【男子体操競技】「安定感」の萱和磨が圧勝の金メダル獲得!~第30回ユニバーシアード

萱一人ではなく、4位の谷川翔、サポートの谷川航、スタッフ全員でつかんだ金(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

ユニバーシアード男子個人総合は、予選首位通過の萱和磨が、1種目目のゆかで14.800の2位スタートを切ると、2種目目のあん馬で14.600をマークし、この時点で首位に立つと、そこから一度も首位を明け渡すことなく、「2018年度世界選手権個人総合6位」の貫禄を見せつけるような独走ぶりで、優勝。

萱の平行棒(NHK杯での演技)
萱の平行棒(NHK杯での演技)

とくに、日本人の苦手種目と言われ続けてきたつり輪での14.600(種目別1位)と、すでに優勝は確定的になっていた5種目目・平行棒でマークした15.050(種目別1位)は圧巻だった。6種目中1位はこの2種目だが、跳馬が4位で他3種目は2位という「スーパーオールラウンダー」ぶりを発揮した。6種目合計得点87.000は、先だって行われたヨーロッパ選手権で優勝したときにDavid Belyavskiy(RUS)がマークした85.456をも上回っている。採点競技の得点を別の大会ものと比べることにはあまり意味がないが、それでも、萱の得点力が十分、世界のトップレベルで戦っていけるところにいるという証明にはなっただろう。

種目にもよるが世界のトップ選手は15点台にのせてくる現在において、得意種目でも14点台後半の萱は、「世界が驚嘆!」というタイプの選手ではない。谷川航のブラニク(跳馬)や谷川翔の開脚旋回(あん馬)のような派手なトレードマークもない。しかし、ユニバーシアードでも予選、決勝の12演技で1度も14点台を切るような過失を犯していない。やはりこの安定感は最強の武器だ。個人総合ももちろんだが、団体戦のときこれほど頼りになる選手もいないだろう。

いや、安定感だけではない。

大舞台でも動じず、闘志を表に出せる、そのメンタリティーは、経験豊富な選手たちが一気に姿を消した今の日本代表には不可欠なものだ。

大会前のコメント「日本が強いことをユニバーシアードで見せたい」を有言実行。この「気持ちの強さ」は、頼もしいの一言だ。

高い得点をマークした谷川翔の平行棒(NHK杯での演技)
高い得点をマークした谷川翔の平行棒(NHK杯での演技)

さらに、4位に終わった谷川翔にも、大きな収穫があった。

谷川は5種目目の平行棒で、14.850(種目別2位)の高得点を上げ、暫定順位を2位まで上げた。が、最終種目の鉄棒で、今大会から入れたばかりの大技・カッシーナで落下。12.850に沈み、順位も4位まで後退してしまった。終わってみれば、3位の選手との総合得点の差は0.225。無理にカッシーナを入れずにまとめていれば、おそらくメダルは獲れたに違いない。単にメダルの数だけを考えれば、この鉄棒には悔いが残るだろうが、谷川の選択には迷いはなかったように見えた。ユニバーシアードを軽視しているわけではないが、やはり「本番はここではない」からだ。

昨年のNHK杯では、鉄棒の落下で一気に代表を逃すところまで順位を落とした谷川は、今年のNHK杯での優勝インタビューで「鉄棒の前は怖かった」と涙を見せた。全日本選手権でも、最終種目の鉄棒は安全策の構成で手堅く連覇達成。もともと得意種目ではないうえに、優勝争いをする上では、たいてい最終種目となる鉄棒に対しては、ずっと「まとめる」ことを優先しているように見えていた。その谷川が、今大会は、かかとを傷めていたという悪コンディションながらもカッシーナに挑戦。そして、予選では見事成功し、鉄棒の得点の大幅アップに成功した。決勝での失敗を見ると、まだ安心して使えるところまでは至っていないのかもしれないが、それでもこういう大きな大会で挑んできたことには大きな意味がある。

谷川の技術が上がってきているというだけでなく、気持ちも変化してきているのだろう。

「リオ五輪金メダルメンバーのいない日本代表では不安」

「これでは東京五輪は厳しい」などという世間の声に、彼らはきっと必死で抗ってきたのだ。

そして、その成果は見えてきた。

今年の世界選手権は、10月4日開幕。

まだ、あと2か月ある。

2か月後には、彼らは見違えるようにたくましく、さらなる成長を見せてくれる。

そんな予感がしてきた。

<写真提供:赤坂直人>