【男子新体操】「国体への復帰」へ本格始動! 男子新体操は自らの道を切り拓けるか?

現在のジュニア選手たち(神埼ジュニア新体操クラブ)

2008年の大分国体を最後に「休止扱い」になっていた男子新体操。

「国体への復帰」は現場にとってはひとつの大きな目標であり、折に触れ働きかけは行われてきた。

しかし、数年前まで膠着状態が続いていた。

それが、ここにきて大きく流れが変わってきた。

そして、ついに。

3月9日に日本体操協会公式サイトで発表された「2019年度政策方針」の(男子新体操)の項目には、以下の文言が盛り込まれていたのだ。

「国体復活においては、男子新体操未普及県への普及が最大の課題であり、積極的な普及活動が不可欠であり、引き続き取り組んで参ります。」

これはあくまでも、男子新体操委員会の方針だが、この公に発表される政策方針に載っている以上、日本体操協会が、男子新体操委員会のこの方針を承認したということだ。そこに至ったことがまず大きな一歩なのだ。

2018年全日本ジュニア優勝の井原ジュニア新体操クラブ
2018年全日本ジュニア優勝の井原ジュニア新体操クラブ

さらに、体操競技、新体操、トランポリン、アクロ体操にまたがり、地域ごとに取りまとめている「地域委員会」の方針の中にも、男子新体操の国体復帰に触れている一文がある。

「男子新体操の国体参加については、全国の関係者と協議しながら、トランポリンを絡めた対策を検討していきます。」

つまり、男子新体操委員会だけの意思ではなく、地域委員会のコンセンサスもとれているということだろう。

一時期は、「議論の俎上にのせることも困難」と言われていたことを思えば、おおいなる前進だと言える。

2023年に男子新体操の強豪県・佐賀での国体開催が決まっており、そこでの復活が具体的な目標となりそうだが、前進はしても、まだ復帰が確定したわけではない。

ジュニア育成の盛んな北海道の強豪チーム:北海道新体操クラブ恵庭
ジュニア育成の盛んな北海道の強豪チーム:北海道新体操クラブ恵庭

国体の実施種目を最終的に決定するのは「日本スポーツ協会」であり、提案はできてもそこで却下されれば復帰はなくなる。

そこで、「男子新体操の国体復帰」が実現するためには、今、何が求められているのかを男子新体操委員会副委員長の臼井俊範氏に訊いてみた。

「緊急の課題は、未普及県をなくすことです。少なくとも40都道府県以上に国体出場該当年齢の選手が5人以上いる、という状況を作り出すこと。これをなんとか達成することが、日本スポーツ協会で国体復帰を検討してもらうための宿題になっています。」

現時点で、未普及県となっているのは、栃木県、茨城県、滋賀県、奈良県、和歌山県、山口県、島根県、長崎県、愛媛県、高知県。

しかし、かろうじて現在は実施されているものの「国体該当年齢選手5人」となると安泰とは言えない県もあり、決して楽観はできない状態だ。

まず、ここをなんとかクリアすること。

これが国体復帰への絶対条件になる。

「未普及県のスポーツクラブや女子の新体操クラブ、学校の部活などでも、これから男子新体操を始めようという団体があれば、ぜひご相談ください。見本演技の披露や指導など、男子新体操委員会からもできる限りの協力はするつもりでいます。」と臼井氏は言う。

2011年に発足し、現在は全国トップレベルのジュニアクラブに成長したBLUE TOKYO KIDS
2011年に発足し、現在は全国トップレベルのジュニアクラブに成長したBLUE TOKYO KIDS

そして、もうひとつ。

大きな壁となっているのが、日本スポーツ協会の公認コーチ資格取得者が男子新体操関係者に少ないということだ。

現在の国体では、この公認コーチ資格取得者でなければ、監督を務めることはできない。

しかし、男子新体操は、国体が休止となっていたため、資格取得がなかなか進まなかった。

競技人口の差はあるとはいえ、女子の新体操指導者には500人近く有資格者がいるのに対して、男子は昨年までで26人。

国体復帰が実現した際には、優勝候補にもなりそうな強豪県でも、有資格者ゼロの県もあるという。

このままでは、国体復帰が実現しても、出られないというチームも出てきてしまう。

そもそも、資格取得者がこれだけしかいない、という現状は、「国体復帰」に向けての男子新体操関係者の本気度に疑問をもたれても無理もない事実だ。

この現状を憂いて、3月上旬には、男子新体操関係者の中でも、SNS上で「資格取得を」と声を上げる者も出てきた。

そして、その声に動かされ、申し込みをしたという人も増えてきている。

「公認コーチ」の資格を取得するためには、時間もお金もかかる。

働き盛りの年齢の指導者たちにとっては、受講のハードルは高いかもしれない。

が、今年度受講して、試験に一発で合格したとしても、資格が得られるのは、2021年10月だ。

1年遅れればどうなるか? 2023年佐賀国体での国体復帰を目指すのならば、今年がギリギリのタイミングなのだ。

2019年度 日本スポーツ協会公認新体操競技コーチ3(旧:公認コーチ)養成講習会受講者募集のお知らせ

申し込み締め切りは、3月15日と迫っている。

さまざまな調整をし、協力体制をとりつけるのはこの際、後回しにしてでも、まずは行動を起こすこと。

それが求められている。

ジュニア育成で実績を積み上げてきているREX SPORTS CLUB
ジュニア育成で実績を積み上げてきているREX SPORTS CLUB

男子新体操委員長の山田小太郎氏は、この一連の「国体復帰に向けての動き」についてこう語った。

「2008年に国体が休止になったとき、そのまま男子新体操は衰退すると思っていた人が多かったと思います。

ところが、そこからテレビドラマになったり、リオ五輪でのパフォーマンスや、エンターテインメントの世界など、華やかな舞台に男子新体操が登場する機会が増えてきました。同時に、立ち遅れていたジュニアの育成機関が各地区で立ち上がり、男子新体操に興味をもち、あこがれてくれた子ども達が男子新体操を学べる場が増えてきました。

2008年には1000人弱と言われていた競技人口は、年々増え、2000人近くまで伸びてきました。国体休止という大打撃にも負けず、ここまで男子新体操の普及が進んできたのは、指導者、競技者はじめ関係するみんなの熱意と協力の賜物だと思います。

そういったところを認めてもらえた、からこそやっとここまでこぎつけられた、と考えています。

現時点は、ずっと夢見てきた国体への復帰の、やっと兆しが見えてきたところだと思います。ここから、今まで以上にみんなの力で、2023年を男子新体操の未来のための記念すべき年にしたいと思っています。

2023年までには、国体の少年の部の該当年齢が、現在の高1~3から中3も含まれるようになることも追い風になります。今、それぞれの地区で頑張っているジュニア選手たちが国体出場という夢をもって練習できるようにすることが私たちの務めだと思います。」

今、男子新体操関係者の本気が試されている。

多くの人達の努力があったからこそ、やっと第1歩を踏み出すことのできた「国体復帰への道」だ。

まさに不退転の覚悟をもって、着実に歩みを進めてほしいものだ。

<写真提供:清水綾子>