男子新体操⇒シルク・ドゥ・ソレイユの2人が見せたいもの~「マッスルミュージカル2018」

公演への意気込みを語ってくれた野呂昂大(左)と弓田速未(右)

「1日限りの復活公演」が注目されている「マッスルミュージカル2018」だが、この公演の中で大きなウエイトを占めるのが男子新体操だ。国士舘大学が総出演。さらに、シルク・ドゥ・ソレイユのパフォーマーとして活躍してきた国士舘大学男子新体操部のOBも出演するということが大きな話題となっている。

昨年末までシルク・ドゥ・ソレイユの『VAREKAI』ツアーで世界中を回っていた野呂昂大と弓田速未。

男子新体操選手としても華やかな実績を残し、シルクでの経験も積んできた2人が、今回の公演に懸ける思いは。

そして、何を見せたいと思っているのか。

近づく本番に向けて熱い稽古が行われている稽古場を訪ね、2人に話を聞いてみた。

野呂昂大(2007年高校総体個人総合優勝)
野呂昂大(2007年高校総体個人総合優勝)

「マッスルミュージカルは、中学生のころ見ていました。アスリートのショー、という感じでいつか出てみたいな、という気持ちはありました。なので、オファーをいただいたときは二つ返事でした。ただ、今回は国士舘の学生も一緒なので、学生とは違うものを見せないといけないな、とは思いました。

 シルクでは、人間ではない役(=イグアナ)を演じていたので、今回は新しいことをやっている感じで楽しいです。たくさんのことを吸収したいと思っています。」

弓田速未(2013年全日本社会人大会優勝)
弓田速未(2013年全日本社会人大会優勝)

「男子新体操で憧れていた先輩が出ていたときに、マッスルミュージカルは観に行きました。舞台ではあっても、パフォーマーの技で魅せる部分も大きいなと思っていたので、自分にできるかな、という不安はありました。でも、シルクで2年半やってきたんだ、というプライドもあるので、学生にはできないものを見せたいと思っています。自分にとってはやりやすいかな? と思えるキャラクターを演じさせてもらいますが、タンブリングと演技の両方やるのはなかなか難しいです。」

奇しくも2人とも「学生との違い」を口にした。

たしかに、今回の舞台には、国士舘大学の現役選手たちが多数出演している。

この日も稽古場には多くの選手たちの姿があり、迫力ある稽古ぶりを見せていた。

まだ動きが固まりきれていない部分もあり、その場でどんどん変更も加え、演技を作り上げている過程にあったが、さすが日頃から鍛えているだけあって、その対応力が凄い。

稽古する国士舘大学の学生
稽古する国士舘大学の学生

全体的なイメージを伝えれば、個々の動きは自分達で考え、提案することもできる。

野呂や弓田のように、実際にプロの舞台を踏んできた経験こそないものの、演技会などの経験は数多く、「お客さんを楽しませる」ということを十分意識したパフォーマンスができるという点では、国士舘の学生たちも負けていない。

観客へのアピールも十分な国士舘の学生たち
観客へのアピールも十分な国士舘の学生たち

その学生たちの頑張りに、先輩でもある野呂と弓田はおおいに刺激も受けながら、シルクでの経験を生かした「学生とは違う」パフォーマンスを見せてくれるだろう。

それは、彼らのプライドでもあると同時に、今回同じ舞台を踏むことになった男子新体操の後輩たちに対するメッセージでもある。

今回のマッスルミュージカルに出演する国士舘大学の学生や、この舞台を観た男子新体操選手の中からも「将来はエンタメの世界に進みたい」と考える者も出てくるだろうことは考えられる。野呂や弓田は、いわばその夢を実現した成功者とも言えるが、その彼らが、男子新体操という世界から、シルクという世界に飛び込みやっていくうえで得たもの、学んだことはなんだったのか? 同じ道を志す後進たちのためにも答えてもらった。

シルク時代も磨き続けてきた野呂のタンブリングの迫力は凄まじい!
シルク時代も磨き続けてきた野呂のタンブリングの迫力は凄まじい!

野呂「いきなりの海外、いきなりのシルクというビッグネーム。やっていける自信はまったくありませんでした。(注:野呂は、『VAREKAI』の前にシルク・ドゥ・ソレイユが初めて男子新体操を演目に入れた作品『マイケルジャクソン イモータルツアー』にも出演していた。)そんな中で感じたのは、パフォーマーとしてやっていくには、何かひとつでもいいから人には負けない、と思える強みをもつことが必要だということでした。それがあれば自信が持てる、そして折れない心でやっていけると思いました。

 自分の場合は、それがタンブリングでした。新体操ではやらないようなタンブリングにも挑戦し、できるようになっていったことで自信がつきました。」

両腕を旋回しながらのタンブリングは弓田ならでは。一段と迫力が増していた。
両腕を旋回しながらのタンブリングは弓田ならでは。一段と迫力が増していた。

弓田「自分がシルクに入ったときは、周りの新体操メンバーはすでにシルクの経験もあり、新体操の実績も全日本優勝とか凄い人たちばかり。さらに自分は個人選手でやってきたので、シルクで求められるシンクロには自信がなく、自分がメンバーの中で一番未熟だという思いから不安でいっぱいでした。

 それでも、自分の強みだと思っていた表現力や個性。そこは捨ててはいけない、という気持ちはしっかり持ってやっている中で、自分の動きを面白いと評価してくれる振付の方がいたり、新体操チームの先輩からも“お前、やばいな”と言ってもらえたりして、少しずつ自信がついてきました。舞台上ではタンブリング以外の時間を体的には休息にあてることが多いのですが、自分はその時間も思い切り動いて、顔も作って表現していました。前の方の席の人にしか見えないかもしれないですが、反応があるのが嬉しくて。」

国士舘大学OBで今回出演する出来田和哉(2009年全日本学生選手権種目別スティック優勝)もシルク経験者だ。
国士舘大学OBで今回出演する出来田和哉(2009年全日本学生選手権種目別スティック優勝)もシルク経験者だ。

2011年以降、シルク・ドゥ・ソレイユのパフォーマーに登用される男子新体操選手は飛躍的に増えた。

しかし、すでに帰国した元シルク組のパフォーマンスを日本で見る機会はほとんどなかった。(現在、花園大学で指導をする谷本竜也だけは帰国後、社会人大会に出場し素晴らしい演技を見せている)

今回の「マッスルミュージカル2018」は、野呂、弓田というシルク・ドゥ・ソレイユを経験してきた元男子新体操選手のパフォーマンスを舞台で見ることができる貴重な機会と言える。

揃って「はじめはまったく自信はなかった」と言う2人だが、その2人が海外で、シルクで生き残っていくために、模索し掴み取ったもの、を今回の舞台ではおおいに発揮してくれるに違いない。

野呂「とにかくタンブリングの強さを見せたいです。現役の学生にも負けない、タンブリングの高さ、特殊性をぜひ見てください。」

弓田「役者としては未経験ですが、舞台の場数は踏んできているのでその分の差は見せたいです。腕を回しながらのタンブリングや、ひねりの途中で体を開くタンブリングは自分のいわば持ち技。これもしっかり見てほしいです。」

男子新体操の現役選手たち、そしてシルク・ドゥ・ソレイユという世界最高峰のエンターティメントの世界を経験してきた元男子新体操選手たちが競演する「マッスルミュージカル2018」は、男子新体操界に大きな一歩を刻んでくれそうだ。

※「マッスルミュージカル2018」公式サイト

<写真提供:清水綾子>