【男子新体操】だれが「KANZAKI」を止められるのか?~第71回全日本新体操選手権男子団体

高校総体2連覇中の神埼清明高校。まさに超高校級の強さだ。

とにかく強い。

高校総体2連覇中の神埼清明高校は、この2年間、危なげなく高校総体を勝ってきた。もちろん、間で高校選抜にも勝っている。

男子新体操で、勝負が一番面白いのは高校生の団体だと言われている。

個性豊かで、実力も伯仲したチームが全国に点在しているため、有力校といえど連覇は難しい。

また、「優勝確実」と言われていたチームでもひとつのミスで、その座から転げ落ちるからだ。

しかし、この2年間、そういう意味では高校生の団体はやや面白みには欠けてきている。

「強くて優勝しそうな神埼清明が普通に優勝してしまう」

これが2年続いたからだ。

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今の強い神埼を引っ張ってきたのは、現在の3年生だ。

ジュニア時代から強いといわれ、九州では敵なし。しかし、全日本ジュニア優勝は経験できないまま高校生になり、そこでブレイクした彼ら。今回の全日本選手権に出場するチームの4名が3年生で、今大会が「神埼清明」として出場する最後の試合となる。

高校の3年間、いや、高校から新体操を始めた八並以外は、小学校4年生からというから8年間、新体操を続けてきた。

そして、その年月の多くで「日本一」を意識してきたはずだ。

その日々の締めくくりとして、今大会にどんな思いで挑むのか訊いてみた。

キャプテンを務めてきた石橋侑也
キャプテンを務めてきた石橋侑也

石橋侑也「自分は、高校までで新体操は終わりにするので、今回が最後の試合。悔いなくノーミスで終わりたいです。8年間、とくに高校生になってからは、絶対に日本一になると思ってやってきた。その時間は、とてもやりがいのある時間だったと思います。練習はつらいときもあったと思うけれど、本当にやりがいがあって楽しかった。楽しい思いをしてきたから、もっと続ければよかったと思うときがこの先あるかもしれませんが、ジュニアがたくさんいるので指導などにもかかわっていけたらと考えています。」

野口勇人「今年、インハイ連覇は達成できたので、今度の全日本では、大学生に勝って表彰台にのるのが目標です。高校1年のときは右肘を手術して1年間試合には出られなかった。でも、そこで手術をして治しておかないとこの先、新体操を続けていけないと思ったので、我慢の時間を過ごしました。自分はメンバーの中では体が硬いほうで、気持ちが弱いところもあって、ミスしてみんなに迷惑をかけたこともありましたが、中山監督の言葉に支えられて、結果も出すことができました。新体操ははじめはできないことでもやっているうちにできるようになっていくところが楽しい。それで結果もついてきた瞬間はたまらないです。」

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松本健太「全日本選手権では、大学生は高校生には負けられないというプレッシャーがあるはずなので、自分たちは気持ちを楽にもって、いつもとおり、自分たちの演技をするだけだと思います。今はインハイのとき以上に気持ちも上がってきているので、やれると思います。神埼で過ごしたこの8年間、本当に、自分だけの力ではできないことをやらせてもらっている、と感じてきました。だから、周囲に対して恩返しするには日本一になるのが一番だと思っていました。日本一を目指してきたこの8年間は、本当に楽しかったです。ジュニアのころはただ自分がくるくる回っているだけで楽しかったし、高校生になるとみんなでいい演技ができたときの楽しさもありました。神埼での最後の演技になる全日本でミスしたら泣いてしまう、もしも勝てたら心から喜べる、そんな大会になると思います。」

八並剛「以前は体操競技をやっていましたが、神埼の練習の見学に来たときにとても雰囲気がよくて、体操競技では考えられないくらいに細かいところまで揃えていることなど、すごいと思って、感動しました。入部を決めたときは、同級生がこんなに強い選手たちだとは知らなくて、いつかはみんなに追いつきたいと必死でした。初めてメンバーに入った1年生の選抜のときはプレッシャーで大変でしたが、どこをどうすれば失敗はしないと中山監督から教えてもらった言葉が支えになりました。高校から新体操を始めても日本一になれることもある、というのは同じように高校から始めた先輩たちにすごい人たち(今大会、青森大学のメンバーに入っている江上駿祐からは多くのことを学んだそうだ)いたから信じることができました。この3年間で貴重な体験ができたと思っています。最後の試合になる全日本選手権では、今まで学んできたことを出し切って、ノーミスの演技がしたいです。」

これが最後だから、力を出し切りたいと思うものもいれば、

この先の新体操のためにも、ここで力を見せておきたいと思うものもいる。

ときには厳しい中山監督だが、選手からの信頼は絶大だ。
ときには厳しい中山監督だが、選手からの信頼は絶大だ。

でも、神埼で過ごした時間が貴重だった、そして、意外なくらいみんなが「楽しかった」と言う。

練習がきつくないはずはない、厳しくないわけはない。

そして、中山監督が怖くないはずもないのだが。

ここにはそれを凌駕する「楽しさ」そして「やりがい」があるのだ。

だから。

彼らは強い。

もちろん、勝ちを目指してやってきているのだが、負けない努力を重ねてきているのだが、

なによりも、新体操の楽しさを知っているから。だから、本番で力を発揮できるのだ。

この2年間の彼らの強さを見ていて、そう思う。

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そして、同じように、「新体操が楽しくてたまらないから強くなる」子どもたちがここに続々と育っている。

今大会から、全日本選手権が全日本ジュニアよりも早く行われることになったため、去年までは2枠あった全日本ジュニアからの出場枠がなくなった。そのことを残念がる人も少なからずいたが、「だったら、5月の全日本団体選手権で3位までに入ればいい!」と挑戦してきたのが、昨年、全日本ジュニアを2連覇した神埼ジュニア新体操クラブだ。

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中学生メイン、小学生も一人混じったメンバーで、彼らは全日本団体選手権準優勝を果たし、見事に全日本選手権の出場権を獲得した。

今大会は、中学2年生以上にしか出場資格がないため、全日本ジュニア3連覇を目指しているメンバーとは1名入れ替えているが、それでも「スーパージュニア・神埼」になんら変わりはない。

高校生は大学生を、ジュニアたちは高校生を、

「なるべく多く食ってやろう」と虎視眈々と狙っている。

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その勇猛果敢な戦いぶりは、きっと見るものの心をわしづかみにするだろう。

今、神埼には、間違いなく男子新体操の未来を担う子どもたちが育ってきている。

今のチームが強いだけではない、その下にも、さらにその下にも、沸くように育ちつつある。

そこには、「強いから」だけではない、魅力があることは見ていればわかる。

日本一のお兄さんたちが、じつによく下の子たちの面倒をみている。

練習では厳しい指導者たちが、普段はとてもフレンドリーで分け隔てなく、新体操を教えることを楽しんでいる。

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中山監督にいたっては、目の前の全日本選手権よりも、主力メンバーがごっそり抜けた状態で迎える高校選抜のことがもう気になっている。

「チーム力ががた落ちだけん」

と言うが、高校始めの選手たちに檄をとばし、自ら動いて見せて指導している様子は、まさに「新体操を楽しんでいる」ようにしか見えない。

この空気が、今の神埼王国を築いた。

そして、それは当分、揺るぎそうもない。

<写真撮影・筆者>