【新体操】「TOKYO2020後」を担うエンジェルチルドレン~2019アジアジュニア代表候補たち

左から竹内希、喜田未来乃、白川愛侑子(いずれもエンジェルRGカガワ日中所属)

2019年になり、遠い未来のようだった「東京五輪」が、もう目の前に迫っている実感がわいてきた。

新体操に関しては、現時点では、個人、団体とも誰が「東京五輪」のとき日本代表となるのか? が最大関心事かもしれないが、新体操は2020年で終わるわけではない。

そこで、2019年最初の記事は、「2020年後」を考察してみたい。

その指針となるのは、昨年11月16~18日に行われた「全日本ジュニア新体操選手権」だ。

11歳~15歳(2018年12月31日時点)の選手たちのよって競われるこの大会の出場者たちには、2019年度もジュニアの選手が多く含まれていた。2020年度にシニアに上がれるとしても、いきなり日本代表になることは、現実的にはかなり難しいと思われる。つまり、2003年生まれ(現在の中学3年生の早生まれを除く)よりも年齢が低い選手たちは、「2020年後」に照準を合わせていくことになるだろう。

そして、どの競技にも言えることだと思うが、「五輪が終わったら廃れた残念なスポーツ」にならないためには、この次世代を着実に育てていくことが必須だと思う。

新体操もしかり、だ。

その視点で、昨年の全日本ジュニアの結果を見て見ると、「エンジェルチルドレン」の大躍進が目に留まる。

「エンジェル」とは、香川県の新体操クラブ「エンジェルRGカガワ日中」のことだ。

現在、日本の特別強化選手として東京五輪代表の座を争う一角にいる喜田純鈴選手が所属していることで知られるクラブだが、じつは、喜田選手以前にも数多くの有力選手を輩出している強豪クラブだ。

2018全日本ジュニア個人総合3位/竹内  希(エンジェルRGカガワ日中)
2018全日本ジュニア個人総合3位/竹内 希(エンジェルRGカガワ日中)

昨年12月に21回目の発表会を迎えた。

すでにかなり歴史を刻んできたクラブだが、この「エンジェルRGカガワ日中」が全国に名を轟かせることになったのは、小学生の全国大会「全日本クラブチャイルド選手権」からだった。

2003年の第5回全日本クラブチャイルド選手権(当時は徒手演技による大会)で、表彰台こそは逃したものの、大人顔負けの能力と表現力を見せた長谷川愛実選手の演技は観客と審判の度肝を抜いた。

そして、その3年後、2006年の第8回大会で、阪梨友毬選手が、エンジェルRGカガワ日中の選手として初めてクラブチャイルド優勝者となった。

そこからは毎年のように、このクラブの選手たちがクラブチャイルドの表彰台にのるようになっていく。

彼女たちの演技はあまりにも完成度が高く、「小学生ならこの程度」という基準をはるかに超えており、その存在が周囲のクラブ、選手たちのレベルも引き上げていったように思う。現在の日本の新体操の底上げに、エンジェルRGカガワ日中は、たしかに一役かっていた、と言えるだろう。

そして、そのエンジェルRGカガワ日中の最高傑作と言える選手が喜田純鈴選手だ。2010、2011年とクラブチャイルド3・4年の部を連覇、2012年も5・6年の部で優勝。2013年で4連覇を期待されていたが、2013年からクラブチャイルドが手具ありにルールが変わり、すぐに「ジュニア大会への対応」へ切り替え、出場を回避。

2013年11月には、全日本ジュニアチャンピオンとして「全日本選手権」に出場。中学1年生ながら、並み居る高校生、大学生の中、総合2位という大躍進を見せたのだ。

しかし、一方で、徒手演技のころは「エンジェルの独壇場」の様相だったクラブチャイルドでは、2013~2015とメダリストが出ていない。出場していない年もあるが、2014年は5・6年の部の6位に林美梨香、7位に植松智子がいるが、表彰台は逃している。

徒手能力、表現力では群を抜く存在だったエンジェルの選手たちだが、「小学生から手具あり」には対応しきれていないのか、とも思われる時期が続いた。

2018全日本ジュニア個人総合13位/白川愛侑子(エンジェルRGカガワ日中)
2018全日本ジュニア個人総合13位/白川愛侑子(エンジェルRGカガワ日中)

ところが。

まさに満を持して、と言えるだろう。

2016年のクラブチャイルドでは、3・4年の部で白川愛侑子が優勝、喜田未来乃が2位。

2017年は、5・6年の部で喜田未来乃が3位、2018年は、喜田未来乃が優勝(白川も4位)。

そして、2018年度に入ると、喜田が全中でいきなり優勝。

さらに、全日本ジュニア選手権では、中学2年生の竹内希も3位に入る大健闘、喜田が5位、白川が13位に入った。

恐るべきことに、昨年の全日本ジュニアでは、エンジェルRGカガワ日中は、団体競技でも初優勝を成し遂げており、個人で活躍した3人もすべて団体選手を兼任していたのだ。

2018全日本ジュニア個人総合5位・全中優勝/喜田未来乃(エンジェルRGカガワ日中)
2018全日本ジュニア個人総合5位・全中優勝/喜田未来乃(エンジェルRGカガワ日中)

全国に名前が知られるようになった当初のエンジェルRGカガワ日中は、その身体能力の高さ、大人顔負けの表現力で衝撃を与えたが、一方で、手具操作は巧みとは言えない、また、「個人が強いクラブ」と言う印象が強く、団体ではなかなか評価がついてこない、などの課題を抱えていた。しかし、2003年のクラブチャイルドでの衝撃デビューから15年。

手具を持っても巧い、個人も団体も強い。

エンジェルRGカガワ日中は、全方位的に強いクラブになった。

昨年の全日本ジュニアの上位15人には、2019年のアジアジュニア新体操選手権の代表決定戦への出場権が与えられた。

エンジェルRGカガワ日中からは、竹内、喜田、白川と3人が揃って決定戦に残っている。

15人の候補選手に複数の選手が入っているクラブは他にはない。

まさにエンジェルRGカガワ日中が、ジュニアを席巻しているという状況だ。

2018全日本ジュニア団体優勝/エンジェルRGカガワ日中
2018全日本ジュニア団体優勝/エンジェルRGカガワ日中

2020年に向かうここからの1年間。

喜田純鈴が、日本代表になれるのかどうか。

もちろん、それもエンジェルRGカガワ日中の指導陣や関係者にとっては最大の関心事であろう。

が、決してそこだけに気持ちが向かいすぎないでいられるだけの選手たちが下に育っている。

喜田純鈴に続き、世界への扉を開けそうな選手たちがいるのだから。

2020年後の日本の新体操を、牽引していくのはやはりこのクラブなのではないか。

この15年間、苦手なことも弱点も、ひとつひとつ粘り強く克服してきたエンジェルRGカガワ日中の歩みがそう思わせてくれる。

<写真提供:清水綾子>