【男子新体操】全国高校総体準優勝チーム・青森山田高校も演技動画を公開!~新時代を拓く2監督の軌跡

2019年全国高校総体男子団体準優勝の青森山田高校(青森県)

今年の全国高校総体の男子団体優勝の井原高校に続いて、準優勝校の青森山田高校も演技の動画を公開した。

こちらは、大会前の壮行会で流すために撮影されたもので、本番での演技ではないが、そのクオリティーの高さは十分伝わる動画だ。

荒川栄監督は、自らのSNSで、「全国大会では撮影規制が厳しくなっている。大会での映像権利は運営団体にあるので、不正な動画投稿を規制するためには必要な措置かとは思うが、大会の様子が簡単に見られなくなっている。」と訴えている。

男子新体操のとくに団体演技は、コンテンツとして非常に有望だ。

昨日も、南九州では地元テレビ局が大特集を組んだ鹿児島実業高校の例を挙げるまでもなく、昨日公開された井原高校の動画も凄まじい人気を博してるし、過去にも大ブレイクした動画は数多くある。

だからこそ、不正な動画投稿や二次使用など難しい問題が起きてくるのだが、「では、一切出さないようにする」には、惜しい。

男子新体操の普及にとっても、おそらくマイナスだ。

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そこに青森山田が、一石を投じたのが今回の動画公開と言えるだろう。

もちろん、臨場感などは、本番の大会動画にはかなわない。

しかし、この青森山田の演技、昨日紹介した井原高校の演技とも、本番ではなく練習場で撮影されたものだが、その演技内容や演技の素晴らしさは十分に伝わる。

優勝した井原高校の演技はたしかに圧巻だった。

しかし、準優勝の青森山田高校の演技も劣ってはいない。

「かつてない」尽くしの井原に対して、今回の青森山田の演技は、いい意味でじつに「男子新体操」らしい。

力強い体操、巧みな隊形移動、スピードとキレのあるタンブリング、鍛えられていることが伝わってくる演技だ。

それでいて、常に青森山田が挑戦してきた「斬新さ」も随所にちりばめられている。

演技中に歩く場面があるが、演技中に「歩くこと」をひとつの表現として取り入れたのも、青森山田だった。

体操というよりはダンス? という一部の振りも、じつに青森山田らしく、それがやりすぎにならない、洗練された形で取り込まれていた。

こういった素晴らしいコンテンツが、「大会での映像権利を守るため」に、人目に触れる機会がどんどん減ってしまうのならば、こうして練習動画を公開する流れは今後、より盛んになってくるのではないだろうか。青森山田のように、自校で撮影し自分たちで公開すれば、不本意な二次利用などもされにくいだろう。

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青森山田高校は、男子新体操では古豪であり強豪校だ。

そして、ただ強いだけでなく、常に新しい可能性を求め、挑戦を続けてきた。

ときには、それが「異端」だと言われることがあっても、男子新体操の新しい価値を生むためには、リスクもあえてとってきた。

とくに荒川栄が監督になってからの青森山田は、「ダンス要素の導入」「パンタロンタイプの衣装」「『BLUE』公演への出演」など、物議を醸しながらも、男子新体操の魅力を着実に広げてきた。インターネットを使っての情報発信にも早くから積極的に取り組んでおり、今回の動画公開も、青森山田らしいと思う。「露出が少ない」と嘆くだけでなく、自ら切り拓く、自ら動く。荒川監督は、そうやって多くの困難を乗り越え、妄想と言われることも現実にしてきたからだ。

常に革新的な演技構成で、男子新体操をリードしてきた井原高校の長田京大監督とは、「男子新体操の新時代の両輪」と言ってよいだろう。

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じつは、荒川と長田は、国士舘大学で同級生だった。

2人とも個人選手として活躍し、荒川は、1992~1994年に全日本インカレ個人総合3連覇。長田は、1994年全日本インカレでは荒川と同点で個人総合優勝。同年の全日本選手権でも個人総合初優勝で有終の美を飾っている。

個人選手として甲乙つけがたい活躍をしてきた2人だが、学生時代から仲はよく、リスペクトし合う関係だったという。それは、指導者になってからも変わらない。それぞれの置かれた場所で、「優勝だけを目指すのではなく、我々で時代を創る」という大学1年生のときに2人で交わした約束を果たすべく、日々研鑽しているのだ。

結果、荒川は2004年の高校総体で青森山田の監督として団体初優勝(荒川監督としての初優勝)を成し遂げ、翌2005~2006年は、長田が監督として井原高校(当時の校名は精研高校⇒井原・精研高校)を率いて2連覇。その後も、2007、2012、2015と青森山田が優勝。井原も2011、2016と優勝し、2人の監督としての優勝回数は、4回で並んでいた。今年、井原が優勝したことにより、長田が1勝リードとなったが、そのことがまた荒川に火を点け、青森山田のさらなる進化につながるに違いない。

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今回、青森山田の「高校3冠」は、盟友・長田に阻まれた形になったが、表彰式後、インタビューエリアで顔を合わせたとき、荒川監督はじつに清々しい表情だった。

井原を称え、長田監督を称え、「次は負けない」と誓ってみせた。

「でも、負けた相手が、ここ(井原)でよかったのでは?」と声をかけると、

「まあね」と言って、荒川監督は笑った。

こんな2人の姿を見ていると、いい意味で「小学生男子のようだ」と思う。

勝てば嬉しい、負ければ悔しい、でも、勝った相手のことを素直に凄いな!と思う。だから、自分も次に向けて頑張れる!

約30年間、彼らは男子新体操に魅入られ、そこに人生を懸けてきた。

この競技を広げ、存続させ、その価値をより高めるために、何をやるべきかずっと模索してきた。

今もその歩みを止めてはいない。

そんな2人がいたから、今の男子新体操がある。

※高校総体本番での演技が見たい! という方は、こちらの申込書でブルーレイの注文を! 9月15日締め切りとなっているのでお忘れなく。

<映像提供>青森山田高校 <写真提供>清水綾子