【新体操】フェアリージャパンPOLA、種目別決勝で起死回生の銀メダル獲得!~第36回世界新体操選手権

国内の公開練習でフープ×5の演技を披露するフェアリージャパンPOLA(写真:田村翔/アフロスポーツ)

「1年前に大きく膨らんだ夢がしおれかけている」などと失礼なことを、「団体総合5位」のニュースに書いてしまった。

このニュースを引用して、Twitterでは田中琴乃さん(元フェアリージャパンメンバー/今大会のテレビ解説者)が、「まだしおれてはいない。応援という水をみんなであげましょう」とつぶやいていたが、その「応援という水」の効果はてきめんだった、という結果が最終日には待っていた。

種目別決勝の1種目目「フープ×5」。

決勝に進出した8チームの中で3番目に登場した日本は、団体総合のときとは見違えるような精度の高さ、思い切りのよさを見せた。

団体総合ではなんとか落下をしないように、という懸命の演技だったが、この日は余裕すら感じられる大きさのある演技で、選手たちも演じ終えたときに、手応えを感じた様子だった。

前日は、この種目で19.750と、20点台にはのせられなかった日本だが、果たして。

表示された得点は、22.800。

今シーズンのどの大会でも出したことのない未知の領域の得点が出た。

演技構成の難しさの目安となるD得点は、前日の13.000から14.600へと1.600もアップ。実施の正確性や芸術性が評価されるE得点(10点満点)は、前日の6.750から8.200まで上がった。同じメンバーで同じ演技をしていても、演技の出来栄えでここまでの差ができてしまう。これが、現在のルールの怖さであり、団体総合での日本は、まさにこのルールに足元をすくわれてしまった、と言えるだろう。

正直、前日のフープ×5での上位チームとの得点差を見たときには、「メダル争い」の土俵にものれていないように感じた。

たしかに落下もあったし、ミスもあったが、それ以前の問題なのでは? と思うほどの得点差だったように思う。

それが、24時間も経たないうちに行われた種目別決勝では、この得点!

そして、それは日本だけではなかった。

日本の次に演技を行ったブルガリアも、団体総合のときはこの種目で大きなミスが出てしまい、19.700と日本よりも低い得点に終わっている。D得点だけを見ても、団体総合のときは12.500と日本よりも低い。

ところが、種目別決勝では、1か所だけ落下があったが、全体への大きな影響はない部分で、あとはすべてが高いレベルで実施され、23.300というハイスコアをたたき出した。D得点は、なんと14.700。団体総合のときより、2.200も上がっている。

落下は最低でも0.5の減点になるが、ブルガリアの種目別決勝での演技は、落下があっても、E得点が8.600。落下がなければ9点台にのっていた、そこまで完成度の高い演技だったのだ。

団体総合では、この「フープ×5」で、苦杯をなめた日本とブルガリアが、種目別決勝ではそろって素晴らしい演技を見せ、ブルガリアが優勝、日本が2位となった。3位には、団体総合のときも「フープ×5」で2位だったイタリア。イタリアは団体総合のときは、22.775、種目別決勝では22.550と安定して22点超えを果たした。イタリアはD得点も団体総合のときは14.400、種目別決勝では14.100。毎回同じように高い評価がされる、それだけの演技を見せたということになる。

一方で、団体総合優勝のロシアは、種目別決勝では、落下が続き、女王らしからぬ演技で終わってしまう。得点は、20.325。D得点は、前日の14.500から13.500に、E得点に至っては、前日の8.750から6.825まで下げてしまった。ロシアといえど、落下をなかったことにはできない、この結果、ロシアは「フープ×5」ではメダルを逃すことになる。

団体総合での「フープ×5」の上位6チームは、ロシア⇒イタリア⇒ベラルーシ⇒ウクライナ⇒日本⇒ブルガリアの順だったが、種目別決勝では、ブルガリア⇒日本⇒イタリア⇒ロシア⇒アゼルバイジャン⇒フランスという結果になった。なんという下剋上!

ある意味、これでこそスポーツ! とも思える。

選手たちは、団体総合でのメダルを逃したからと言って、あきらめたり、気落ちするのではなく、「種目別では絶対にメダル!」という強い気持ちで挑んだのだろう。それが結果につながった。

出来が悪ければ沈むことがある。その当たり前のことが、顕著に起こる現在のルールだからこそ、団体総合のメダルは逃してしまったが、種目別の、それも「銀メダル」を獲得することができたとも言える。

種目別決勝2種目目の「ボール&ロープ」も、前日とはかなり順位が入れ替わった。

団体総合では、この種目、ロシア⇒ブルガリア⇒イタリア⇒ウクライナ⇒日本⇒アゼルバイジャンがトップ6だったが、種目別決勝では、イタリア⇒ロシア⇒ウクライナ⇒日本⇒ベラルーシ⇒ブルガリアとなった。

世界選手権では、団体総合、種目別決勝2種目と最多だと3つのメダルを持ち帰ることができるが、今回、メダル3つを勝ち取ったのは、イタリアだけだ。団体総合で銀、フープ×5で銅をとっていたイタリアは、最後の種目「ボール&ロープ」でついに金メダルを獲得。今大会もっとも安定してすべての試技を高いレベルで実施したイタリアにふさわしい色のメダルだった。メダル3色をコンプリートというめったにないおまけもついた。

今大会、大躍進し、日本にはおおいに脅威となったウクライナも、この最後の種目で銅メダルを獲得。日本の銀メダル同様、次への希望をつなぐメダルになっただろう。

D得点が青天井になったため、どのチームもとにかく技(連係)を隙間なく入れてきているため、今大会での上位チームのD得点はついに14点台まで上がってきた。もっとも高かったのは種目別決勝フープ×5でブルガリアが出した14.700、そして日本の14.600が今大会を通じて2番目に高いD得点だった。

しかし、ここまで演技の難易度が上がり、かつ実施での減点が大きくなれば、トップチームでも、E得点を9点台にのせるのは至難の業だ。

今大会、もっともE得点が高かったのは、団体総合の「ボール&ロープ」のときのロシアがマークした、8.950。上位チームでも落下でもしようものなら、6点台までは下がってしまう厳しさだった。

あまりにも、得点稼ぎに走りすぎる傾向にある、と現在のルールの問題点も指摘され始めている。

2012年のロンドン五輪後に大きく芸術性重視に舵をきったように思えた新体操だが、ここにきて一気にテクニカル重視になりすぎているような印象はたしかにある。

が、今回の団体の大混戦ぶりを見ると、このルールには、「スポーツらしい面白さや公平性」があることも感じる。

落下や移動の減点が大きすぎるとも言われるが、だからこそ、強いと言われているチームでもミスが出れば負けるという当たり前のことが起きやすくなったのだ。

採点競技では得てして、審判の先入観が得点に影響しているように感じられることがある。

ある意味、いかにしてその先入観の部分を減らし、「今、目の前で行われた演技のみ」を公正に採点し、評価するかを模索し続けているからこそのルール改正なのだとも言える。

これから2020年までの間に、またルールが多少は変わる可能性もあるが、今のルールは日本にとって決して不利なばかりではない。

攻めた演技を、高い精度で行うことができれば、どの国にもメダル獲得のチャンスはある! そんなルールなのだと、今大会を通じて思うことができた。

ルールが敵になるか、味方にできるか。

それも自分たち次第なのだと、フェアリージャパンPOLAは教えてくれた。

メダルの数こそは前回大会よりは減ったかもしれないが、「こんなこともある」という希望を見せてくれた価値ある銀メダルを彼女たちは手にした。

夢がしおれたまままで、世界選手権が終わることにはならなかった。

そんな終わりにしないだけの強さを、すでに彼女たちは身につけていたのだ。