【新体操】メンバー一新で連覇に挑む! 昭和学院高校の「伝える演技」に期待!~2019全国高校総体

高校選抜での昭和学院高校。監督はいつも最高の笑顔で選手たちを迎えるのが昭和流。

「継承」

7月10日。

久しぶりに訪ねた昭和学院のアリーナは、中高校生の練習が同時に行われていて、相変わらず活気に満ちていた。

このところ、他の高校もだが、部員数の多いところが増えており、つくづく「数は力」だと感じる。昭和学院はその象徴のようなチームだ。

中高生総出でマットのずれを直す部員たち
中高生総出でマットのずれを直す部員たち

超ハイレベルな大激戦だった昨年の全国高校総体の女子団体。その覇者。

「ノートルダムの鐘」をモチーフにした昨年の昭和学院の演技は、技術力の高さでは、甲乙つけがたい名勝負において、表現力、伝える力、が抜きん出ていた。上位は「どこが勝ってもおかしくない」試合だったが、昭和学院が優勝したことに異を唱える人はほとんどいなかった。

それだけ、「納得させられる演技」だったのだ。

昭和学院高校/高校選抜
昭和学院高校/高校選抜

今年はディフェンディングチャンピオンとなる昭和学院だが、昨年の優勝メンバーが一人も残っていない。もともと3年生が4人というチームだったうえに、唯一1年生だった中村胡桃は、フェアリージャパンPOLA入りしてしまった。

今年3月の高校選抜での昭和学院は、潔いまでに新生チームだった。それでも、さすがと思える能力の高さやチームとしてのまとまりのよさは、十分にあり、3位。選手総入れ替えをしても、ここまで仕上げてこれるのは、部員数の多さ、層の厚さ、そして、控えの選手も一体となって練習に取り組んでいるチームの雰囲気ゆえだろう。

身体能力の高さは全国トップレベル
身体能力の高さは全国トップレベル

この日、団体の演技を見せてもらったが、1年生が2人入り、高校選抜のときからさらにメンバーが変わっていた。しかし、その演技は、いい意味で「いつもの昭和」だった。美しく、そして、心に響くものがある。

もちろん、能力も高い。1年生の大内日愛と横山結那は、イオンの団体メンバーとして全日本ジュニア優勝を経験している。2年生ながらキャプテンを務める渡邊佳穂も、昭和学院中学の団体メンバーとして全中優勝を経験。全国高校総体こそは初出場だが、経験値は決して低くない。

これは、今年の昭和も強そうだ。演技を見ながらそう感じた。

情熱と愛情あふれる塩屋監督の指導に選手たちは絶対の信頼を置いている
情熱と愛情あふれる塩屋監督の指導に選手たちは絶対の信頼を置いている

この日、塩屋恵美子監督が、選手たちにかけていた言葉で、とくに印象的だったのが、「(交換や連係など)技は冷静に、しっかり落ち着いてやる。それができてこそ、そこに感情を込めることができるし、それが見ている人に伝わるから。」だった。

ああ、そうなんだ、と思った。

今の慌ただしくなりがちな新体操であっても、高い得点が出るまで技を詰め込んだ演技でもあっても、「伝えること」のできるチーム、選手はいる。どれだけ投げ受けが連続していても、それが技の羅列に見えないためには、そこに感情(思い)を込めることが必要。ただ、そこに至るまでには、まずは、「やるべきことを落ち着いてしっかり(正確に)やる」ことが必須なのだ。

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全国トップレベルのチームの演技はどれも難しいには違いない。昭和の演技ももちろん、かなりの高難度だ。塩屋監督をもってして「昭和史上最高難度かも」と言わしめる作品だ。

それだけ難しいことをやっているのだから、常に神経は張りつめている、気をつけるべきことは山ほどあるし、いつなにが起きても対処できるように頭をフル回転させている必要はもちろん、ある。

ただ、それがそのままフロア上で出てしまっては、それは「作品」とは言えなくなる。演技は「作業」になってしまう。自分たちの演技でなにかを「表現」するためには、「なにかを伝える」ためには。まずは、やるべきことを意識しなくてもできるところまで精度を上げていくしかないのだ。それができてこそ、表現が生きる。伝えることができる。

1年前に先輩たちが「ノートルダムの鐘」でできたように。

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先輩たちのように優勝カップを手にすること、金メダルを手にすること、を彼女たちは目標にはしているだろうが、おそらく本当に目指しているのは、あのとき、昭和学院がこのはなアリーナで作り出したあの空気。それが競技であることをみんなが一瞬忘れて、魅入られてしまうようなあの空気だ。

そこにこそ、昭和学院はこだわっている。

フレッシュなメンバーだけに、今シーズンの昭和学院は思わぬ苦杯をなめている。

千葉県の国体予選で、敗退。選手たちにとって、このショックは大きかったという。

そこから立ち直るためには、関東ブロック大会での優勝、それしかない! と、いうかなり追い詰められた状態で関東ブロック大会を迎えた。そこで、21.350の高得点をたたきだし、見事に優勝。国体予選のトラウマを脱し、全国高校総体への弾みをつけた。

「ここで優勝するしかない! というところで勝てた。このチームにとってすごく自信になりました。」と塩屋監督。優勝はもちろん嬉しかったに違いないが、国体予選ですっかり自信をなくしていた選手たちが、そこから這い上がれたこと、自信をつかみとったことがより嬉しかったのだろう。

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この日、選手たちは、黄色のセパレートで練習着を揃えていた。

「前に先輩たちが取材を受けたときも黄色だったので、黄色。」と、前日に選手たちが決めたのだそうだ。

2013年以来、6年連続で全国高校総体の表彰台にのり続けている昭和学院(うち2回は優勝)。その偉大な先輩たちの実績を、今の選手たちがプレッシャーに感じる必要はない。だが、おそらく本人たちがいちばん、「先輩たちのように」と強く願っているのだろう。

その願いが叶うように、のびやかに美しく、そして思い込めて、昭和らしい演技を、鹿児島でぜひ見せてほしい。

<撮影筆者>※大会の写真は清水綾子提供