【新体操】昨年女王・喜田純鈴に、97年組が挑む!~第72回全日本新体操選手権女子個人総合展望

左から古井里奈、喜田純鈴、猪又涼子。

いよいよ来年には東京五輪が開催される。

先日の世界選手権では、特別強化選手の皆川夏穂(イオン/国士舘大学)が、見事、五輪出場枠を獲得。

団体では、フェアリージャパンPOLAが世界選手権では初の金メダルを獲得と、盛り上がりを見せている新体操だが、国内における最高峰の大会である「全日本新体操選手権」が、10月18日に開幕する。

高校生~社会人までの各カテゴリの予選大会を勝ち抜いた選手しか出場できない大会で、ハイレベルな演技の応酬が期待されるが、今回もっとも注目されるのは、昨年チャンピオンの喜田純鈴(エンジェルRGカガワ日中/国士舘大学)だ。特別強化選手として、世界選手権にも出場している喜田だが、昨年は故障で国際大会では思うような結果が残せなかった。

その状態で国内の大会に出場することには、かなりのプレッシャーがあったのではないかと思われるが、昨年の全日本選手権では喜田はその重圧をはねのけ優勝。復活の手ごたえをつかんだ。今年の世界選手権には2種目で出場となり、現時点では皆川、大岩千未来に次いで日本の3番手という位置にいるが、東京五輪に向けてさらにジャンプアップするために、今大会のもつ意味は大きい。東京五輪に繋げるためにも、ここはぜひ連覇を果たしたいところだ。

喜田純鈴(エンジェルRGカガワ日中/国士舘大学)
喜田純鈴(エンジェルRGカガワ日中/国士舘大学)

喜田の連覇を阻むとしたら、全日本インカレを昨年、今年と連覇した古井里奈(国士舘大学)が有力視される。今年は、春先に行われたアジア選手権代表決定戦では力を出し切れず、代表から漏れたが、その後、東日本インカレ、全日本インカレでは優勝。現在の大学生は非常にレベルが高く、日本代表選手もひしめいているため、決して楽な試合ではないが、それで勝ち続けている強さはホンモノだ。

古井の演技は、とにかく難度が高く、それでいて流れが止まらず、凄まじいスピードが特長だ。まさに「駆け抜ける」ような演技を、とびっきりチャーミングに演じ切る古井の演技を、見終えたときの爽快感は格別だ。

今大会でも、観客を魅了する演技が見せることができれば、大学最後の全日本選手権での初優勝も夢ではないだろう。

古井里奈(国士舘大学)
古井里奈(国士舘大学)

古井同様、今大会が大学最後の全日本選手権となるのが猪又涼子(日本女子体育大学/ポーラ☆スターR・G)だ。

高校時代から古井とは、同世代のトップ争いを演じてきた。そして、その安定感では、一番といえるのが猪又だ。

猪又の強みは、その正確性。決して無難な演技内容ではないにも関わらず、まるで簡単なことをやっているように見えるほど、猪又の演技は正確だ。投げたフープを、前転しながら背中ではね返す技ひとつ見ても、その投げには狂いなく、背中での受けさえも目がついているかのように毎回同じ、背骨に沿う位置で受ける。この正確さを支えているのは、圧倒的な練習量だ。それほどストイックな選手で、今年は、アジア選手権の日本代表選手にも選出された。

インターハイ、インカレでは、優勝経験のある猪又だが、全日本選手権ではまだ優勝はない。古井とともに、今大会では初優勝を目指す。

猪又涼子(日本女子体育大学/ポーラ☆スターR・G)
猪又涼子(日本女子体育大学/ポーラ☆スターR・G)

特別強化選手の皆川夏穂も、じつは、この古井、猪又らと同級生で、1997年生まれだが、「97年組」には多くの才能がひしめいていた。

皆川、古井、猪又。そして、過去に全日本選手権3連覇(2014~2016)を果たしている河崎羽珠愛(イオン/早稲田大学)も97年組だ。

高校2年から大学1年にかけて3連覇を成し遂げた河崎だが、大学生になってからは故障に泣かされることが多く、ここ数年は、本番でミスが出ることも続き、思うような結果が残せずにいた。しかし、年齢や経験を重ねたことにより、演技の深みや魅力は増してきている。ノーミスを4種目そろえることができれば、十分勝負できる力をもった選手だ。

河崎羽珠愛(イオン/早稲田大学)
河崎羽珠愛(イオン/早稲田大学)

もともと有力選手の多い97年組を、大学生になってから急追してきたのが桜井華子(エンジェルRGカガワ日中/環太平洋大学)だ。高校時代からインターハイで入賞するだけの力はもっていた選手だが、大学4年間での伸びには凄まじいものがあった。喜田純鈴と同じエンジェルRGカガワ日中の所属だけに、演技の内容は高難度だが、それを年々自分のものにしてきた。

数年前は、こなすのに必死な様子が見えたが、今では余裕をもって「魅せる演技」にまで高め、全日本インカレでは4位。

古井、猪又に迫るところにまでたどりついた進化し続ける選手だ。

桜井華子(エンジェルRGカガワ日中/環太平洋大学)
桜井華子(エンジェルRGカガワ日中/環太平洋大学)

「喜田純鈴 VS 97年組」だけでも、濃密な戦いが予想されるが、もちろん、その下にも、期待の選手たちがひしめく。

今年は、アジア選手権日本代表決定戦を首位で勝ち抜いた柴山瑠莉子(イオン/日本女子体育大学)は、今シーズンは大会によってやや浮き沈みがあるが、ここ一番に合わせてくる調整力には長けた選手だ。「過去の自分を超える」という意欲にあふれガッツがある選手だけに、3年連続2位という実績と悔しさを併せもつ全日本選手権に対しては特別な思いがあるだろう。今年こそは、「シルバーコレクター」の壁を破れるか。期待したい。

柴山瑠莉子(イオン/日本女子体育大学)
柴山瑠莉子(イオン/日本女子体育大学)

ユースチャンピオンシップ、インターハイと優勝した今年度高校生チャンピオンの山田愛乃(イオン)は、4月の代表決定戦を勝ち抜き、今年はアジア選手権へのシニアデビューも果たした(アジアジュニアには3年連続出場)。長身の恵まれたプロポーションで、動きも大きくダイナミックさが持ち味で、その笑顔には破壊力がある。2024年パリ五輪に向けての期待の星と言える選手だ。

山田愛乃(イオン)
山田愛乃(イオン)

今年、大学デビュー以来、快進撃を続けているのが松坂玲奈(ヴェニエラRG/東京女子体育大学)だ。まだ1年生ながら、東日本インカレ3位、全日本インカレ5位は伊達じゃない。手具操作の多彩さ、巧さに加え、実施の正確さ、スピードともに見る者を圧倒する演技で、演技するたびに評価が高まってきた選手。高校時代は課題と言われていた表現力もかなり進境が見られ、個性を確立しつつあるように感じる。いつも通りのぶっちぎる演技を見せることができれば、全日本の舞台でも躍動できそうだ。

松坂玲奈(ヴェニエラRG/東京女子体育大学)
松坂玲奈(ヴェニエラRG/東京女子体育大学)

一昨年の全日本チャンピオン・立澤孝菜(イオン/国士舘大学)は、昨年は故障で泣いた。インカレには出場できず、なんとかクラブ選手権で出場権を獲得して、本来なら連覇を狙うはずだった昨年の全日本選手権への出場は果たしたが11位がやっとだった。しかし、今シーズンは4月の代表決定戦を勝ち抜き、アジア選手権にも日本代表として出場。抜群の柔軟性と美しい脚のラインを生かした演技に、力強さも加わり、大人の凄みを感じさせる演技を見せるようになってきている。

立澤孝菜(イオン/国士舘大学)
立澤孝菜(イオン/国士舘大学)

昨年の全日本選手権で5位と大躍進。その勢いのまま3月の高校選抜では初優勝を成し遂げた飯田由香(イオン)は、故障のため今シーズンは、ほとんど大会に出場していない。どこまで復調できてるかは案じられるが、素質に恵まれた伸び盛りの選手だけに、このブランクをうまく生かしてじっくり調整できているとしたら、侮れない存在となりそうだ。

飯田由香(イオン)
飯田由香(イオン)

そして、絶対に見逃してほしくない選手がいる。

おそらく今大会が最後の公式大会となる藤岡里沙乃(ラヴィール/東京女子体育大学OG)だ。

藤岡は、昨年の全日本選手権では9位。4月のユニバーシアード代表決定戦に望みをつなぎ、万全の準備をして決定戦に挑んだが、本番では魔物にとりつかれたかのようにミスが出てしまい、悲願だったユニバーシアード出場はならなかった。

すでに大学卒業から2年になろうとしており、今年までで競技生活を終えると聞いている。

ジュニア時代から、その表現力あふれる演技で観客を魅了し続けてきた藤岡が、おそらく特別な思いをもって臨む今大会。

今までにも十分に、様々な思いや表現を伝えてきた彼女の演技から、何を受け取ることができるか、それを確認するだけでも、今大会には足を運ぶ価値がきっとある。

藤岡里沙乃(ラヴィール/東京女子体育大学OG)
藤岡里沙乃(ラヴィール/東京女子体育大学OG)

来年の東京五輪に向けて、注目が集まりつつある新体操。

その直前にあたる今年の全日本選手権は、選手層も厚く、例年以上のハイレベルな戦いが予想される。

テレビでフェアリージャパンPOLAの金メダル獲得に興奮した、感動したという方はぜひ!

10月18日~20日、千葉ポートアリーナに足を運び、生で新体操を観戦してほしい。

大会時程は以下のとおり。

※第72回全日本新体操選手権時程

入場にはチケットが必要となるが、当日券でも2000円と、体操競技やフィギュアスケートに比べるとかなりリーズナブルな価格となっている。

※チケット情報

10月18日~20日は、ぜひ千葉ポートアリーナへ!

日本最高峰の選手たちの演技が、初めて観戦する人にも新体操の魅力を伝えてくれるはずだ。

<写真提供:清水綾子>