【男子新体操】2位井原、3位青森山田と高校生が大躍進!~第72回全日本新体操選手権男子団体

独創的な演技で全日本選手権男子団体総合で2位になった井原高校

今年の8月、インターハイで優勝した井原高校の演技には、「これは大学生でも勝つことは難しいのでは」というほどの衝撃があった。

ただ、ひとつ懸念があるとしたら、果たして、あの演技が全日本選手権の予選、決勝と2回続けてノーミスでやれるのかということだった。

インターハイの時点では、公式練習などでもほとんどノーミスは出ていなかったという。それが、本番で最高の1本が出た。それは、そこまでに積み重ねてきた練習の賜物であり、選手たちの本番の1本に懸けた集中力ゆえだったろう。

年に一度、高校生にとっては最大、最高の舞台・インターハイだからこそ発揮できた力だったとも思われた。

インターハイでの成績によって、出場が決まった全日本選手権で、井原高校は果たして、どこに食い込めるか?

大学生をどのくらい食えるのか?

そう注目はされていたが、「インターハイで優勝したい」と思うのと同じ熱量で、「大学生に勝つぞ!」と思えるだろうか、というとそれはちょっと難しいのではないかとも思っていた。

1991年、1992年の青森山田、1993年の埼玉栄、1996年の水俣、2004年、2005年の青森山田、2011年、2012年の井原、2018年の神埼清明と、高校生の3位チームはいる。青森山田高校に至っては、4回も3位になっている。

しかし、1990年に青森山田高校が全日本選手権の団体競技で2位になって以来、高校生のチームが2位以上になったことはなかったからだ。

だからこそ、「やれたらすごい」偉業ではあるが、本気で目指すにはややリアリティーがない、全日本選手権で2位以上を目指すということはそんな感じではないのか、と思っていた。

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しかし、予選で見せた井原高校の演技は、十分に本気が感じられるものだった。

演技の最難関とも言える独特な入り方の鹿倒立で、少し動いた選手がいたが、それ以外はパーフェクトと言ってよい出来だった。

井原よりも先に演技を終えていた大学生のチーム、福岡大学、国士館大学にはミスもあり、それぞれ17.350、17.250しか出ていなかった。王者・青森大学は、18.575とさすがの高得点だったが、井原に出された得点は18.000。もちろん、青森大学に次いで2位につけた。

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さらに、予選での試技順が最後だった青森山田高校が、鹿倒立でわずかに肘が曲がったミスがあったが、それ以外は、素晴らしい演技で、17.925という井原に迫る得点をたたき出した。

インターハイでは、井原が18.075、青森山田が17.675と0.4の差があったが、ここにきて青森山田が僅差につめてきた。

それもそのはずだ。青森山田の演技は、インターハイのときより数段よくなっていた。

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構成自体はほぼ変わっていないと思うが、演技に取り入れらえた徒手体操やタンブリング以外の部分の動きの精度が格段に上がっていたのだ。ややダンス的な印象もあるちょっとした脚の跳ね上げや、手の動き。そういった青森山田の独自性を表現する動きは、ひとつ間違えば「男子新体操らしくない」と映ったり、揃いきれなかったりする。インターハイのときも、そこにはわずかな隙はあったように思うし、そこが優勝した井原との差だった。

が、しかし。

全日本選手権での青森山田は、隙がなかった。すべての動きが必然に見える流れ、精度、そしてそれが揃っていたのだ。

結果、団体総合の予選は、1位青森大学、2位井原高校、3位青森山田高校という順になった。

迎えた決勝。

試技順4番で登場した予選5位通過の国士館大学は、予選よりはよい実施だったが、完全なノーミスではなかった。出された得点は17.825。

これで、井原と青森山田に大きなミスがなければ逆転はほぼ不可能になった。

果たして試技順5番の井原高校の演技は。

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演技冒頭からのたたみかけるような柔軟の見せ場では、会場中からため息がもれ、歓声が上がった。

印象的なボーカルを演技の最初と最後に入れ、観客をぐっと惹きつけたまま演技を終えると、会場を揺るがすような拍手が起き、なかなか鳴りやまなかった。

バランスでわずかに揺れが見えたが、他はパーフェクトな演技で、18.200。国士館を上回った。

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井原の直後に試技が回ってきた青森大学は、直前の井原で沸き立った会場の雰囲気にのまれることなく、例年以上に「王道」を貫いた演技で18.775をたたきだす。

とにかく流れるように勢いのある、止まらない、運動量の多い演技で、「静止画」の美しさで他を圧倒する井原に勝つには、これしかない! とたたきつけるような演技で、優勝をほぼ決めた。

予選4位通過の福岡大学も大きなミスはなく演技をまとめてきたが、17.375と予選より点数を伸ばしてきたが、井原には届かず。

そして、予選に続いてトリでの演技となった青森山田は、ここでも完璧な演技を見せる。

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ここ数年は比較的オーソドックスな「ザ男子新体操」という演技をしてきた青森山田が久しぶりに見せた「遊び」のある演技で、青森山田らしい魅力を放ち、18.075。井原を逆転することはできなかったが、今のルールになってからは、高校生ではなかなか出ない18点台にのせ、堂々の3位。青森山田にとっては2005年以来の全日本選手権3位だった。

終わってみれば、今大会では、高校生ながら井原、青森山田の力は抜けていた。

大学生では、花園大学が予選の演技中にアクシデントがあり、棄権になってしまったという不運もあり、国士館大学も福岡大学も完璧といえる演技ではなかった。

とはいえ、井原と青森山田の演技には、「大学生でも勝てないかもしれない」と思わせる力があり、それが忖度なく評価された結果の2位、3位だったと思う。

井原の長田京大監督と、青森山田の荒川栄監督は、国士館大学時代の同級生でライバルだった。

「自分たちで男子新体操を変える!」という誓いをたて、高校での指導者の道を歩んできた。

※長田監督&荒川監督の記事

その功績は今まででも十分に大きかったが、今年の全日本選手権での揃っての表彰台のりは、さらにひとつ勲章を加えることになった。

2人が目指してきた男子新体操の新しい時代の幕開け、それが今年だったのかもしれない。

※全日本選手権の様子は、11月にスカイAで放送予定。

※スカイA放送予定

※井原高校、青森山田高校のインターハイでの演技は以下の「インハイTV」で視聴できます。

※インハイTVはこちら!

<写真提供:清水綾子>