激アツだった2018インターハイ新体操女子団体を振り返る!

優勝した昭和学院高校。真ん中は個人総合優勝した千葉県代表の柴山選手

あの熱戦からちょうど1週間がたった。

8月12日、静岡県で行われたインターハイの新体操女子団体競技は、驚異的なハイレベルかつ僅差の熱戦となった。

優勝候補の中でいちばん先に登場したのは、地元静岡県の代表・常葉学園高校。3月の高校選抜では優勝しており、春夏連覇も期待された。

このインターハイに向けて新調したのだろう、高校選抜のときとは違う新しいレオタードは、曲のイメージに合わせた闘牛士を模したゴージャスなもので、演技も、衣装を裏切らないすばらしいものだった。会場の大声援も味方につけ、演技が終わった瞬間には「優勝が決まった!」と思うほどの歓声、選手たちの笑顔も満開だった。

演技後声援に応える常葉学園高校の選手たち
演技後声援に応える常葉学園高校の選手たち

しかし、演技終盤の交換で、手具の落下こそは防いだが、3歩ほど移動があった。それでも、19.450という十分優勝もあり得る高得点をマーク。残りの有力校の結果待ちとなった。

常葉学園がたたき出した19.450という高いハードルを最初にクリアしたのは、伊那西高校(長野県)だった。

演技冒頭のダンスステップコンビネーションから曲調にマッチした美しい動きを見せ、観客を作品の世界に引き込んだ伊那西は、交換や連係など技術的な部分でも、ほぼ破綻がなく、非常にクリアに演技をまとめあげた。19.500とこの時点で暫定首位となる。

精度が高く美しく華やかな演技を見せた伊那西高校
精度が高く美しく華やかな演技を見せた伊那西高校

午後の競技が始まっても、この伊那西の得点を上回るチームはなかなか出てこなかった。

が、ついに、試技順31番で登場した昭和学院高校(千葉県)が、「ノートルダムの鐘」の世界を見事に伝え切る表現力、芸術性に富んだ演技で19.800と、伊那西を突き放す。選手たちの身体能力も技術も高い昭和学院が、さらにここまでの表現力を発揮して見せれば敵なし、と思わせる名作演技だった。

昭和学院の「ノートルダムの鐘」は、新体操の演技であることを忘れさせた
昭和学院の「ノートルダムの鐘」は、新体操の演技であることを忘れさせた

出場47チーム中の44番目に登場したのが地元開催のため、2校出場できた静岡県代表のもう1校・城南静岡高校だった。じつは県のインターハイ予選では、常葉学園を破ってA代表を勝ち取った城南静岡。会場に大勢かけつけていた地元の期待を一身に背負う形での演技となったが、彼女たちは十分にその期待に応える演技を見せた。わずかな移動が一箇所あったが、あとはほぼパーフェクト。情熱的な曲調にのせて、全国でもトップレベルの個人選手も多いメンバーたちはのびやかにダイナミックに演じきり、19.550をたたき出す。

個人選手としても活躍する選手の多い城南静岡は、その本番強さ、迫力が光った
個人選手としても活躍する選手の多い城南静岡は、その本番強さ、迫力が光った

昭和学院にこそは及ばなかったが、伊那西を上回り、この時点で2位に飛び込む。結果、常葉学園が4位となり表彰台を逃すことにはなったが、静岡県勢が2位、4位に入るという快挙を成し遂げた。

今の高校生たちが小学生だったころから、静岡県勢の勢いは無視できないものがあった。

それが、この地元開催のインターハイで大きな花を咲かせた形となった。

じつは、インターハイの採点については、今だに「地元有利」がささやかれることがある。

僅差の勝負の場合は、とくに「地元だからね」とまことしやかに言われことも少なくない。

が、今回は違った。

静岡のチームが2校入賞しても、「地元だから」と揶揄する人は誰もいなかった。

誰がどう見ても、この2校は強かった。本番でも地元の大声援をプレッシャーではなく力に変えて、素晴らしいパフォーマンスを見せた。

文句なしのダブル入賞だった。

そして、昭和学院の優勝にも、近年まれに見るほど異論が聞こえてこない。

技術的な面だけでなく、伝える力の高かった今年の昭和学院の作品には、多くの人に「ここが一番!」と思わせる説得力があった。

上位校はどこもハイレベルな演技を見せていたため、移動や落下が1つでもあれば、順位が変わってしまう接戦だった。

そんな中、みんなが納得する演技をした昭和学院が優勝、というじつに清清しい大会となった。

現在の新体操のルールでは落下や移動の減点が大きくなっているため、金蘭会高校(大阪府)や潤徳女子高校(東京都)など、パーフェクトな演技であれば、優勝を争えると思われたチームでも、今回はひとつの落下で涙をのむ結果となった。

新体操は厳しい。が、それだけにやりきれたときの喜びは大きく、見るものに与える感動も大きい。

女子の新体操といえば、メディアに登場するのはほとんどフェアリージャパンPOLAの日本代表選手たちだが、じつはそれを支えているのは、多くの日本国内で切磋琢磨している新体操選手たちだ。インターハイはそんな選手たちの最高の晴れ舞台であることは昔も今も変わらない。だからこそ、そこには歓喜も涙も感動もある。

素晴らしい演技の応酬だった今年のインターハイの女子団体競技を、NHK-BSがカメラ8台を駆使して密着取材しており、

本日、午後4時からBS1にて、「密着ドキュメント 夢と絆のインターハイ「新体操 女子団体」」として放送する。

※番組詳細はこちら

新体操もつ魅力と、インターハイのもつ熱量を、感じ取れる番組になっているはずだ。

日本代表選手以外で、女子の新体操がこれだけ大がかりにテレビで取り上げられることは珍しいので、ぜひこの機会に見てほしい。

折りしも、今日は、群馬県高崎市で、新体操の「全日本インカレ」も行われている。数年前は、インターハイで汗や涙を流した選手たちで、今もこの舞台に立っている者もいれば、インターハイに届かなかったという思いを胸に、新体操を続け、また花咲かせている選手も数多くいる。

東京五輪や世界選手権に向けて、海外でしのぎをけずっている選手たちだけでなく、インターハイやインカレを夢見て、新体操に懸けている選手たちにも、ぜひ注目してもらいたいと思う。今回のドキュメンタリーがその一助となれば、と願ってやまない。

<写真提供:清水綾子>