の国士舘の試みは一石を投じるものだったように思う。

3位:青森山田高校(青森県)

青森山田高校(青森県)
青森山田高校(青森県)

今年度インターハイ2位。

男子新体操の強豪・青森山田高校だが、インターハイでも数多く優勝しているだけでなく、全日本選手権での強さには定評がある。

毎年、インターハイよりも全日本選手権でのほうが演技の完成度があがり、順位も上がることが少なくないのだ。今年も例外ではなかった。

インターハイでは揃えきれなかった動きを揃え、よりアピール度の高い演技になっており、井原高校との点差もぐっと縮まった。

青森山田を率いる荒川栄監督は、青森山田⇒国士舘大学と男子新体操の王道を歩んだのち、岩手県で教職につき、その後、青森山田で指導者になり、男子新体操に次々と変革をもたらした革命児だ。現在も、活動を続け、男子新体操の認知度向上におおいに貢献しているパフォーマンス集団「BLUE TOKYO」や、ジュニアクラブ「BLUE TOKYO KIDS」なども活動も下支えし、男子新体操の未来をより明るいものに変えよう試行錯誤している。今年の青森山田高校の演技は、オーソドックスな中にも、一時期しきにり取り入れていたダンス要素もバランスよく取り入れ、「青森山田らしい」ハイセンスな作品に仕上がっている。

2位:井原高校(岡山県)

井原高校(岡山県)
井原高校(岡山県)

今年度インターハイ優勝校。

インターハイでの井原ショックは、凄まじかった。

多くの人たちが、「この演技には、ほとんどの大学生が勝てないのではないか」と言っていたが、結果、その予想は的中した。

今年の井原高校は、青森大学以外すべての大学を上回っての2位。全日本選手権で高校生のチームが2位になったのは、1990年の青森山田高校以来という快挙だった。

井原高校の長田京大監督は、青森山田の荒川栄監督と国士舘大学時代の同期。個人選手として日本一を競うライバルだったという2人だが、男子新体操の未来を拓くという点では盟友。「2人で男子新体操の未来を変える」と誓って、それぞれの道で男子新体操の指導にあたってきたが、その2人が率いる高校生チームが、全日本選手権で同時に表彰台にのったのは運命的なものを感じさせた。

井原高校の今年の作品に関しては、もはや語ることはない。まだ男子新体操を見たことのない人が、最初にこれを見てしまうと、少し男子新体操に対する認識が違ってしまうかも、と案じるくらいに画期的なものだった。ぜひ多くの人に見てほしいと思う。

1位:青森大学(青森県)

青森大学(青森県)
青森大学(青森県)

これで全日本選手権は6連覇。

2013年の全日本選手権で、得意技「ブランコ」でミスが出て、久しぶりに負けを喫した青森大学は、それからの5年間、その「ブランコ」を徹底的に磨き、進化させ、周囲のチームをなぎ倒すような勢いで、優勝回数を重ねてきた。全日本インカレに至っては18連覇。まさに負け知らずだ。

しかし。今年の青森大学の演技は、ここ数年の青森大学を見慣れていた観客にとっては、肩透かしのような印象ではなかったかと思う。

毎年毎年、「今年はどこまでやってくれるのか?」と関心を集めていたブランコが、ぐっと控えめになっていたのだ。そして、その代わりに前面に押し出されていたのが「徒手」。伝統的な体操の良さ、奥深さを徹底的に追求し、それを中心に据えた演技だった。

それは、昨年までの青森大学のサーカスのような、誰もが驚く、わかりやすい「凄さ」とは180度違う方向性だった。

しかし、これこそが長く青森大学を率いてきた中田吉光監督が「一番やりたかったこと」なのだろうと感じるものであり、出場メンバーには4年生がいない若いチームがよく応えた。今年のチームは間違いなくここ数年の青森大学で最高に美しい演技を見せたし、「徒手の手本」になれる演技を、という志が見られた。こういう演技で勝ってこそ、常勝・青森大学の存在意義がある。圧巻の優勝だった。

こんなチームが熱戦を繰り広げる「全日本新体操選手権」は、本日よりスカイAで放送される。

おそらくさらなるブレイクがきそうな、2020年を前に、ぜひ一度、見てみてほしい。

※スカイAの「全日本新体操選手権」放送予定

<写真提供:清水綾子>