【新体操】技偏重時代に輝くスーパー女子高生「柴山瑠莉子」という才能

表情豊かに演技で全日本選手権個人総合2位となった柴山瑠莉子(イオン)

もう高校3年生なのか!

やや小柄なこと、雰囲気のかわいらしさから、まだ当分は高校生かと思っていた柴山瑠莉子は、すでに高校生として3回目の全日本新体操選手権を終え、なんと3年連続の2位という素晴らしい、そしてちょっと悔しい結果を手にしていた。

全日本選手権の女子個人総合は、今年、喜田純鈴(エンジェルRGカガワ日中)が優勝したことにより、これで3年間連覇なし、となった。

昨年は、立澤孝菜(イオン/国士舘大学)が、一昨年は河崎羽珠愛(イオン/早稲田大学)が優勝している。

つまり、それだけ上位層の実力も伯仲してきているということだ。

そんな中で、柴山瑠莉子は高校1年から3年という心身共に変化が大きく、成績も上下動しやすいこの時期に毎年2位という位置をキープしている。それは純粋に「すごいこと」だと言える。

しかし、競技者は2位になれば「次は頂点を」と目指すものであり、柴山とて同じだろう。

そういう意味では、この2年間、柴山はずっと「報われなかった」という思いを抱えてきたのだろうし、これからの1年間もその思いと向き合っていくのかもしれない。

そういう選手には、えてして悲壮感が滲んでくる。

見ているほうも、「こんなに頑張っているのに勝てないのはかわいそう」などというセンチメンタルな気持ちになりがちだ。

ところが、柴山にはそういう悲壮感がない。

それはもちろん、彼女の若さによるものが大きいとは思うが、さらにそのパーソナリティーゆえだろう。

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実際には、柴山の演技にはミスが出ることもある。

だからこそ、頂点にはいつもあと一歩届かない、ともいえる。

が、彼女の演技は、「ミスしないように、ミスしないように。がんばれ、がんばれ!」という気持ちにはならずに見ていられるのだ。

演技内容は決して平易ではない。

今の時代、今のルールに即して、いやそれ以上のこだわりをもって、柴山の演技はいつもリスクに富んでいるうえに、それを「ノーミスで通す」ことを第一優先していないように見える。音楽との一致、感情表現、音楽の表現へのこだわりは人一倍強く、ときにはそれゆえにミスが出てしまった? と思うことすらある。柴山瑠莉子の演技はそんな演技だ。

でも、だからこそ。

彼女の演技はドキドキハラハラ、手に汗握って見るべきではないと思うのだ。

きっと本人もそれを望んでいない。

彼女の描き出す世界に、観客もどっぷりと惹き込まれて、うっとりしたり、じーんとしたり、感情を動かしてほしいのではないかと思う。そして、演技が終わって彼女がフロアをおりたときに、観客も我にかえり、「あれ、ミスあったっけ?」と思うような、そんな演技をきっと彼女は目指している。

小学6年生のときに、全日本クラブチャイルド選手権で優勝。

現在、特別強化選手の喜田純鈴とは同級生で、小学5年生のときは同じクラブチャイルド選手権で喜田が優勝している。(6年のときは喜田は出場していない)

小学生のころから、同世代のトップに君臨する選手ではあった柴山だが、喜田が年齢不相応なほどの圧倒的な技術力と表現力を武器にしていたのに比べると、柴山はごく親しみやすい、年齢相応か少し子どもっぽいくらいの印象の選手だった。

しかし、小学生のころから、その音楽への入り込み方は群を抜いていた。動きの面でも、表現でも、柴山瑠莉子は、極めて自然にすっと曲の世界に入り込める選手だったのだ。

それは柴山瑠子という選手の最大の魅力であると同時に、勝ち負けだけを見ればときに弱点にもなった。

スコーンと大きなミスをして、目指した成績には届かない、そんなことが少なからずあったが、それはたいてい彼女が作品の世界観を大事にし、曲に入り込みすぎた結果、出てしまった綻びのように見えた。

難しい手具操作も取り入れているだけに、「とりあえず落とさない」というこなし方になってしまいがちなところでも、彼女は貪欲に曲に合わせようとする。頑固なくらいに。そのこだわりがミスにつながっていることもあるように思う。

リオ五輪以降、新体操では、どんどん技の比重が上がってきている。

とくにここ2年は、「とにかく手具を手に保持している時間が短いほうがいい」といわんばかりの評価のされ方になってきている。

そんな流れの中では、手具操作が器用で、90秒の演技時間にたくさんの技を詰め込める選手が有利になり、音楽に合った動きや表現力がいくらあっても、勝負には勝てないということが起きてくる。

今の新体操を「曲芸みたい」と批判するむきもあり、東京五輪後にはより芸術性を重視したルールへと改正されるという噂もある。

が、団体競技でも見られたように、今のルールならではの明快さがあることも事実ではある。

となれば、「難しい技をたくさんやりながら、それでも表現が感じられる演技」を目指す。

今、現役の選手たちはそこを目指すしかない。

そして、それをかなり体現しているのが、柴山瑠莉子だといえると思う。

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難しい演技なのだ。技もたくさん入っている。

が、見ているときにはそう感じさせない。まるで音楽を聴いているような、舞踏を見ているような。

そして、彼女自身を見ているような気持ちにさせてくれる。

まだ、彼女が無邪気なジュニア選手だったときに、立ち話で「あこがれの選手」を訊いたことがあった。

そのとき、彼女は「リザディノワ」と即答したことを覚えている。

当時、世界のトップ選手ではあったウクライナの選手だが、チャンピオンではなかったし、ロシアの選手たちに比べると、やや地味な印象の選手だったので、少し意外だったが、深みのある表現力では卓越したものをもった選手だった。

そのとき、柴山は、「リザディノワが動きだすと、それだけでもう涙が出そうになる」と言った。

その感性の豊かさ。

あれから4年たった今でも、彼女はそれを持ち続けているように見える。

技偏重の時代に乗り遅れることなく、表現することを放棄しない、あきらめない。

そして、勝負にもこだわる。

今でもかわいらしい印象の選手でありながら、じつに男前。じつにアスリート。

柴山瑠莉子は、無理難題山積みの新体操という競技の難しさを膨大な練習量でクリアしようとしている。

もっともっとたくさん練習すれば、自分が理想とする新体操はきっとできる!と信じているのだ。

大会後、今大会を振り返って、柴山に話をきいてみた。

「個人総合は試合に対する気持ちだったり最後までやり切る、という部分では8月のアジア大会よりも良くなったと思います。

いままで出場した全日本選手権の中では一番いい試合の持って行き方が出来たかな、一皮むけたのでは、と思えました。

2日目のクラブの始まるときが一番緊張しました。

でもそんな中で落下もなく出来たのは自分の成長でもあると思うし、嬉しさの爆発した演技になりました。

その流れからのリボンも、今まで苦戦してきて、アジア大会では自滅してしまった種目なので緊張感はありました。

でもやることは変わらないし、クラブでいい流れが出来、“私はできる!!”と自分に言い聞かせて自信を持ってやり切れたので嬉しかったです。

3日目の種目別決勝では、前半でミスが出てしまっていて、やはりミスがでればメダルには届かない。

最後まで集中を切らさないという部分ではまだまだ足りないと思います。

今後は、もっと技を増やさないと。

今のままでは、世界で戦うにはまだまだ少ないです。

小さな投げでも高さで加点が変わってきたりもするのでそういう0.1の差を詰めていくことが必要です。

来年はいまのところ演技は変える予定はないのでともかく技を詰めて内容を上げていくつもりです。」

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自身の演技についてどこまでも貪欲で前向きな柴山だが、来年の春には高校を卒業する。

今後について、を訊いてみると、

「来年は、また代表決定戦が4月にあるので、出られるならばそこできちんと枠を獲りたいです。

 また、大学生になるので、インカレなどまだ経験したことのない試合もあるので、経験値をそういう試合ひとつひとつで上げていきたいです。

 インカレはチームメイトの河崎さんが出ていたので行ったことがありますが、高校の大会とまた違ってたくさんの仲間がいる雰囲気が楽しそうでいいなと思いました。

 来年の全日本選手権は狙っていきたいです。

 やっと試合のやり方というか、持って行き方というかわかってきて成果として出てきているのでまた練習して、試合で失敗したら反省し、いいところを増やして、そういう繰り返しをしつつ成長していくだけだな、と思っています。」

と環境の変化をも前向きにとらえ、楽しみにしている様子も伝わってきた。

「3年連続2位」という、悔しさはもちろんあるはずだ。

だが、それもすべて彼女にとってはエネルギーになっている。

そう感じた。

よかったことも、悔しかったことも、すべてが彼女の新体操の糧にしていく。

そういう生き方をできることこそが、この選手のもつ最大の才能なのだ。

インタビューの傍らで、関係者が「体育館の主だからね~」と言っているのが、耳に入り、思わず、「体育館の主って、柴山さんのこと?」と本人に訊いてみた。

「そうですね、イオンの練習場、体育館に朝から晩までいます。

ずっと、練習していることが多いです。

練習が、好き。

だから【体育館の主】と言われたりしますが、違うんです。

本当の主は、岡先生です。

ずっと一緒に、いてくれます。」

※参考記事「新体操にイオン帝国を築き上げた岡久留実という生き方<前>」

※参考記事「新体操にイオン帝国を築き上げた岡久留実という生き方<後>」

柴山瑠莉子は、努力する才能と守護神をもっていた。

来年に向けて、2020年に向けて、いやきっとその後でもきっと

彼女の演技は、新体操の希望になる。

※12月8日(土)「女子個人総合」で柴山瑠莉子選手の演技を見ることができるスカイAの番組情報

<写真提供&インタビュー:清水綾子>