【新体操】大混戦の女子団体総合を武庫川女子大学が制す!~第71回全日本新体操選手権

団体総合TOP3(真ん中が武庫川女子大学)

1日目の「フープ×5」で高校生チームが大躍進。有力視されていた大学生チームに大きなミスが出るなど、波乱の展開となった第71回全日本新体操選手権女子団体総合2日目の「ボール&ロープ」は、なんとも熾烈なサバイバルゲームとなった。

試技順1番は、暫定2位の昭和学院高校。

この種目の出来によっては、総合優勝もあり得るという状況で挑んだ演技は、細かいミスは散見され、惜しい落下も3回ほど見受けられたが、演技全体としてはよくまとまっており、高校生にとっては練習時間が少なかったであろう種目にしてはまずまずの出来だったと言える。演技終了後にフロアサイドで見守っていた監督たちも拍手喝采だったが、現在のルールではわずかなポロリでも落下の減点は大きい。昭和学院の得点は、15.300で、2種目合計35.400。この後に登場するチームにとっては、まずはここがターゲット得点となる。

2番の伊那西高校にも細かいミスはあった。が、落下は1回に押さえ、派手さはないものの連係技を着実に積み重ねていく巧みな演技構成で、16.850をマーク。2種目合計36.300とこの時点で昭和学院を上回った。

しかし、4番目に登場したすみれRG/金蘭会高校の演技が、再び観客の度肝を抜く。高校総体に向けて極限まで練習を積んできただろう「フープ×5」と比べると、練習時間の短さを考慮して高校生の「ボール&ロープ」は、やや難易度を下げた構成になりがちだ。そして、それが総合での順位を上げる戦略としては正しいと言える。難しい構成でミスが出て自滅すれば、「フープ×5」でのせっかくの貯金を吐き出してしまうことになるからだ。

全日本選手権の団体総合で、高校生が勝つためには、高校総体種目で大学生を上回る得点をマークし、2種目目を無難にまとめる、それがセオリーなのだ。

ところが。

金蘭会の演技は、そのセオリーからははずれていた。「え、もしかして、この種目のほうに力を注いできたの?」と思うほどに、前日に見せたフープ×5に勝るとも劣らない攻めの演技で金蘭会は勝負してきた。いや、むしろ、こちらのほうがより金蘭会らしいとも感じる、スピード感のある技の連続、リスキーな投げ受け、そして、それが次々に決まっていく。演技中盤で落下は1回あったが、その減点があってもかなり得点は残るはず、と確信できる演技をやり切ってみせたのだ。得点は、17.800。2種目合計で37.550と伊那西を突き放し、暫定首位に立った。これはもしかすると高校生団体が勝ち切ってしまうのではないか。そう思わせるだけの凄みのある金蘭会の演技だった。

その直後に登場した国士舘大学は、初日4位。フープ×5の得点は19.600と金蘭会と0.150差につけていた。全日本インカレを戦ってきた種目でもあり、国士舘らしいアクのある演技が印象的な今年の作品ならば、金蘭会を上回ることも十分に可能かと思われた。

緊張からか少しずつタイミングのずれのようなものもありながら、なんとか大きなミスにはならず演技終盤までもちこたえ、国士舘大学が優勝に向けて近づいてきているようにも見えた、ラスト10秒。悪夢のようにミスが連鎖してしまう。連係が乱れ、演技そのものががたがたと崩れてしまい、茫然自失のまま演技終了。ほんの数秒前まで「総合優勝」も見えていたのに、残酷な結末となってしまった。国士舘の得点は16.150。前日のフープ×5で、日本女子体育大学や東京女子体育大学がつかまった魔物にこの日は国士舘がつかまってしまった。2種目合計で35.750。どちらの種目もほぼまとめ上げた伊那西高校に逆転を許してしまう。

国士舘が失速したことにより、ますます高校生優勝の気配濃厚となったところで、初日暫定首位の常葉大学附属常葉高校が登場する。フープ×5の得点は、金蘭会を0.550上回る常葉が、金蘭会を逆転するためには、17.250が必要となる。団体演技の正確性には定評のある常葉にとっては不可能ではない点数に思えるが、なにしろ練習時間は多くないだろう「ボール&ロープ」だ。

しかし、この局面で常葉は、いつもと変わらぬ精度の高い演技を見せる。落下など大きなミスもなく、美しく流れるような演技で、投げ受けの不安定さもほぼ感じられない。得点は、17.550とこの種目では2番目の得点ながら、総合得点では37.800と金蘭会を上回る。内訳を見てみると、金蘭会がD12.100を上げながら、Eで5.700とやや低くなっているのに対して、常葉は、D10.700、E6.800と、かなり高いE得点を獲得している。団体総合のセオリーとおりの戦い方とも言えるが、これが常葉の強さなのだ。

フープ×5では、19.700という素晴らしい高得点をあげた名古屋女子大学高校は、落下場外が2回あり、11.600と沈んでしまう。しかし、従来は、これが高校生としては普通だった。全日本選手権で2種目の団体作品をまとめるなんてことは、高校生にとっては容易なことではないのだ。ところが、それをやってのけるチームが増えてきている。そのことを称えるべきなのだ。

フープ×5で思わぬ苦杯をなめた日本女子体育大学は、「ボール&ロープ」では格の違いを見せつけた。アジア選手権でも優勝の決め手となったこの種目をきっちりと決め、19.450。この種目での暫定首位となるが、総合得点は36.250。伊那西高校の36.300にわずかに及ばず。

続くアンジュ/城南静岡高校も、落下が1回はあったものの、ほかはとくに大きな乱れもなく堂々たる演技を見せ、常葉と同じ17.550をマークする。地元静岡での高校総体に向けて一丸となって強化してきたのだろう静岡県勢の底力を見せつけた。

そして、登場したのが、フープ×5で19.450と大学生の中では国士館に次ぐ高得点をマークしている武庫川女子大学。首位常葉をとらえるためには、18.350が必要となる。ちなみに全日本インカレでの武庫川女子の「ボール&ロープ」の得点は、14.050。このときはミスがあったとはいえ、決して楽に出せる得点ではないように思えた。

が、この日の武庫川女子は、違っていた。ここ数年、途中までは素晴らしい演技をしていても、後半崩れてしまったりする姿も何回か見てきた。公式練習では素晴らしかったのに、本番では別人? ということもあった。そんな悔しい思いを重ねに重ねてきていただろう武庫川女子大学が、この日、そのすべてを晴らすような会心の1本をここで披露したのだ。ミスもなかった。そして、なによりも選手たちがいきいきと躍動していた。優勝がかかっている、なんてきっとあまり意識していなかったのではないか。

なにしろ、昨年は全日本選手権出場すら逃してしまったチームなのだ。優勝よりも、この舞台に戻ってこれた喜びや感謝の気持ち、そのほうが勝っていたのではないか。そんな演技で、武庫川女子は、得点18.550をもぎとった。

総合得点は、38.000と暫定首位の常葉を上回り、初優勝へ大きく近づいた。

武庫川女子大学の演技
武庫川女子大学の演技

東京女子体育大学も、この種目では、大きなミスなく、エネルギーあふれる演技を見せ、会場の大声援に応えた。

得点18.400は、この種目だけなら3位にあたる点数だ。しかし、1日目のビハインドが大きすぎ、総合得点は33.650。巻き返すことはできなかった。

女子最後の演技者・日本体育大学も、大きな破綻はなく、おしゃれな印象の演技をまとめたが、16.300。

この瞬間、武庫川女子大学の初優勝と、常葉大学附属常葉高校が2位、すみれRG/金蘭会高校が3位と高校生の2チームが団体総合の表彰台のりが決まった。

初優勝を成し遂げ、表彰台で観客に応える武庫川女子大学
初優勝を成し遂げ、表彰台で観客に応える武庫川女子大学

大会プログラムの巻末に過去の大会記録が平成10年から載っているが、佐賀女子高校(平成10年、平成15年、平成16年、平成19年)、藤村女子高校(平成11年、平成12年)、別府鶴見丘高校(平成17年)、エンジェルRGカガワ日中丸亀(平成28年)らの高校生が、この20年間で3位以内に入っている。しかし、3位以内に2校入った年は、少なくともこの20年間ではない。

今大会は、個人総合でも、優勝した喜田純鈴、2位の柴山瑠莉子は高校生。入賞者にも飯田由香、山田愛乃ら高校生が多く、現在の高校生の充実ぶりが大会全体を通して感じられた。

が、団体総合においてはそれが顕著であり、最終日に行われる種目別決勝にもおおいに注目したいと思う。

<写真提供:清水綾子>