【新体操】第1回世界ジュニア選手権への切符を手にした喜田未来乃の「恐るべきDNA」

代表選考会1位を決めた喜田未来乃(エンジェルRGカガワ日中)のリボンの演技

今回の「新体操日本代表選考会」において、ジュニア選手は、今年が第1回となる世界ジュニア新体操選手権の代表選手が1~2名、アジアジュニア新体操選手権の代表選手が3~4名選出されることになっていた。

1日目を終えて、首位は鈴木菜巴(アリシエ兵庫)、2位が喜田未来乃(エンジェルRGカガワ日中)という展開だったが、その得点差は、0.850と、落下などのミスがあれば大きく減点される現在の新体操においては十分に逆転可能という僅差だった。

そのことがプレッシャーになったのかどうかはわからないが、2日目の試技順1番で演技した喜田のクラブは、チャーミングで非常に魅力的な演技ではあったが、落下1回、大きな移動も1回と安定感の欠ける演技で、13.300。逆転1位を狙うにはやや苦しい出だしとなった。

喜田未来乃
喜田未来乃

ところが、クラブの試技順が最後だった暫定首位の鈴木が、落下こそは2回に抑えたものの、危ないところの多い演技になってしまい、この種目12.300に終わってしまう。初日の2種目では、パーフェクトに近い演技を見せていた鈴木にしては珍しい乱調だった。

この時点で、喜田が鈴木を逆転し、0.150上回り、最終種目・リボンを迎えることになった。

リボンは4種目の中でもっともミスが起きやすく、大きな減点にもつながりやすい種目。

ましてやジュニアで、「これで勝負が決まる」という局面で冷静に演じることは難しいかと思われたが、ここでも最初に演技をした喜田は、この大会の4種目の中でもっとも落ち着いて、堂々とした美しい演技を、このリボンで見せた。ジュニア選手の中では、抜けて高い身長も、このリボンという手具では大きなアドバンテージとなり、高い身体能力から繰り出す高度な身体難度と、リボンの美しい軌跡がマッチして、見とれるような演技だった。

細かいミスは見受けられたが、大きく崩れることはなく、13.600。リボンではどの選手もそれほど高得点は期待できないため、このリボンの得点は、喜田の1位通過をほぼ決定づけるものだった。

終わってみれば、リボンではやはりこの喜田の得点が最高点で、喜田未来乃は総合得点56.100。2位の鈴木に1.850差の1位通過となった。

喜田は、昨年の全中で、当時1年生ながら優勝を果たし、11月の全日本ジュニアでも5位。今大会にエントリーした選手の中では最上位とあって代表選手の最有力候補ではあった。

しかも、喜田の姉は、現在、日本の特別強化選手としてロシア合宿に参加している喜田純鈴(エンジェルRGカガワ日中/国士舘大学)。さらにさかのぼるならば、母も大学まで新体操を続け、父も男子新体操の選手だったという、新体操界の「スーパーサラブレット」だ。

素材が悪いわけはないし、期待されないはずがない。そんな宿命のもとに育ってきた選手だ。

東京五輪のターゲット年齢だったため、チャイルド時代から注目を集め、常に「東京五輪」を意識させられてきた姉に比べると、比較的のびのびと育っているようにも見えていたが、その分、まだまだ無限の可能性を感じさせる逸材だ。

初開催の世界ジュニアに、日本からこういった選手を派遣できることは、日本の新体操にとっては喜ばしいことと言えるだろう。

今大会を振り返って、「4種目ミスなくやることを目指していたので、ミスが出た種目があったことは悔しい。クラブでもミスがあったが、最後のリボンの前にちゃんと気持ちを切り替えてできたのはよかった。」という喜田。

初の海外派遣となる世界ジュニアに関しても、「世界ジュニアは、今年が初めての開催なので、しっかりそこに出場できるように(この選考会での)1位を目標にしていた。」と意欲を見せた。

2日目は、ミスの目立つ選手が多かったが、前半種目ではずば抜けた安定感と、明確な身体難度、手具操作、そして曲をうまく生かした演技構成など、魅力的な演技を見せた鈴木菜巴が2位通過。

鈴木菜巴
鈴木菜巴

スピード感があり、技が次々と組み込まれた高難度な演技をやり切る集中力を見せた生野風花(宝塚サニー新体操クラブ)が、3位通過となった。生野は、とくに最終種目のリボンが素晴らしく、ミスする選手が多い中、まったく危なげのない実施で、曲のリズムによく合った爽快な演技だった。

生野風花
生野風花

そして、4位に入った田口久乃(安達新体操クラブ)までの4名が、アジアジュニア新体操選手権に日本代表として派遣されることが発表された。要項には「3~4名」となっていたが、枠いっぱいの4名派遣になったのは、4位の田口が中学1年生ながら、上位3人に迫る演技を見せたからにほかならない。ボールだけは、最後で大きなミスが出たが、他の3種目はほぼノーミス、ミスがあってもごく小さなダメージにとどめる対処の良さも見せ、これからが本当に楽しみと思わせた。

田口久乃
田口久乃

喜田もまだ中学2年生。

そして、田口が中学1年生と、「東京五輪には間に合わなかった世代」にも、楽しみな選手たちが続々と育ってきている。

日本の新体操は、東京五輪後も、楽しみだと言えそうだ。

アジアジュニア新体操選手権日本代表選手
アジアジュニア新体操選手権日本代表選手

<写真提供:清水綾子>