【男子新体操】神埼清明、青森山田を止めるのはどこだ?~2019全国高校総体男子団体展望

2017~2018高校総体男子団体連覇、3連覇に挑む神埼清明高校。

今回の全国高校総体男子団体には、2つの注目ポイントがある。

その1 どこが神埼清明高校(佐賀県)の3連覇を阻止するのか?

その2 どこが青森山田高校(青森県)の「高校3冠」を阻止するのか?

奇しくもどちらも「3」がキーワードになっているが、どちらも達成するのはかなり難易度が高い。それだけに価値がある。

全国高校総体男子団体の3連覇は、1996~1999年の水俣高校(熊本県)まで遡らないと記録がない。このときの水俣高校は、なんと4連覇しているが、その前となると、1990~1992年の青森山田高校まで遡る。2連覇でさえ、昨年と一昨年に神埼清明高校が達成する前は、2005~2006年の井原高校(当時の校名は、精研高校⇒井原・精研高校)まで遡らないとない。近年は、上位校の力が拮抗しており、3連覇どころか連覇さえもなかなか難しいのだ。

そんな中、神埼清明高校が久々に連覇を達成し、今年は「3連覇も!」との期待も集まっている。昨年までのメンバーは2人しか残っていないが、抜けた3年生の穴を埋めるのがジュニア時代に全日本ジュニアで団体連覇を成し遂げているメンバーとなれば、戦力ダウンどころかアップしている可能性が高い。神埼3連覇は十分にあり得ると考えらえる。

神埼清明高校(2019.7.25.)
神埼清明高校(2019.7.25.)

一方の青森山田高校は、昨年の全国高校総体では4位と珍しく表彰台を逃したが、新メンバーになってからの全国大会初戦・高校選抜大会(3月23日/鳥取県)で優勝。さらには、5月26日に高崎アリーナで行われた男子新体操団体選手権でも優勝。2019年ですでに全国大会2冠を達成している。

「高校選抜」「男子団体選手権」(2010年から実施)「高校総体」の3つのタイトルを1つの高校で独占したことがあるのは、2011~2012年の井原高校の例があるが、このときは2011年の高校総体と、その後の2大会でメンバーが代替わりしていた。新チームになってからの同一メンバーでの3大会制覇はまだなく、青森山田高校が今回達成すれば「初の3冠」となる。

青森山田高校/男子団体選手権
青森山田高校/男子団体選手権

「3連覇」が懸かる神埼清明高校と、「3冠」が懸かる青森山田高校。

おそらくお互いが最大のライバルと言っていいだろう。奇しくも、今回は、試技順が神埼清明は終わりから2番目、青森山田がその次だ。採点競技においては、試技順の妙が多少なりともある。力が拮抗しているチーム同士なら、試技順は続いているほうが採点には納得しやすいだろう。23チーム中21チームの演技が終了したあと、大本命と言える神埼清明が登場し、その後に青森山田。まさにガチンコ勝負となりそうだ。

井原高校(2019.7.20.)
井原高校(2019.7.20.)

この2強に割って入りそうなのが、昨年の準優勝校・井原高校(岡山県)だ。井原は、昨年の準優勝メンバーが5人残っており、新加入の1年生も昨年の全日本ジュニア団体の優勝メンバー。神埼清明、青森山田とも十分互角の勝負ができるだけの力はある。さらに、井原の団体演技といえば、毎年、その斬新さで男子新体操界をリードしてきた。今回も「さすが井原!」と言わしめる演技を見せることができれば、2強を止められる可能性はある。

清風高校(2019.7.20.)
清風高校(2019.7.20.)

神埼清明、青森山田、井原。この3校の一角を食おうと、虎視眈々と狙っているのが、昨年の高校総体5位、今年の男子団体選手権2位と着実に力をつけてきている清風高校(大阪府)だ。5~6月にかけて行われるブロック大会の近畿大会で優勝したときの清風の得点16.675は、九州大会で神埼清明が出した17.650に次ぐ高得点だ。もっともブロック大会のように地区ごとに違う環境で行われた大会での点数を比べることにはあまり意味はない。が、今の清風が高い得点力をもっていることは間違いないだろう。清風は、今回、表彰台のりを果たせば、2003年以来となる。

恵庭南高校/高校選抜
恵庭南高校/高校選抜

さらに、今年の高校選抜2位、男子団体選手権3位。2013~2018年の6年間で表彰台を逃したのは、2017年の1回だけという驚異の高値安定ぶりを見せる恵庭南高校(北海道)も侮れない。本番でのミスはめったに見られないという抜群の実施力と、伝統ともいうべきシャープな線の体操で、今回も上位進出を狙ってくるだろう。

芦北高校/九州ブロック大会
芦北高校/九州ブロック大会

ブロック大会の得点で、一気に注目株となってきたのが芦北高校(熊本県)だ。強豪ひしめく九州大会で、神埼清明に次いでの2位。その得点16.600は、近畿チャンピオン・清風の16.675にも迫る高得点だ。もともと基礎力の高いチームだが、今年はいちだんと運動量が多く疾走感のある演技になっていた。また、シンプルな振りの中で同調性や基本に忠実な体操をしっかり見せる構成で、いわゆる「見やすい」演技が高い評価を受けている。

坂出工業高校(2019.7.20.)
坂出工業高校(2019.7.20.)

坂出工業高校(香川県)も、四国大会では16.350と高得点をマーク。例年、高校始めの選手たちが多い中でチームをまとめあげる手腕を発揮してきた同校の林晋平監督が、今年のチームに関しては、「自分が監督になってからの16年間で一番やりたいことができている」と言う。今年初めて、6人全員が新体操経験者でチームを組むことができた。いつもならバク転から教えなければならなかったのが、今年は違う。昨年、久々に全日本選手権にまで駒を進めたときのメンバーとは6人中4人が入れ替わったが、「うちにしては線のきれいな選手が多く、やや小ぶりだがバランスはよいチーム」。このところ、より求められるようになってきた運動量では、上位チームにもひけをとらない。試技順が実施力の高さには定評のある恵庭南の後なだけに、「実施で見劣りしないように、実施重視、徒手重視」を意識している。

小林秀峰高校(2019.7.29.)
小林秀峰高校(2019.7.29.)

九州大会ではミスもあり、定位置となっていた2位から陥落した小林秀峰高校(宮崎県)は、九州大会後、構成や曲をがらりと変えた。リスキーな組み技がトレードマークになっていたチームが、今までになく徒手、隊形移動、運動量など男子新体操の本質的な部分を磨き、「新生・小林秀峰」という印象のチームに生まれ変わった。例年とは違う小林秀峰の挑戦がどう決着するのか、注目したい。

尼崎西高校/高校選抜
尼崎西高校/高校選抜

近畿大会では、清風の演技が素晴らしく、「圧勝か?」と思われたが、「いや、ここも強い。勝負はわからない」と思わせたのが尼崎西高校(兵庫県)だ。近畿ブロックには、全国高校総体の団体出場枠が「2」しかない。近年は、大阪、京都、兵庫いずれも全国で上位争いができる力をもったチームが育っているだけに、全国でもっともハイレベルな出場枠争いとなっている。今年はとくに、紫野高校(京都府)もかなり強かったため、熾烈な戦いとなったがそこを勝ち抜いただけに尼崎西も侮れない。大きさ、のびやかさのある体操に加え、今年の作品は、豊富な運動量も見せ場になっている。

盛岡市立高校/高校選抜
盛岡市立高校/高校選抜

今年は日本列島全体が猛暑に襲われているが、よりによって鹿児島開催。暑さによるアクシデントがないことを祈るばかりだが、東北からの出場となる盛岡市立高校(岩手県)、名取高校(宮城県)も、暑さに負けず力を発揮することができれば、入賞争いには絡んでくるはずだ。盛岡市立は、3月の高校選抜で4位、男子団体選手権6位、東北大会では青森山田に次いで2位と、安定感がある。一時期は個性的な演技が持ち味となっていたが、このところはやや原点回帰気味で、隊形移動の面白さや徒手、タンブリングなどの基礎力のたしかさで見せる演技で、評価が高まってきている。

名取高校/男子団体選手権
名取高校/男子団体選手権

名取は、個人競技でも優勝争いに絡んでくるだろう遠藤那央斗を中心にしつつも、バランスのいいチームで、非常に一体感のある演技を見せる。音に合わせた細かい振りが魅力的な名取の演技だが、それゆえにバラついて見えたり、動きが過剰見えてしまうこともあったが、今回はそこも非常にバランスがよく、チーム力の高さを感じさせる。振付に一部、手話を取り入れるという新しい試みにも取り組んでいる。

埼玉栄高校/男子団体選手権
埼玉栄高校/男子団体選手権

関東チャンピオンの埼玉栄高校(埼玉県)は、高校選抜は6位、団体選手権では5人編制になってしまい8位、関東大会では優勝はしたものの、課題の残る演技で、15.150と、まだ真価を発揮できずにいる。が、今年のチームは背の高い選手が多く、埼玉栄の男性的でドラマチックな演技がよく似合うチームだ。関東大会からの2か月間でどこまで仕上げてきているのか、おおいに期待したい。

科学技術高校(2019.7.22.)
科学技術高校(2019.7.22.)

昨年の高校総体で9位、高校選抜9位、団体選手権では4位の科学技術高校(福井県)も着実に力をつけてきている。タンブリングの強い選手が多く、徒手にも重厚感があり、キレもいい。選抜のときはクラッシック音楽を使ったドラマチックな演技を見せていたが、大きなミスなく演技が通れば、高い評価がついてもおかしくないチームだ。

昨年から今年にかけて大会実績などをもとに、今年の全国高校総体男子団体の展望をしてみたが、高校3年間で驚くほど力をつけるのが男子新体操だ。去年まではこうじゃなかった! というチームが一気に力をつけてくることがあるから面白いのだ。

今年の全国高校総体新体操競技は、8月6~7日に鹿児島県の鹿児島アリーナにて行われる。観覧は無料だが、混雑が予想されるため、入場は抽選になっている。

※入場についての注意はこちら

ダイナミックな演技の応酬に、例年、会場がおおいに沸く男子団体競技は、7日(水)に行われる。競技開始は9時15分。

会場での観戦は無理でも、インハイTVでライブ中継されるので、ぜひこちらをチェックしてほしい。

※「インハイTV」はこちら

<写真提供:清水綾子> ※井原高校、芦北高校、坂出工業高校、清風高校、小林秀峰高校は、筆者撮影