【男女新体操】お楽しみはこれからだ! 社会人でも新体操な人々が結集!~新体操フェスタ岐阜

2018年度社会人大会団体優勝の三桜電気工業(宮崎県)

「新体操フェスタ岐阜」は、男子新体操の全日本社会人大会と男子クラブ選手権(キッズ~シニア対象)を同時開催してきた。今年からはそこに女子の社会人のための大会「マスターズRGレディース」も加わり、新体操愛好者のための一大イベントとなった。

基本的には、「新体操をやること楽しむ」を主眼としており、「新体操フェスタ」を名乗っているが、一部競技には10月に行われる全日本選手権の出場権が懸かっており、そこに関しては、かなり熾烈な戦いになりそうだ。

とくに今年は、社会人の団体のエントリーが多い。

なんと!

まさかの9チームだ。

少し前までは3~5チームくらいの参加だったことが多い男子社会人団体が、9チームも参加とは前代未聞だ。

この社会人団体の盛り上がりを語るうえではずせない選手たちがいる。

今回は、「スエRG」のメンバーとして出場する大原朗生、そして、「Re:take」のリーダーを務める宮川健太郎だ。

いや、2人だけでなく、彼らとともにメンバーの入れ替わりはありながらも、社会人団体を繋いできた彼らの仲間たち。

彼らは、実業団チームではなくても、全員で集まれる時間は少なくても、社会人団体はやれる! ことを証明し続けてきた。

そのことが、多くの後進たちを動かした結果が、今大会の9チームエントリーだ。

始まりは、2011年の社会人大会だった。

当時、唯一の実業団チームだったアルフレッサ日建産業の独壇場になりつつあった社会人団体に、「会光RG」というチームが出場した。

光明相模原高校出身(⇒国士舘大学卒)の大原朗生が、高校の後輩たちや会津工業高校出身の田邉浩仁らに声をかけて発足したチームだった。

このとき、サポートでついていたのが、光明相模原で大原の後輩だった宮川健太郎(⇒花園大学卒)だ。そして、宮川は翌年からサポートではなくメンバーとして、このチームに入ることになる。

そこから何回もチーム名を変え、メンバーも入れ替わった。しかし、基本的にこのチームは、出身高校、出身大学にこだわらず、年齢もかなり幅広くメンバーを受け入れ、全日本社会人大会に出場し続けた。アルフレッサ日建産業に勝つという悲願も達成し、全日本選手権にも出場も果たした。

「Re:take」メンバー。左端が宮川
「Re:take」メンバー。左端が宮川

そんな彼らが、今年は2チームに分かれて出場する。

宮川健太郎率いる「Re:take」は、今までも一緒にやってきたメンバーが中心。「会光RG」のときからのメンバーである高柳も久しぶりの復活。そして、ずっと命運を共にしてきた田邉もいる。花園大学だった宮川にとってはライバルだった国士舘大学の斉藤、社会人団体でのライバルだったアルフレッサメンバーの鈴木も健在だ。

それぞれに会社員だったり、パフォーマーだったり、結婚してパパになった者もいる。学生時代のように自由な時間はない中で、ここまで社会人団体を続けてきた。来年のことはいつも未定。だから、常に「今大会が集大成」のつもりでやっている。

彼らがずっと「こんなやり方でも社会人団体はできる!」と身をもって示し続けてきたことで、重かった腰が上がった選手は少なくない。

その貢献度の高さは、表彰モノだ。

「スエG RG」メンバー。後列真ん中が大原。
「スエG RG」メンバー。後列真ん中が大原。

そして、その礎を築き、度重なった怪我のため近年は指導に専念していた大原が、今年は選手として社会人大会に戻ってくる。

母校・光明相模原高校の卒業生で組んだ「スエG RG」だ。34歳の大原から、下はこの春高校を卒業したばかりの選手もいるという年齢幅の広さ。昨年まで国士舘大学団体の中枢を担っていた山口聖士郎も名前を連ねている。「スエRG」の「スエ」は、尊敬する光明相模原での恩師の名前にちなんでいるという母校愛あふれるチームだ。

一方、九州には、実業団チームの新しい形を実現してきた三桜電気工業株式会社新体操部/小林秀峰OBがいる。

もともと新体操部があったわけではない、三桜電気工業の社員だった青屋一馬(小林秀峰OB)の熱意が、会社を動かし、新体操部が生まれ、男子新体操の名門・青森大学の卒業生も加入するようになり、力をつけてきたチームだ。

昨年の全日本社会人大会では悲願の初優勝を遂げた。その実力派チームが、今年は「かつてなく練習を積んでいる」という。

その原動力となっているのが、宮崎県内の社会人チームの増加だ。

白熱した意見交換をしながら練習する三桜電気工業の選手たち
白熱した意見交換をしながら練習する三桜電気工業の選手たち

いずれもメンバーはほとんどが小林秀峰高校の卒業生。

三桜の監督を務める青屋から見れば、「若い後輩たち」がどんどん参入してきているのだ。

これに三桜電気工業が奮起した。

「負けるわけにはいかない!」

今年は夏休みの練習も平年以上に多かったという。練習を取材に行ったときも、そのあまりの真剣さに驚いてしまった。

社会人チームというと、どうしても「好きな人達が楽しくやっている」という雰囲気があり、そこがまた魅力でもあるのだが、今年の三桜は「ガチ」で、まるで高校の部活のような練習ぶりだった。

昨年社会人王者の三桜電気工業をそこまで本気にさせたのが、「小林RG」と「えびのRG」だ。

若い選手たちが多い「小林RG」は本気で全日本出場を目指している
若い選手たちが多い「小林RG」は本気で全日本出場を目指している

「小林RG」は、小林秀峰高校の卒業生で、地元宮崎や隣接する鹿児島で働いているメンバー達だ。彼らは、高校卒業後に「大学で新体操を続ける」という選択をしなかったが、まだ新体操はやりたい! という若者たちだ。

「大学以外にも新体操を続ける道があることを示したい」という彼らの目標は、「全日本選手権出場」だ。高校時代に経験している者もいるが、叶わなかった者もいる。そんな彼らに「社会人でも続けよう!」と決意させたのは、大先輩たちが社会人選手として活躍する姿だ。

「三桜さんを見ていて、自分もやりたいという思いが強くなった」とリーダーの中野雄貴は言った。

さらにもう1チーム。「えびのRG」も、今年誕生した。

えびの市の企業から発足した地元密着チーム「えびのRG」
えびの市の企業から発足した地元密着チーム「えびのRG」

このチームは、現時点で半分実業団チーム。メンバー中3人は、えびの市にある企業の社員だ。

地元で男子新体操の指導者も務める前田社長は、「三桜さんといういい見本があったので」とチームを立ち上げた。

今は、小林秀峰OBたちに加勢してもらっているが、いずれは社員でメンバーを揃えたいという野心をもっている。

えびの市の上江地区で活動しているが、試技会が行われた日に訪れると、地元の人達が大勢応援に駆けつけていた。

ジュニア選手たちも大勢いた。まさに「地元密着」型のチームだが、6人中2人は、青森大学で団体日本一を経験した実績のある選手だ。

小林秀峰時代に全国大会で上位入賞経験のあるメンバーもいる。

社会人チームとしては新興だが、その実力は侮れない。

宮崎県だけでも3チームエントリーのうえに、今年は、国士舘大学のOBたちも賑わいを添える。

「ウェルネスRG」は、全員が国士舘大学OB。中には、昨年まで現役だった団体の要・山本悠平、個人で全日本チャンピオンになった福永将司の名前もある。十分な練習ができるとは言い難いチームだというが、この大会出場に大きな使命を感じているのが、水本賢と浪江誠弥だ。

左が水本賢、右が浪江誠弥。「進学しても新体操をやりたい!」中学生、高校生大募集中!
左が水本賢、右が浪江誠弥。「進学しても新体操をやりたい!」中学生、高校生大募集中!

水本は、北海道の恵庭南高校から国士舘大学へ進み、4年間団体選手として活躍してきた。卒業後は北海道に戻り、ジュニア指導に携わってきたが、今年から新潟県の関根学園高校で新体操部を指導することになった。とは言え、まずは部員集めから、という状況だ。2021年にインターハイが開催される新潟県としては、なんとか男子新体操も強化したいという思いがある。しかし、ジュニア、高校生ともに競技人口が少なく、このままでは地元開催枠があっても出場もままならない。そこで水本に白羽の矢が立った。

今はまだ部員集めは難航しているが、寮もあり、練習環境は整っている。全国どこからでも男子新体操をやりたい! という気持ちのある選手を受け入れたいという思いは十二分にある。今回の社会人大会出場は、いわばPRも兼ねている。自らの演技で、「男子新体操っていいものだ」と示し、やりたいと思ってもらいたい、と水本は言う。

浪江も水本と似たような状況にいる。長野県出身で、国士舘大学入学時は無名の選手だったが、そこからの4年間で、全日本選手権に出場できるところまでの進化を見せた浪江は、今年から「日本ウェルネススポーツ大学」で男子新体操部の立ち上げを担当している。高校卒業後、男子新体操を続けたいという生徒を募集中だが、今年発足したばかりで実績も知名度もないので、こちらも募集は難航中だ。

しかし、自身も高校時代は無名の選手だった浪江は、「高校時代の実績では、男子新体操の有名校に進学するのは気おくれするが、新体操を続けたい人は確実にいると思う」と言う。

「自分もそうだったので、そういう選手たちに必要なことは誰よりもわかると思う」

そう言う浪江もまた、「男子新体操の魅力」を多くの人に感じてもらうため、今大会への出場を決めた。

社会人大会は、「これが集大成」という思いで出場している選手もいるが、

宮崎の2チームや、水本や浪江のように、ここからがスタート! という思いで取り組んでいる選手もいる。

それぞれの思いを胸に、今大会がおおいに盛り上がることを期待したい。

さらに今年から、女子の社会人対象の「マスターズRGレディース」も併設された。

かつて行われていた全日本選手権の出場権を懸けた社会人大会は、女子は、2015年を最後に廃止された。

現在は社会人選手にとっての全日本への予選大会は、日本新体操連盟主催の「全日本クラブ選手権」「全日本クラブ団体選手権」のみとなっており、今回の「マスターズRGレディース」も選手権大会ではない。あくまでも新体操愛好者が楽しく演技披露を行う場として、発足した大会だ。

しかし、やはり女子の社会人にとって大会出場のハードルは高いのか、出場者数は多くない。

それでも、まずは今年、出場した選手たちが「出てよかった!」「楽しかった!」と思える大会になり、次年度以降も続くこと、より盛況になることを期待したいと思う。

より芸術に近い新体操で観客の心をつかむ藤岡里沙乃
より芸術に近い新体操で観客の心をつかむ藤岡里沙乃

そのためには、まず今年の大会を盛り上げたいが、盛り上げにおおいに寄与してくれそうなのが藤岡里沙乃選手だ。

ジュニア~東京女子体育大学時代は、日本のトップ選手として活躍。表現力豊かな演技で、「記録以上に記憶に残る選手」だった藤岡選手も今大会にエントリーしている。

普段の大会より、自由度の高い今大会で、どんな演技を見せてくれるのか楽しみだ。

そして、もう1人。富山県の富山雷鳥新体操クラブから出場するのが、お笑い芸人の雷鳥お姉ちゃんだ。

昨年の富山県大会に団体デビューした富山雷鳥新体操クラブの中心メンバーである雷鳥お姉ちゃんは、お笑い芸人という職業柄、色モノ扱いされがちだが、実は高校時代にはインターハイ出場経験もあるれっきとした新体操人で、たしかにその手具操作は、「やっていた人ならでは」の年輪が感じられる。

射水市長にも大会出場を報告。激励を受けた雷鳥お姉ちゃん。
射水市長にも大会出場を報告。激励を受けた雷鳥お姉ちゃん。

今回は、団体での出場が難しいということで、個人での出場となったが、じつはこの1年間かなり怪我で苦しんできた。練習もできない時期も長かったというが、それでもエントリーし、この大会で演技披露をしてくれるその熱意が尊い。

射水市長にも大会出場の報告をしてきたという雷鳥お姉ちゃんの、スーパーパフォーマンスでおおいに会場を沸かせてほしい。

「新体操フェスタ岐阜」は、9月21~23日の3日間にわたって行われる。

男子社会人団体は、23日に、「マスターズRGレディース」は22~23日に競技が行われるが、雷鳥お姉ちゃんは22日のみ、藤岡選手は両日とも登場する。

※新体操フェスタ岐阜の日程・試技順などはこちら

3連休は、大垣まで足を延ばして、新体操を楽しむ社会人たちの雄姿をぜひ見てほしい。

<写真提供:清水綾子>※藤岡選手

<写真提供:雷鳥お姉ちゃん>