【男女新体操】川東拓斗、悲願の全国制覇! 喜田純鈴は、全日本連覇を達成!~第72回全日本新体操選手権

左:男子個人優勝の川東拓斗、右:女子個人優勝の喜田純鈴

前半種目で、暫定首位の安藤梨友(青森大学)に対して0.050ビハインドを背負った川東拓斗(国士舘大学)の後半種目の試技順は、午前中だった。安藤よりも先に川東が演技を終え、安藤の結果待ちという試技順だったが、結果的にはこの試技順が川東には味方したように感じた。

まずは、男子の種目の中でもっともミスが出やすく、また減点もされやすい鬼門のロープで、川東は精度高さへのこだわりの見える素晴らしい演技を見せた。タンブリングでも高い位置からしっかり足を揃え、いわゆる「着地をとる」姿勢ができてからの余裕の着地。もともと重量感があり、それが体操の重みや深みにもつながっている選手だが、それが「重たい演技」に見えてしまうこともある。とくにタンブリングに関しては、着地の重さがマイナス評価になってしまいがちだった。3位に終わり、悔しい思いをした全日本インカレからの2か月足らずで、自身の弱点をしっかりと見直し、修正してきた。ロープの投げ受けでも少し体に近づきすぎたところもあったが、それでも、落下を防ぐためにロープをつかみとるのではなく、ややつまりながらでも両端をキャッチするなど、0.1でも減点を減らそうという執念が見える演技で、18.400をマーク。男子のロープではなかなか出ない高得点だった。

ロープでいい演技ができ、評価もついたことで、最終種目のクラブでは、川東はただ「自分の信じる道を突き進む」ような演技を見せることができた。もちろん、精度も高いのだが、それ以上に、「これが自分の見せたい新体操だ」というエネルギー、そして「勝ちたい!」という気持ちがほとばしるような90秒間に、観客は圧倒され、引き込まれた。

フロアマットに魂をぶつけるような川東拓斗のクラブの演技
フロアマットに魂をぶつけるような川東拓斗のクラブの演技

川東拓斗といえば、新体操ファンの多くが記憶している高校3年生のインターハイでの苦い失敗がある。

あのときも、「この種目がノーミスなら(おそらく)優勝!」という場面のスティックの演技の最後の投げで、彼は3回前転キャッチに挑み、手具を落下。優勝はその指の間からこぼれ落ちたのだった。

あれから4年。

「優勝を目指して戦う経験」も何回かしてきた。

しかし、「全日本」と名のつく大会での優勝はまだなかった。

大学4年生。

学生時代最後の全日本選手権という最高にプレッシャーのかかる場面で、22歳になった川東拓斗は4年前とは違う強さを見せた。

「試合に勝ち切るための強さとしたたかさ」

そして、

「自分の信じる男子新体操を全うしようとする熱い思い」

その両方を手放さず演じきった完璧な演技で、18.300。

後半2種目で、前半種目よりも上積みした得点をそろえ、あとは安藤の演技を待つことになった。

午後に登場した安藤も、まずロープの演技から入った。

落下などの大きなミスはなかったが、細かいミスはいくつか見受けられ、会心の演技とは言えない出来だった。

もともと安藤のロープは、いつもは非常に精度が高く、その正確性が高く評価されているのだが、この日の演技ではその正確性が影をひそめていた。「常勝」のイメージが強い安藤だが、全日本選手権となるとさすがにまだ優勝経験はない。

やはり何か重くのしかかるものがあったのかもしれない。得点も、18.125と安藤のロープにしては伸びず。

最終種目で川東を逆転するためには、18.575以上が必要という状況に追い込まれた中でのクラブの演技で、安藤は痛恨の落下。

この瞬間、川東拓斗の全国大会初の優勝が決まった。

安藤が川東の後半種目での演技と得点を知っていたのかどうかはわからない。

もしも知っていたとすれば、川東が高いパフォーマンスを見せたことが重圧になっていたのかもしれない。

それに対して、先に演技をした川東は、相手を気にすることなく、ただ自分の演技をやり切ることに専念できた。

試技順。

そんな勝負のあやも、今回は川東に味方したようにも思えた。

勝利の女神は、最後の最後に、川東拓斗に微笑んでくれた、のだ。

女子は、暫定首位の喜田純鈴が、2日目1種目目のクラブで、大乱調。手具落下を繰り返し、13.200とこの種目だけの順位は30位という演技になってしまった。ミスなく通せば、出し得る点数は、今大会の出場選手の中では喜田が飛び抜けていることは誰もがわかっている。

現に1日目のフープでは、21.300という国内の大会ではなかなか見ることのできない高得点をたたき出しているのだ。

それでも、ここまでミスを重ねれば、喜田純鈴といえど13.200。そこにはなんの忖度もなかった。

上位につけている立澤孝菜、柴山瑠莉子の好調を思えば、クラブでの喜田のこの得点は致命傷かと思われた。

最終種目・リボンで日本代表の意地を見せた喜田純鈴
最終種目・リボンで日本代表の意地を見せた喜田純鈴

が、最終種目「リボン」で喜田は、特別強化選手、世界選手権日本代表選手としての意地を見せた。

おなじみの007のテーマ曲にのせた、クールな演技で、パンシェターンではまさに世界レベルの力を示し、ノーミスで踊り切ったのだ。

女子ではもっとも点数の出にくいリボンでは、上位選手も軒並み15点台。柴山と河崎羽珠愛だけがなんとか16点台をマークしていたが、喜田のこのリボンには、19.350という突き抜けた得点が出た。

終わってみれば、喜田純鈴の個人総合連覇となった。

苦しい戦いであり、納得のいく勝ち方ではなかっただろうと思うが、それでも勝ち取れた勝利には、大きな意味がきっとある。

大会最終日の今日は、各種目個人上位8選手による種目別決勝が行われる。

日本最高峰の演技の応酬をぜひ会場で堪能してほしい。

<写真提供:清水綾子>