【新体操】ついに高校女子の頂点に! 常葉大常葉(静岡県)が貫いた「一念」

全国高校総体女子団体優勝の常葉大常葉高校、表彰台では笑顔が満開だった。

2017年度、2018年度と3月の高校選抜を連覇している常葉大常葉高校が、ついに、全国高校総体でも頂点に立った。

「高校選抜強者」の常葉大常葉だが、じつは夏の高校総体では、優勝はおろか表彰台にものったことがなかった。

地元開催で、並々ならぬ覚悟と意欲で挑んだ昨年の高校総体では4位。

地元ならではの大声援の中、おそらく凄まじいまでの重圧はあったはずだが、落下もなく、ほぼノーミスの素晴らしい演技を見せた。

しかし、1か所大きく移動してキャッチしたところがあり、超ハイレベルだった昨年の優勝争いでは、それが致命傷になってしまった。

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その前年、2017年の高校総体では15位だったことを思えば、4位は大躍進と言えるのだが、「地元開催の高校総体での優勝」を追い続けてきたチームにとっては、「4位」という結果には悔しさしか残らなかったという。

キャプテンの関矢歩実は、

「4位だったことが本当に悔しくて。そこから練習の仕方、取り組み方も変えました。去年のチームは、3年生が4人だったので、チームには私しか残らなかったんですが、新しく入ったメンバーもみんなで先輩たちの悔しさ、思いをかかえながら、この1年間やってきました。」と言う。

例えば、

「以前は、通しでミスしたところは100回やり直す、というやり方でしたが、今年は、ミスしそうなところは、100回やる。ミスが出る隙をなくすように練習してきました。正規の練習時間の他にも、昼休みや、学外の体育館での練習のときは、時間を延長してでも、確信がもてるようになるまで練習する。本当に100回、500回、何百回とやってきました。」

とサラリと言ってのける関矢だが、その練習量は半端ない。もちろん、全国レベルのチームはどこも凄まじい練習をしているが、今の常葉の強さは、選手たちが自発的に、ここまでの練習に取り組んできたことに支えられている。

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今大会での演技の中にも、関矢の言葉を裏付ける場面があった。

常葉大常葉の出番は、47チーム中の7番目。かなり早めの登場となったが、高校選抜のときから使っている「ボレロ」が流れ、演技が始まってすぐ、最初の交換でのことだ。

フロアの前方、審判から見て右端にいた関矢へのクラブの投げがやけに低くかった。関矢はそれを座のまま、上体を後屈して見事にキャッチしたのだが、一瞬ひやりとした。低めにライナーで飛んできた投げを後屈でキャッチするというのはあまりにもリスキーに見えたからだ。狙い通りだったのか、とっさの判断だったのか。

仮に狙い通りだとしても、関矢があのキャッチを難なく成功させた瞬間、この演技では、きっとミスは出ないと確信した。

このチームは、そこまでの練習を積んできているのだ、と感じたからだ。

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関矢に、この最初の交換のことを尋ねてみた。

「あれはいつもとは違ってました。本当は体より前でキャッチして、そのまま前転する予定でした。」

やはり、とっさの判断、対処だったのだ。しかし、練習していたとしても難しそうなキャッチだったが、とっさでやれるものなのか。

「あの交換は、ミスも出やすくて、本当に何百回も投げて投げて、、、なので、狂うパターンもたくさんやってきてますから。」

おそれいるしかない。

文字通り、彼女たちは自分たちの演技を「やり尽してきた」のだ。

この日のために。1年前からずっと。

いや、じつは1年前からではない。

常葉の地道かつ着実な進化は6年前から始まっていた。

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現在、高校3年生の関矢が中学1年生だった2014年、常葉学園中学校は、全中では4位、全日本ジュニア7位だった。

翌年、2015年には、全中5位、全日本ジュニア3位。この年が初めての全日本ジュニアでの表彰台だった。

この2015年の結果によって、2016年シーズン初めに国内選考会を勝ち抜き、5月にはアジアジュニア新体操選手権に出場。

そこで、団体総合、種目別2種目ともに金メダルという、予想以上の結果を出した。

この年の全中では2位、全日本ジュニアには、クラブチーム・静岡RGとして出場し2位。

ジュニアの団体では、押しも押されぬ日本トップレベルのチームに昇りつめた。

同時にこの年、全国高校総体にも静岡県代表として出場、9位になっている。

関矢が高校1年生になった2017年。

全国高校総体では15位。ここまで順調に上昇気流にのってきた常葉にとっては予期ぜぬ惨敗だったが、そこで転んだままにならないのが常葉のしぶとさだ。

クラブチーム・静岡RGとして出場した8月のクラブ団体選手権で3位となり、全日本選手権の出場権を獲得すると、11月の全日本選手権では、団体総合6位、種目別フープ×5では、3位という高校生としては大健闘の成績を得る。

高校総体では15位だったチームが、だ。

この全日本選手権での勢いのまま、2018年3月の高校選抜では初優勝。

「春夏連覇も!」と挑んだ地元での高校総体では4位に終わったが、この年も、10月の全日本選手権では、予選のフープ×5では1位、団体総合で2位、種目別決勝フープ×5で2位と、大学生をも凌駕する結果を残す。この時点で、高校総体4位が、どれほどこのチームにとって悔しかったのか、それをバネにして頑張ってきたのかは、伝わってきた。

そして、2019年。まずは3月の高校選抜で優勝し、連覇達成。

「今度こそ、高校総体で優勝!」というお膳立ては整って迎えた8月7日だった。

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たしかにジュニア時代から強いチームではあった。

アジアジュニアという国際大会での金メダルがそれを証明している。

しかし、ジュニア時代の常葉は、正確ではあるがやや機械的、に見える演技をするチームだった。

なにしろ何回見ても、まったく同じに実施することができるのだ。それはもちろん、彼女たちがそれだけの練習をしてきたということではあるが、やや面白味には欠けるところがあった。正確を期するあまりやや演技内容を無難にまとめてしまうきらいもあった。

が、そこはあくまでも通過点だったのだと、高校チャンピオンになった今の常葉を見ればわかる。

2017年、2018年と情熱的な作品に挑戦し、それを圧倒的なエネルギーで演じるようになった常葉には、かつての「機械的」「無難」という面影はなくなっていた。

間違いなくトップレベルの高難度な構成を、ドラマチックな曲にも負けず、彼女たちは表情豊かに踊りきるようになった。

2018年の作品も、優勝してもおかしくない演技だった(現に全日本の予選では1位になっている)。しかし、わずかなミスで、高校総体チャンピオンにはなれなかった。

その「わずか」を埋めるために、彼女たちは、この1年を費やしてきた。

そして、昇り切ったのだ。

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ここ2年の強い常葉を見れば、強豪チームであることは揺るぎない。

が、決して歴史や伝統のあるチームではなく、むしろ新興と言ってもいいチームだ。

一気に昇ってきたわけでもなく、一歩一歩、あせらずしぶとく歩を進め続けてここまできた。

その一途さに、ただ頭が下がる。

強くなるために

勝つために

やるべきことを徹底してやってきた

そして、あきらめなかった

そんなチームが頂点に立ち、表彰台で最高の笑顔を見せてくれた今年の女子団体は、じつに清々しかった。

この優勝は、多くの「これから」のチームにとって大きな希望となるに違いない。

<写真提供:清水綾子>