2018年4月29日、日本の体操界は変わる! のか? ~第72回全日本体操競技選手権決勝

予選のあん馬で落下し、5位となった内村航平(リンガーハット)(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

王者・内村航平(リンガーハット)の全日本11連覇に黄信号が灯った。

4月27日に行われた予選では、あん馬で落下があり、5位通過。

それでも、怪我で途中棄権となった昨年の世界選手権以来、初の個人総合ということを考えれば、見事な復活と言ってもいいほどだった。

なにしろ、今年3月、ドーハでのW杯では4種目に出場してすべて予選落ちという、内村にとっては考えられない屈辱も味わっていたのだから。予選5位通過も、よくぞここまで戻してきた、と普通の選手ならば言われるに違いない。

が、内村航平はそういう選手ではない。

そして、おそらく本人も納得するレベルまで復活した内村航平でなければ勝つことは難しいくらいに、内村の後進たちは成長してきた。

2014年高校総体での白井健三
2014年高校総体での白井健三

その筆頭が、昨年の世界選手権で個人総合3位となった白井健三(日本体育大学)だ。

ゆかと跳馬のスペシャリストから、オールラウンダーへ。

「6種目できてこそ体操」と、内村から叱咤激励されながら、着実にその距離を縮めてきた白井は、今大会予選でついに首位に立った。

予選での白井の得点は、86.099。ゆか15.333、跳馬15.000はずば抜けた高得点。つり輪とあん馬は、まだ13点台だが、得意種目での貯金で他を大きく突き放す。これが今のところ、白井の個人総合の戦い方だ。

2014年高校総体での萱和磨
2014年高校総体での萱和磨

予選3位には、白井とはジュニア時代からのライバルで同級生の萱和磨(順天堂大学)が入った。得点は、85.898。白井との差は、わずか0.201。萱もゆかと鉄棒は13点台だが、限りなく14点に近い得点は得ている。6種目のバランスの良さは白井にも勝る。そして、得意のあん馬では14.900、平行棒では14.933と大きく稼ぐのが萱だ。リオ五輪を帯同補欠として観客席から見ていた、というその悔しさをしっかりと自分の力に変えて、萱もまた内村超えを目指す。

2014年高校総体での谷川航
2014年高校総体での谷川航

谷川航(順天堂大学)は、予選4位。得点は85.732。白井との差は、0.367。谷川は、ゆか14.633、跳馬14.400、平行棒15.200。トップレベルの得点を得られる種目の多い、典型的なオールラウンダー。2014年には、高校総体で白井、萱を抑えて優勝している。

先日は東京ワールドカップに出場し、白井に次いで2位という成績だったが、こと個人総合に関しては白井の後塵を拝することにあまんじ続ける気はないはずだ。

2016年全日本選手権での谷川翔
2016年全日本選手権での谷川翔

そして、今回、予選2位と大躍進したのが、この谷川航の弟・谷川翔(順天堂大学)だ。

予選では第1グループだったにもかかわらず86点超を達成。結果、白井以外は誰もこの谷川翔の得点を上回ることはできなかった。

86.031は、首位白井とわずか0.063差。予選では鉄棒だけがわずかに14点を切っているが、あとは14点超。平行棒では15.066という、抜群の安定感を見せた。兄・航にとっては「一番負けたくない相手」というが、じつは、この弟。2年前にも市立船橋高3年生のとき、全日本選手権決勝で10位というサプライズを演じている。このとき、大学1年生だった兄は、13位で弟に負けている。

兄にとっては、かなり手ごわい弟なのだ。

そして、今、兄だけでなく、内村航平にまでも勝ってしまいそうな谷川翔。決勝での演技には注目せずにいられない。

1~4位までが0.367差にひしめいており、この4人の順位は、ひとつのミスで変化しそうだ。

2014年高校総体での千葉健太
2014年高校総体での千葉健太

予選6位の千葉健太(順天堂大学)の得点は、85.066。5位内村との点差はわずか0.32。昨年の全日本では予選で1位になり周囲を驚かせたが、それはフロックではなかったと証明して見せた。

予選ではつり輪と跳馬が13点台だったが、どちらも14点にかなり近い得点は出ている。本来得意なあん馬で14.000と不調だったため、予選以上の得点は十分望める力はある選手だ。

上位6人のうち4人は、白井健三と同じ学年。いわゆる「96年組」だ。

内村航平から王座を奪うのは、やはりこの世代なのか?

それとも、彼らを飛び越えて、谷川翔が大下剋上を成し遂げるのか?

もしくは、内村航平が王者の意地を見せて「ミラクル」を起こすのか?

注目の決勝は、本日13:10競技開始となる。

13:05からNHK総合でもこの様子は中継される。(14:55~はEテレ)

また、今大会から日本体操協会が実況ツィートを始めている。臨場感あふれ、かつ簡潔で的確なツィートはすでに体操ファンの間では「神」と崇められている。現地観戦、テレビ観戦がかなわない人はぜひ、こちらの実況ツィートをチェックしてほしい。

※日本体操協会公式Twitter

2020年東京五輪まで2年となった今、日本の体操界は大きく変わるかもしれない。

その歴史的な瞬間にぜひ注目してほしい。

<写真提供:末永裕樹>※2014年高校総体のもの