亀山耕平、佐藤巧(徳洲会体操クラブ)ら、WC種目別への派遣を決める!~2019WC種目別選考試技会

左:佐藤巧 右:亀山耕平(ともに徳洲会体操クラブ)

2019年2月7日。

味の素ナショナルトレーニングセンターで、「2019WC種目別(バクー・ドーハ)選考試技会」が行われ、あらかじめ協会が定めていた「派遣基準」を突破した5選手が、2020東京五輪に種目別の選手として出場する望みをつないだ。

今回の試技会は、一定の基準を満たした選手でなければ出場できないうえ、この試技会に出場することをもって「2020東京五輪の団体選手としての選考は辞退」という扱いになる。つまり、内村航平や白井健三ら、個人総合での上位を争っている選手で、東京五輪へ団体選手としての出場を目指している選手たちはエントリーしていない。

その結果、今回選出された5選手はいずれも社会人選手。

ベテランと呼ばれるキャリアの選手たちだった。

日本は「6種目できてこそ体操」という風潮が強いため、これらの選手も学生時代、社会人選手になった当初は、6種目をこなしていたが、年齢が上がるにつれ、自らの体力や能力と相談しながら、得意種目にしぼっての大会出場が増えてきていた選手たちだ。

年齢的には、2016年のリオ五輪をターゲットにしていた選手が多く、リオ五輪落選の時点で引退を口にしたり、頭をよぎったという者も少なからずいる。が、次の五輪が東京開催だったこともあり、最後まで挑戦し続けることを選択した選手たちということができるだろう。

※参考記事:2018年1月の産経ニュースの記事

2016年の時点で、一度は競技人生の終わりを意識しただろう選手たちの2017年から今回の代表選手までの軌跡を大会成績で追ってみた。

●佐藤 巧(徳洲会体操クラブ)・・・ゆかで代表選出

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2017年4月の全日本体操選手権と同時に行われた「種目別トライアル」での佐藤のゆかは14.250、続くNHK杯では13.950。

当時は、跳馬でも種目別を狙える位置にいた佐藤。日本のゆかには白井健三という絶対王者もいるため、まだ「ゆかのスペシャリスト」を狙う決意はしかねていた時期と思われる。

しかし、6月の種目別選手権では、14.800で4位、1月の全日本シニアで14.900、11月の団体選手権で14.750と高値安定の得点が続いた。

2018年に入ってからは、全日本選手権(4月)で14.400、種目別選手権(6月)ではミスが出て12.500に沈むが、9月の全日本シニアでは14.350、11月の団体選手権14.566と安定して上位に入っている。2017年と18年を比べると得点が下がっているように感じられるが、これはゆか全体の採点が厳しくなったためで、世界選手権の種目別ゆかの優勝スコアを見ても、2017年の白井健三が15.633、2018年のDALALOYAN(ロシア)は14.900と下がっているため、佐藤の競技力、得点力は上がっていると言えるだろう。

ましてや、今回の試技会での得点は、14.900。D得点6.4は、昨年の世界選手権時の白井の6.8には及ばないが、優勝したDALALOYANの6.2は上回っている。どこまでE得点を伸ばすことができるかに勝負がかかっている。

●亀山耕平(徳洲会体操クラブ)・・・あん馬で代表選出

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リオ後の2017年、いきなりトップスピードで走り出したのが亀山だ。4月の「種目別トライアル」で15.250、NHK杯でも14.900と2013年世界王者の貫禄を見せつけた。が、6月の種目別選手権で13.600に終わり決勝進出を逃すと、全日本シニア、全日本団体と出場がなく、もしや引退? とも思われた。

が、2018年4月の全日本選手権では14.933と再び浮上。しかし、種目別選手権、全日本シニアではミスが出て13点台に沈む。あん馬という微妙な狂いが大きなミス、減点につながる種目の特性を割り引いても、亀山の課題は「安定感」だ。ノーミスで通れば、唯一無二とも言える雄大な美しさを見せる亀山のあん馬は、今や「美しさ」でロシア、中国に後れをとったと言われている日本にとっては大きな武器であり規範となる。本番で力を発揮するためのコントロール。問題はそこだけ、なのだ。今回の試技会での得点は15.033と、昨年の世界選手権あん馬覇者・Xiao(中国)の15.166に迫る得点であり、D得点6.8はXiaoのD得点6.6を上回っている。

亀山本来の持ち味である「極限まで美しいあん馬」を通し切り、そこにE得点がついてくれば、もう一度、世界で勝負できる潜在能力は十分にある。

●今林開人(セントラルスポーツ)・・・あん馬で代表選出

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順天堂大学では、当時、五輪代表や世界選手権代表に名前を連ねていた加藤凌平や野々村笙吾と同学年。大学1年時に彼らとともに全日本団体で優勝したときに、「(順大には)僕もいます!」とアピールして記者会見で笑いを誘った明るい性格の選手だ。あん馬には定評があり、全日本種目別で優勝したこともあるが、このところは、セントラルスポーツの団体選手としての活躍が目立っていた。

それでも、2017年10月の全日本シニアでは14.200、団体選手権では14.650とあん馬巧者の面目躍如の演技を見せていたが、2018年はどの大会でも14点台にのせることすらできなかった。しかし、セントラルスポーツは、11月の団体選手権で初優勝を果たしており、今林はそこでも大きく貢献していたことを考えると、2018年は個人総合での弱点強化を優先していたのかもしれない。

今回の試技会では、14.966という亀山に迫るハイスコアをマーク。D得点は6.6だが、E得点で亀山を上回ってみせた。

セントラルスポーツには、今春、谷川航、萱和磨、千葉健太、前野風哉ら強力ルーキーが入社することが先日発表された。団体選手としての重責からやや解放され、本来、得意だったあん馬に勝負を懸けてきたとも思える、今林の今回の大飛躍。ワールドカップまでの時間、そしてその大会の中で、どう化けていくか、期待したい。

●鈴木大介(セントラルスポーツ)・・・鉄棒で代表選出

鈴木大介(順天堂大時代)
鈴木大介(順天堂大時代)

順天堂大学では、今林の1学年下だった鈴木は、上には加藤、野々村、下に谷川、萱など有力選手たちに挟まれ、あまり目立つことのない選手だったが、最終学年だった2016年の全日本インカレでは個人総合12位とまずまずの成績を残している。

鉄棒で頭角を現してきたのが、セントラルスポーツ1年目の2017年4月の全日本選手権での14.050、10月の全日本シニアでも14.050。しかし、2018年になると、今林のあん馬同様、どの大会でも14点台にのせることができなかった。が、どの種目も大きくへこむことがなく、6種目合計を80点台にのせ、チームには貢献してきた。

5月には、大学時代に同級生だった宮地秀亨のところに合宿に行き、H難度の「ブレットシュナイダー」を習得。今回の試技会ではその宮地と同じD得点6.3にまで上げ、14.633で代表の座を獲得した。この1年間、団体選手としての務めを果たしながらも、得意の鉄棒に磨きをかけ続けてきた鈴木の努力が実った代表選出と言えるだろう。

※2018年5月の鈴木選手のつぶやき

●宮地秀亨(茗渓クラブ)・・・鉄棒で代表選出

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昨シーズンは国際大会にも数多く出場し、I難度「ミヤチ(伸身ブレットシュナイダー)」の宮地として世界でも知られる存在になってきている宮地は、今回の選考会で出場を決めたWCバクー大会、ドーハ大会のほかにもすでに昨年11月のコトブス国際にも出場、2月のメルボルン大会にも出場が決まっている。ワールドカップへの出場機会が多いため、世界ランキング上位に与えられる五輪種目別枠獲得にはもっとも有利な位置にある選手だと言える。

前述の鈴木とは同学年だった宮地の筑波大学時代は、大学3年時は、全日本インカレ個人総合26位と振るわなかったが、4年時には個人総合5位まで順位を上げている力のある選手だ。しかし、大学生のころは、鉄棒に突出した選手というわけではなかった。

ところが、大学院に進学してからの2017年には、伸身ブレットシュナイダーを武器に、一気に鉄棒のスペシャリストとして脚光を浴びることになる。4月の種目別トライアルで14.700、6月の全日本種目別で15.250、全日本シニアでは15.150と快進撃。

2018年はミスが出て13点台に沈んだ大会もあったが、全日本種目別では14.900で優勝。

鉄棒は、2018年世界選手権覇者・Zonderland(オランダ)が15.100をマークしているが、このときのD得点が6.8だった。近年、日本はかつてのお家芸・鉄棒で苦戦が続いている。宮地、鈴木をもってしても、ZonderlandのD得点とはまだ差があるが、宮地はさらなる新技も開発中とのこと。鈴木、宮地とも、2019シーズンは社会人3年目となるが、まだまだのびしろ十分だ。

植松鉱治(元コナミスポーツ)、齊藤優佑(徳洲会体操クラブ)と引き継がれてきた日本の「ハイバーマスター」の後継者に、齊藤から指名されたという宮地。2020年東京に向けて、2019年さらなる飛躍を期待したい。

※2020東京五輪出場基準

<写真提供:末永裕樹> ※今林、宮地は筆者撮影