【新体操】女子団体総合で大波乱! JKパワーが「フープ×5」を席巻!~第71回全日本新体操選手権

20.300という高得点をマークし、「フープ×5」首位に立った常葉大学附属常葉

今年の団体女王を決める戦いは序盤から波乱ぶくみだった。

第1演技者の名古屋女子大学高等学校は、夏の高校総体では5位。しかし、その得点は19.150と優勝した昭和学院からこの名女までが19点台にのせ、以下のチームとは差があった。「名女はもっと上でもよかったと思う」と評価する人もいるほど、高校総体でもすばらしい演技を見せていたチームだ。

その名女が、この全日本選手権でも、素晴らしい演技を見せる。スピード感、リズム感にあふれ、名女らしいチャーミングな演技を、すさまじい精度でやりきり、いきなり19.750という高得点をマークしたのだ。

高校総体では、優勝した昭和学院でも19.800だったことを思えば、この名女の得点のすごさがわかるだろう。

個人前半2種目を終えて、少しけだるい雰囲気の漂っていた会場のボルテージが一気に上がった。

「これ、どんな戦いになるんだ?」名女の得点が表示された後の会場のざわめきが観客のそんな気持ちを代弁していた。

2番目に登場したのは日本女子体育大学。

今年のインカレチャンピオン。さらに、アジア選手権でも団体優勝を果たし、今大会でも優勝候補の筆頭にあげられるチームだ。

しかし、この日の演技は、どことなくぴりっとしなかった。小さなミスがいくつか見られる日女らしからぬ演技が続き、とどめに演技終盤でフープが場外に出てしまう大きなミスが出る。

今年から落下、場外など実施の減点はかなり大きくなっているため、これは痛かった。

日女の得点は、まさかの16.800。

大学生チャンピオン、アジアチャンピオンでもミスが出れば、この得点に沈む。

高校総体では3位入賞したアンジュ/城南静岡高校も、脚でキャッチする予定のところを手で受けるなど、細かいミスは見られたが、それでも高校総体のときに劣らぬエネルギーを感じさせる演技で、18.450。名女には及ばないものの、日女を軽々と超えていった。

「高校生優位?」の流れに一矢を報いたのが4番目に登場した武庫川女子大学。近年は、本番でのミスに泣くことの多かった武庫川女子だが、今回は移動も最小限に抑えた会心の演技を見せて、19.450をマーク。しかし、それでも名女の得点を抜くことができず、この時点でいかに名女のレベルが高かったかを思い知らされる。

高校総体6位の秋田市立御所野学院高等学校も、落下は1回あったものの、隙のない美しさと同調性のあるバレエのような品のある作品を演じきり、17.250と健闘。

そして、優勝候補・日女の対抗と思われていた東京女子体育大学が6番目に登場したが、落下3回の大乱調演技となってしまった。ここ数年苦境が続いていた東女だが、今年は団体に復活に兆しは見えていた。この日の演技も、迫力や同調性などには見るべきものがあったのだが、あまりにも出来が悪かった。新体操団体は、なにかがちょっと狂うとこうなってしまうのが怖いところだ。東女は、それが本番に出てしまい、15.250に沈む。

続く日本体育大学は、大きな破綻のない演技をきっちりとまとめてはきた。が、それでも18.250と城南静岡や名女には及ばない。改めて高校総体上位校のレベルの高さを思い知る。

と、そこに高校総体優勝校である昭和学院高校が登場。あの会場を震わせた高校総体を再現するかのような卓越した演技で、演技終了後、会場は沸き立った。

技術力と芸術性を兼ね備えた昭和学院高校の演技
技術力と芸術性を兼ね備えた昭和学院高校の演技

「これは、高校総体に続いて昭和か?」と思った人が多かったのではないか。

昭和の得点は、20.100。高校総体での得点を上回り、当然、トップに躍り出た。

すぐに、高校総体2位の伊那西高校の演技が続き、こちらも1か所交換で予定とおりではなかったように見えたところはあったが大きなミスはなく、総体とも見劣りしない演技で19.450。

中京大学は、「カルメン」を小気味よくまとめ、得意の同調性を見せつけたが、投げ受けにはやや不正確さが見え、17.900。

そして、この日、会場のボルテージを最大限に上げたのが、11番目に登場したすみれRG/金蘭会高校だった。

難しい交換や連係をとことん入れ込んでくる超絶演技でこのところ高校総体でも上位常連だった金蘭会高校は、この夏の高校総体では落下という大きなミスが出て、8位に終わっている。6位までに与えられる全日本選手権の出場権も逃し、今回の出場は、8月に行われた全日本クラブ団体選手権で勝ち取ったものだった。

「団体の金蘭会」としては、このままでは2018年が不本意な結果に終わってしまうところだったが、今回は夏のうっぷんを晴らすような演技を見せた。金蘭会のイメージを破るゆっくり、しっとりした曲調ながら、あくまでも金蘭会らしく、終盤に向けて次々とフープが宙を舞い続ける圧巻の演技で、19.750をマーク。この時点で、名女と並び暫定2位。

独自性のある演技構成に挑戦し続けるすみれRG/金蘭会高校
独自性のある演技構成に挑戦し続けるすみれRG/金蘭会高校

大学生チームのトリとして登場した国士舘大学は、表現力豊かな大人の艶やかな演技を見せ、大きなミスはなかったように見えた。(交換での手具の接触があったようにも見えたが未確認)しかし、前半の動きにはやや硬さが見えたこともあり、19.600と演技終了後に受けた印象よりもやや点数が伸びず、この時点で大学生ではトップには立ったが、昭和、名女、金蘭会には及ばず。この時点で、女子団体総合「フープ×5」のトップ3を高校生チームが占めることは決定した。

ここで、夏の高校総体では惜しくも4位。演技終盤での大きな移動、あれさえなければ優勝もあった常葉大学附属常葉高等学校が登場。

演技冒頭からフルパワーで、迫力満点のダイナミックな「カルメン」を演じきる。

夏の悔しさを払拭したいという思いもあったとは思うが、地元開催の期待を背負っていた高校総体のときよりも、ずっとのびやかな演技だったように感じた。この2018年のために、ずっと一緒に練習してきた仲間たちと、きっとなによりも大切にしてきたこの作品を踊る時間を、慈しみ、楽しんでいるようにも見える、見ている人を幸せにする演技だった。

こういう演技ができた選手たちは幸せだろうな、と感慨深く見ていたら、20.300というこの日一番の高得点が表示された。

最終演技者の奈良文化RGも、そつなく、キレのいい演技をまとめ、17.750。大きなミスの出た大学の大御所2校(日本女子体育大学、東京女子体育大学)を、すべての高校生チームが上回るという予想だにしなかった結果となった。

この結果、28日に行われる団体種目別決勝に進出する8チームは、常葉、昭和、名女、金蘭会、国士舘大学、伊那西、武庫川女子大学、アンジュ/城南静岡となり、8チーム中6チームが高校生となった。

女子の団体総合は、2種目の合計で競われるが、高校生はその年の高校総体種目(今年は「フープ×5」)をメインで練習しており、もう片方の種目(「ボール&ロープ」)は、完成度が低くなってしまうのが例年のパターンだ。なので、団体総合としての順位は、国士舘大学や武庫川女子大学が有利とは言えるだろうが、それでも、「フープ×5」がこの結果だと、団体総合でも高校生チームがかなり上位にも食い込んでくる可能性はある。

また、種目別決勝は、まさに高校総体の再現のような高校生たちの熱い戦いとなりそうだ。今回は、高校総体ではメダルを逃したチーム・常葉、金蘭会、名女の巻き返しが凄まじかったが、決勝では果たして。

そして、大学生のプライドを懸けて、国士舘大学、武庫川女子大学が、高校生たちとどう戦うのか。

28日の決勝は間違いなく名勝負になりそうだ。

※団体種目別決勝「フープ×5」

 競技開始:10月28日(日)11時40分~

<写真提供:清水綾子>