【新体操】「ボール×5」で東京女子体育大学が暫定首位!~ユニバーシアード代表選考会

2位に0.550差をつけて首位に立った東女(写真は2018年全日本のもの)

2019年4月20日、高崎アリーナ。

開会式直前に会場では団体公式練習が行われた。

試技順とおりに6チームが1回ずつ、本番さながらに演技を通したが、この公式練習ではどのチームもいくらかの落下ミスなどはあった。

それでも、どのチームも非常に動きはよく、仕上がりのよさは感じられた。

「これはいい試合になりそうだ」と期待が高まった。

そして、11:00。

大学生にとっての最高の舞台・ユニバーシアードの出場権を懸けた熱い戦いが始まった。

試技順1番。

東京女子体育大学。曲は東女の伝家の宝刀とも言うべき「シェヘラザート」。

公式練習でこの曲がかかったとたん、そこに東女のこの選考会に懸ける本気度と、なりふり構わず勝ちにきた、という強い思いを感じた。

「シェヘラザート」は、2013年カザン(ロシア)で行われたユニバーシアードに東女が出場したときに使っていた曲だ。

2011年ユニバーシアードのときは、初めて出場権を日女に譲る形になった東女は、この曲で起死回生の演技を見せ、2013年はユニバーシアードの出場権を奪還。カザンでも団体総合3位。この年は国内大会でも負け知らず。女王復活を成し遂げたあの曲だ。

劇的な曲で、新体操団体にはたしかによく合うが、それだけに、実施が伴わなければ曲負けしかねない。そして、東女がこれを演る以上、下手な演技では「焼き直し」になってしまう。

そんなリスクも十分にわかったうえで、あえてこの曲に東女は賭けたのだと思う。

先輩たちが築いてきた伝統。かつて手にしていた栄光。

そして、それを取り戻そうとひとつになった強い思い。

曲は、いわば「過去の栄光」を象徴するような曲だが、それを演じる選手たちはまぎれもなく挑戦者だった。

ひとつひとつの動きを、操作をどこまでもていねいに、心をこめて行う。

演技が始まって数秒で、きっと落下ミスなどは起きない、と直感した。

だから、勝負の分かれ目は移動になると思い、意地悪なくらい細かい移動も見逃せないつもりで見た。

減点になるかも、と思う程度の移動が2か所くらいあったように思う。

が、ほぼそれだけだった。

見せ場の曲を生かしたステップもじつに生き生きとしていて、思い入れのあるだろう曲を使った意義が感じられた。

選手たちは、おそらくあのときの、6年前の「シェヘラザート」を何回も見ているのだろうと思った。

もちろん、落下もなく、かなり精度の高いノーミス演技で21.000。D得点15.700。

「これを超えられるか?」

と言わんばかりの高いハードルを設けることに成功した。

いきなりの東女の素晴らしい演技に会場は沸き、その得点に会場が騒然となった。

そして試技順2番。

日本女子体育大学が登場する。

日女もまた曲を聴いただけで、「負けない!」という思いが伝わってくるようなインパクトの強い曲をもってきた。

そして、日女の真骨頂ともいえる複雑な連携と隊形移動を小気味よく決めていく。

個人での選考会出場資格も獲得していた藤井雅(2年)を団体に投入していたが、演技中盤で藤井が見せたパンシェのローテーションは執念をも感じさせる圧巻のターンだった。

日女らしい同調性を見せる振りも随所で見られ、移動もほとんどなかった。非常によくまとまった演技だったが、演技前半でわずかにボールをこぼしたところがあった。

投げをキャッチする部分での落下ではなく、床でバウンドさせたボールを足ではさむ部分だったので、見た目の印象ではそれほど大きなミスではないのだが、これがおそらく得点には大きく響いたと思われる。19.600、D得点は13.600。D得点で東女に2.100の差をつけられた。

続く日本体育大学は、公式練習のときから、身体難度では他大学にも劣らないものを見せていたのだが、本番では演技序盤で、落下場外という大きなミスが出た。動揺からか、その後もミスが連鎖し、悔いの残る演技だったろう。13.150。それでも、D得点は11.300あったため、実施がよければ十分戦えるだけの準備はできていたと思われる。明日の「フープ&クラブ」に期待したい。

昨年とはメンバーが総入れ替えに近かった中京大学は、完成度をどこまで上げられるかが鍵となっていたが、見事にそこはやり切った演技だった。中京らしいキレのいい動きで見せるのではなく、「ノートルダム・ド・パリ」を使ったいく分、ゆったりとした演技で、落ち着いてひとつひとつの要素をこなしていく構成が功を奏したクレバーな作品だった。惜しむらくは、抑えられたのではないか、と見えるもったいない移動がいくらかあったことと、公式練習では完璧に決まっていた見せ場の連携(両脇を抱えられた選手が空中で後転しながらボールをキャッチする)が本番ではややぎこちなくなってしまったことだろうか。

それでも落下もなく、フェッテターンもよくそろい、音と動きも非常によく合った素晴らしい演技だった。ほぼメンバー一新して、準備期間も短かっただろうことを思えば、大健闘と言える。夏に向けて、中京大学は、楽しみな存在になってきそうだ。D得点12.400の16.850をマークした。

近年力をつけてきている国士舘大学だが、ユニバーシアードは鬼門だ。

2014年全日本選手権で団体総合2位となり、勢いにのって挑んだ2015年の代表選考会では初日のリボンでのミスで自滅し4位。

2017年は、前年の全日本選手権での乱調により選考会出場すら逃していた。

今回はいわば、2015年のリベンジを懸けた一戦だが、国士舘の演技からはそういった野心はまったく感じられなかった。

むしろ、感じられたのは、「日本の他のチームとは違う演技を見せる」という確固たるこだわり、意欲、意思だ。

採点においては、それはどこまで評価されるのかわからない。

ただ、明らかに国士館は「他とは違うもの」を目指していると感じさせる演技を、今回は大きなほころびはなくやって見せた。

序盤でやや目立った移動があったほか、いくつか小さな移動も目についたし、手具の扱いに手間取っているような部分もあった。

実施では細かい減点はあったと思う。

が、曲、振り、表現などで国士舘が見せた独自性は、見ごたえがあった。今回くらいに実施を抑えることができれば(より精度が高くなればなおのこと)「やろうとしていること」が明確に見え、評価も伴っていくだろうと思えた。

東女、日女とは十分競える演技に見えたが、果たして審判の評価は?

D得点14.500で20.200。東女に続く得点が出た。

試技順6番の武庫川女子大学は、昨年の全日本団体女王ながら、メンバーがかなり大きく変わっており、昨年女王という実績がかえってプレッシャーになるのではないかと、案じてた。

なにしろ、武庫川女子は、過去に何回も、「今年はいい」と思わせる演技を公式練習では見せておきながら、本番では大崩れという番狂わせを見せてきた。昨年が初の全日本女王となったが、本来ならばもっと早くにそこに到達してもおかしくない、と思わせるチームでありながら、決定力に欠けていた。

その印象は、全日本女王に一度なったとは言え、拭いきれていなかったのだ。

しかし、一度全日本を制したという自信なのか。メンバーが大きく変わっても、今年の武庫川女子の演技は自信に満ちあふれていた。

曲にも変化があり、それを存分に生かしたメリハリのある演技。

交換や連係でリスク満点の技は切れ目なくつめている一方で、余裕すら感じさせる振りの部分で同調性や曲との一致を見せつける。

すべての面でいい意味で欲張った演技構成を、落下はもちろん、移動さえもほぼないというパーフェクト演技でやってのけた。

この作品をこの精度でやり切れれば、強い! 東女を上回るか? とも思える演技だったが、D得点14.400、20.450。

わずかに国士館を上回り、東女の次につけた。

普通の年ならば、大学生は8月の全日本インカレにピークをもってくる。

ところが、代表選考会は4月に行われるため、波乱が起きやすく、じつは全体としてはミスの多い大会になることも過去にはあった。

しかし、今回は違っていた。

少なくとも、1日目に行われた「ボール×5」は、素晴らしい演技の連続だった。

結果、上位3チームは、1点差内にひしめく形となり、4位の日女にもまだ逆転の可能性は十分に残されている。

2日目は「フープ&クラブ」だが、フープは、昨年まで高校総体の団体の手具だったことを思えば、新入生の多いチームであっても、かなりこなしている可能性が高い。団体では、もっとも見ごたえのある名演技が多く生まれている「フープ&クラブ」の出来次第で、ユニバーシアード出場権の行方は決まる。

史上まれに見る名勝負となりそうな今年の代表選考会。

団体競技は、本日11:05から高崎アリーナにて行われる。

<写真提供:清水綾子>※2018年全日本選手権のもの