【新体操】皆川夏穂、予選12位で決勝進出! リボンで予選3位と健闘するも種目別決勝ではミスに泣く

やや苦手意識のあったリボンも予選では18点台をマークした皆川夏穂

正直に言えば、今回の世界選手権は、団体頼みになりそうだと思っていた。

個人では、皆川夏穂くらいは決勝には残ってもらいたいが、それ以上は望めそうにない。

皆川にしても、種目別でメダルを獲得した昨年のようにはいかないだろう。

最悪、決勝に誰も残れない可能性もある、と思っていた。

今年から青天井になったD得点。ロシアをはじめ、海外の選手たちは、AD(難しい手具操作)を隙間なく演技に詰め込み、軽く10点を超えるD得点を稼いでくる。

日本の選手たちも、必死にD得点を上げようとはしている。成果も出てきている。が、どうにも今年には間に合いそうもない。

ワールドカップでなかなか4種目安定した演技をすることができない皆川。

さらには、NHKのドキュメンタリーでも、ロシアで苦労している様子が見受けられた。

15歳から特別強化選手という立場で、ロシアに渡り、世界のトップに追いつけ、追い越せと育てられてきた皆川。

が、テレビに映し出された素顔は、「人に見られるのが苦手」「極度に緊張する」のだという。

生真面目で責任感の強い皆川の美点が、彼女を追いつめているように見えた。

「2020東京五輪・日本のエース」を彼女に背負わせるのは、果たして正しいのか?

あの番組を見て、そんな風にも感じていた。

ところが。

世界選手権が始まってから、皆川は集中力と執念が違っていた。

絶好調というわけではなかったと思う。ボール、フープ、クラブとも、少しずつ危ない場面もあったし、予定通りに演技をやり切れてはいなかったようだ。

それでも。落下減点が大きくなった現在のルールを意識して、とにかく落下だけはしない、という強い意思が伝わってくる。そんな演技が続いていた。得点も、ボール18.400、フープ17.850、クラブ17.650と高値安定で、3日目にしてほぼ決勝進出を手中にした。

予選ではリボンで3位と健闘した皆川夏穂
予選ではリボンで3位と健闘した皆川夏穂

そして、4日目のリボン。

過去の大会では、ミスが出てしまうことが多く、皆川の苦手種目という印象のあるリボンだが、予選での皆川は、見違えるような演技を見せた。それは、過去の大会とも、今大会での3種目目までともまったく違っていた。

華やかで艶やかで、美しく、のびやかで、いつもよりもずっと大きく見え、どこまでも優雅で、リボンもそんな皆川のたおやかな演技を邪魔しなかった。「くるみ割り人形」のフィナーレを飾る華やいだ曲にのって、皆川の笑顔が輝いていた。

そうなんだ。

重荷から解放された皆川夏穂は、こんなにも美しく、そして頼もしく、「新体操の美しさと楽しさ」を伝える演技ができる選手に成長していたのだ。これが本当の彼女だとしたら、たしかに試合では力を出し切れていないのだな、と改めて思った。

この皆川のリボンの演技に対しては、18.100という高得点が出た。

どの選手も得点を伸ばせずにいるリボンでのこの得点は、予選3位にあたる高得点だった。

得意のフープ、ボールで決勝進出を逃し、今回は種目別での決勝はなしかと思われていたが、最後の最後、まさかのリボンで種目別決勝進出を成し遂げた。

そして、予選12位で個人総合決勝にも進出を決めたのだった。

(※個人総合決勝には、各国2名しか進めないため、上位に3選手が入っているロシア、ブルガリアの分、順位が繰り上がり、予選出場全選手中14位の皆川は12位、19位の大岩は17位となる)

そのことよりも、なによりも。

この予選で皆川が見せた演技には、「これが日本の選手なんだ」と誇らしい気持になった。

ある意味、それで十分だった。

予選3位ということで種目別メダルの期待は高まったが、それはおまけのようなものだ。

もう一度、あの素晴らしい演技を決勝で見られれば、それだけで最高! そう思って深夜の生中継を見ていたが、リボン決勝1番演技者で登場した皆川は、予選のときとは別人のような崩れっぷりだった。

身体難度で崩れ、リボンを落下し、場外もあった。なにもそんなにという乱れ方だった。

期待が大きく膨らんでしまっていただけに、「あれまあ」という気持ちにはなってしまったが、つまりこれが新体操という競技であり、皆川夏穂という選手なのだ、と思った。

今回、よくわかった。

たしかに皆川夏穂は、世界のメダル争いにも絡んでいける可能性をもっている。

ただ、その力をコンスタントに出すことがまだできない、ということなのだろう。

果たしてあと2年でその力が常に出せるようになるだろうか。

まずは心身ともに、今以上のタフさを身につけること、それが必須だろう。

今日、行われる個人総合決勝は、1日で4種目というタイトな日程だ。

そこで、皆川がどこまで戦えるのか。上位の選手たちに食らいつけるのか。

期待したいと思う。

それはおそらく2020年に向けての試金石になる。

苦手意識のあったリボンで見違えるような演技を見せた大岩千未来
苦手意識のあったリボンで見違えるような演技を見せた大岩千未来

今回が世界選手権初出場だった大岩千未来も、大健闘で17位。見事、決勝進出を果たした。

大岩も、3種目目まででほぼ決勝進出を決めていたのが良かったのか、リボンでは素晴らしい演技を見せた。

アジア大会では予選、決勝とも足を引っ張っていたのがうそのように、大岩のもつ身体的な長所が明確に見える演技で、表情もよく艶やかだった。16.850は、大岩のリボンとしてはかつてない高得点だったが、それも納得と思える演技だった。

大岩にとっては、今大会は、「まずは決勝進出」が目標ではなかったかと思う。

であれば、今日の決勝は、まるまる「おまけ」だ。

守りに入って縮こまることなく、のびのびと強気に、「日本に大岩千未来あり!」と世界にアピールする演技を見せてほしい。

※テレビ放送の予定。個人総合決勝は今夜10時55分からCSでの放送となる。

<写真提供:清水綾子> ※写真は国内大会のもの