日本新体操界の美しき切り札・大岩千未来(イオン)、特別強化選手に抜擢!

2016年のイタリア国際トーナメントでは特別賞も受賞している大岩千未来

予感はあった。

3月12~13日に、立川立飛アリーナで行われた「アジア新体操選手権代表選考会」で見せた大岩千未来の輝きには突き抜けたものがあったからだ。

この選考会で大岩は、同クラブの先輩にあたる河崎羽珠愛(イオン)に次ぐ2位となり、アジア新体操選手権の出場権を獲得した。

2016年ユースチャンピオンシップ
2016年ユースチャンピオンシップ

1日目の1種目目フープでは、落下場外があり、13.300という苦しいスタートとなったが、そのフープも「雪がふる」の物悲しい旋律が大岩の美しさを存分に引き立てた名作の予感のする作品だった。また、1つミスが出るとずるずると崩れる印象のあった数年前とは違い、ほかの部分はきっちりとまとめたところに成長が見られた。

そして、2種目目のボールでは、すごみを感じさせる演技を見せた。ポロリと1か所、落下はあったがそれを忘れさせるほどの、難度の美しさで圧倒した。とくに後ろ脚持ちのローテーションでは、高いかかとで完全に軸が1本になった独楽のような回転を見せつけた。この形、この高さは、まさに「海外の選手にもひけをとらない、いや勝るかもしれない」と思わせるものだった。

フープではやや出遅れた感があったが、このボールで15.000をマーク。

2日目の2種目でも細かいミスはあったが、大崩れはしなくなった。そして、崩れさえしなければ、別格と感じさせるだけの身体を彼女は持っている。

その大岩を、日本体操協会は、4月11日の第1回常務理事会において、特別強化選手に加えることを決定した。

納得、の決定だと思う。

2018年アジア新体操選手権代表選考会
2018年アジア新体操選手権代表選考会

大岩千未来は、「素材のよさ」では、小学生のころから目を引く選手だった。

小学2年生で全日本キッズコンテスト(257名出場)のキューティー賞受賞。

小学4年生で、全日本クラブチャイルド選手権(3~6年合計671名出場)3・4年の部3位。

小学6年生のときは、全日本クラブチャイルド選手権5・6年の部9位と、常に期待される立場にいた。

しかし、中学生になった最初の年・2014年は、強豪選手ひしめくイオンへの移籍、中学も激戦区千葉県ということで、大きな大会への出場がほとんどかなわなかった。

久しぶりに大岩が登場した大舞台は、2015年2月の「コントロールシリーズ第1戦」。

このとき、ジュニアの強化選手たちも種目を絞って演技を行ったのだが、ここで大岩はジュニアでトップの成績を残している。

まだミスもあったし、演技にはぎこちなさも残っていた。

が、それまでは、なかなか見えてこなかった大岩の個性が見える演技に変わっていた。

それまでは無表情な印象が強かったが、演技中の表情にも変化が見られた。

ほぼ1年間、表舞台には出てこない中で、「素材はピカ一」と言われ続けていた大岩は、大きなつぼみをつけるまでになっていた。

「自分の能力を生かしたい!」という思いが、おそらく彼女の中で、本物になり、強くなったのではないか、その変貌ぶりはそんな風に見えた。

大岩だけでなく、いわゆる「素質に恵まれている選手」にはありがちな、本人の気持ちよりも周囲の期待の先行。そのせいで、本人の気持ちが育ちきれないことはままある。それでつぶれていく選手も少なからず見てきた。

が、大岩は、この年に、そこから抜け出したように見えた。

そこからは快進撃が始まった。

2016年ユースチャンピオンシップ
2016年ユースチャンピオンシップ

2015年には全日本ジュニア10位。

そして、中学3年になった2016年には、全日本ジュニア優勝と、スターダムを駆け上がっていった。

ひとつ上の学年には、現在すでに特別強化選手となっている喜田純鈴(エンジェルRGカガワ日中)がいた。

大岩が、なかなか結果を残せないでいる間、喜田は全日本ジュニアを3連覇している。

が、2016年、4連覇確実と言われていた喜田(当時高1だが早生まれのためジュニアの大会にも出場できた)の連覇を阻止したのが、この大岩千未来だ。喜田の不調もあったとはいえ、大岩の進境がなければ優勝はなかったはずだ。

また、2016年には、ワールド杯イタリア大会と同時に開催された国際トーナメントにも出場。ここで大岩は、海外の選手たちを抑え「特別賞」を獲得している。

大会成績とは無関係に選ばれるこの賞は、いわば期待の表れだ。

海外の審判たちにも、その「素材のよさ」は太鼓判を押されているのだ。

2018年アジア新体操選手権代表選考会
2018年アジア新体操選手権代表選考会

特別強化選手になった以上は、近いうちにロシアに派遣されるのだろうと思われるが(まだ発表はされていない)、先日の「情熱大陸」でも見られた、あの厳しいロシアの練習環境が、この大器をどう成長させてくれるのか。

楽しみでたまらない。

すでにロシアでの指導を受け、結果を出してきている皆川夏穂(イオン)、喜田純鈴に続き、この大岩が彼女たちに迫る成長を見せてくれたならば、「特別強化選手」といえど、無競争ではなく厳しい競争にさらされるようになるだろう。

それは選手たちにとっては苛酷ではあるが、日本の代表を約束されている選手たちであり、2020年東京五輪での新体操の浮沈がかかっていることを思えば、そこは耐えて、乗り越えて、大きな花を咲かせてほしいと思う。

彼女たちには、それを実現できるだけの、力がきっとある。

<写真提供:清水綾子>