連日、「新体操がCSで放送される」というニュースで恐縮だが、これは新体操界にとって非常に大きなニュースであり、潮流なのだ。

とくに女子の新体操は、今までじつに露出が少なかった。

せいぜい五輪、世界選手権、そして年に1度のイオンカップがほんの少し。

試合会場に出かけて行って観戦しない限り、新体操の演技を見られる機会はそのくらいしかなかったのだ。

YouTubeが普及してからは、海外の試合ではライストが行われたり、そのアーカイブが残っていたりして、飛躍的に演技を見られるようになった。

日本の選手でも、フェアリージャパンPOLAや皆川夏穂選手のように、海外の試合を転戦している選手たちは、こういったネットの恩恵で見られる機会がぐっと増えた。

しかし。

国内でトップ争いをしている大学生たち、高校生、ジュニア達となると、本当に見る機会がない。

大会ごとにDVDなどの販売はあるので、それを買うくらいしか方法がなかった。

それが、2015年から変わってきた。

CS放送のスカイAが、国内の新体操の大会を放送し始めたのだ。

まずは、「全日本クラブ団体選手権」その後、「全日本新体操選手権」「全日本ユースチャンピオンシップ」とコンテンツを増やしてきた。

「全日本新体操選手権」を放送するのは、今年が2回目だが、今回は昨年に比べると、クレーンカメラも導入、スタッフも増員してかなりの力の入れようだった。

すでに放送された男女団体総合、昨日放送された男子個人総合を見ても、その映像の美しさ、バックヤードの選手たちの表情まで節度を持ちながら追ってくれていること、さらには注目選手、チームには事前取材も行うなど、新体操の魅力を伝えようという意欲が非常に伝わってくる造りで、新体操のファン、関係者にとっては「夢のような番組」を提供してくれている。

ただ、おそらく今はまだ、この映像は、「すでに新体操が好き、興味がある」という人にしか届いていないのではないかと思う。

それが惜しい。

とくに女子の新体操は、今年の世界選手権で団体も個人もメダル獲得と、東京五輪に向けて勢いづいている。

フェアリージャパンPOLAや皆川、喜田純鈴ら日本代表選手だけではなく、国内でこの競技を究めんとしている選手たちのレベルもどんどん上がっていっている。

Jリーグから見ているサッカーファンが、代表戦しか見ない人よりも、より深くサッカーの代表戦を楽しめるように。

日本の新体操も、代表だけでなく、代表を目指したり、脅かしたりする存在になろうと切磋琢磨している選手たちこそ、見てほしいと思うのだ。今まではそれをするには大会会場に足を運ぶしかなかったが、CS放送で見られるようになったのだから。

現在は、タレント業で大活躍中の畠山愛理(元・フェアリージャパンPOLA)に勝るとも劣らない美しい選手、チャーミングな選手もたくさんいる。まるで魔法使いのようにテクニカルな演技を軽々とやってのける業師たちもいる。女優のように表現力豊かな選手もいる。

日本代表選手たちのレベルが上がってきたことに引っ張られるかのように、いや、もしかしたら国内の選手たちの頑張りこそが代表選手たちを押し上げているのかもしれないくらいに、日本の新体操はまさに今、百花繚乱時代を迎えている。

本日のスカイAの放送は、女子個人総合の出場全選手を放送してくれる。

今の日本の新体操がどんな状態なのか。今まで見たことのない人、久しく見ていなかった人にもぜひ見てほしいと思う。

●個人総合優勝:立澤孝菜(イオン/国士舘大学)

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 今回、初優勝となった立澤選手。ジュニア時代よりその美しさと柔軟性は高く評価されてきたが、それゆえの脆弱性も併せ持った選手だった。それが、ここにきてぐっと強さが増した。今シーズンは選曲や振付も従来の静的なものから脱皮し、力強さが感じられるようになった。美しい選手が、鍛錬に鍛錬を重ねた結果、強さを身につけてついに頂点に立った、というストーリーは、じつに現在の新体操らしい。日本の頂点には立ったが、まだまだこれから! さらに上を目指せる選手であり、物静かなたたずまいながらその意欲は十分もった選手だ。

●2位:柴山瑠莉子(イオン)

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 まだ、高校2年生ながら、2年連続、全日本で2位。凄いことだ。しかし、本人はまったく満足していない。「今年は悔しい思いばかりしている」と大会後に語った。非常に踊り心のあるチャーミングな演技で、人気も高い選手だが、さらにその演技のアグレッシブなことには驚くしかない。「それはちょっと無理?」というような操作にも果敢に挑み、時間をかけてもモノにしていく姿勢が彼女をここまで強くした。

 国際基準から見ればやや小柄かもしれない。柔軟性なども特別秀でているわけではないという。それでも、表現すること、踊ることが好きで、この世界にいる。そして、そこで評価を勝ち得るために自分にできることはなにか、をよく知っている選手だと思う。

●3位:河崎羽珠愛(イオン/早稲田大学)

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 昨年まで全日本選手権を3連覇していたが、今年はついに女王の座を譲り渡した。今年は故障にも悩まされ、たしかに厳しいシーズンではあった。が、全日本選手権で見せた演技は決して、「女王陥落」というようなネガティブな印象を受けるものではなかった。かつては表現力不足と言われながら、思い切りのよい手具操作と、できる難度をきっちりとるという強みを生かして勝ってきた選手だが、今は、年齢相応に表現力も増し、個性的な雰囲気と相まって「味のある選手」になり、魅力的な演技を見せるようになった。この選手も確実に進化はしているのだが、他の選手たちがそれ以上に進化した、ということなのだ。

●4位:大岩千未来(イオン)

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 現在、高校1年生。昨年の全日本ジュニアチャンピオンが、いきなりこの位置まで上がってきた。プロポーションと脚のラインの美しさに恵まれた選手で、海外の試合でも特別賞を受賞したこともあり、まさに国際基準といえる選手。ジュニア時代は試合でミス連発に泣くことも少なくなかったが、昨年あたりから演技のバランスがよくなり、安定感が出てきた。種目による得手不得手はまだ感じられるが、自信をもっているのだろう、と思える種目ではかなり「魅せる演技」になってきている。順調に成長したあかつきには、国際舞台での活躍も十分期待できるだろう。

●5位:猪又涼子(日本女子体育大学)

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 華奢に見えるが、高校時代には、高校選抜、高校総体と優勝し、団体も兼任というタフな選手だった。それを支えていた練習量が、大学生になり、個人に専念するようになってからは、抜群の正確性となって表れている。小柄で華奢だが、フロアをめいっぱい使い、フロアから飛び出さんくらいのエネルギーを感じさせる演技が持ち味だ。

●6位:藤岡里沙乃(東京女子体育大学)

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 大学4年生。学生として出場する最後の全日本選手権だった。日本の女子選手には社会人選手としてやっていく道がほぼない。それゆえにこの選手の演技もこれで見納めかもしれない、という覚悟ももたなければならない。が、そうなるには惜しい、と思うだけの独自性のある演技を見せてくれる選手だ。ジュニア時代から表現力には長けた選手だったが、大学4年生まで新体操を続けるなかで磨きをかけ、深みを増してきた。今日の放送がどの種目になるかわからないが、とくにフープとボールは必見だ。日本の新体操選手にもこれだけの表現ができる選手がいるということを知ってもらいたい。

●7位:古井里奈(国士舘大学)

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 ジュニア時代からトップレベルの選手で、高校1年生のときには高校総体優勝。しかし、大学1年目の昨年は、怪我に泣かされた。全日本選手権を途中棄権するほどの重症で、その後、手術、リハビリと苦しい時期を過ごした。今シーズンに入ってからもなかなか本調子とはいかない試合もあったが、全日本選手権ではほぼ復調したといえる演技を見せてくれた。とにかくよく動く表情豊かな選手で、その演技は見る人みんなを魅了する。「新体操大好き!」という思いがほとばしるような演技が持ち味の選手だ。

●8位:亀井理恵子(東京女子体育大学)

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 昨年の高校総体チャンピオン。大学1年生になった今年も、順調に実績を重ねてきた。この選手の演技はかなりテクニカルで、技の連続性が素晴らしい。一方で、それを技の羅列に感じさせないだけの表現力や音感のよさも兼ね備えている非常にバランスのよい選手だ。演技からも、彼女が自分の強み、弱みをよく理解したうえで、自分なりの戦い方を選択しているように感じられる。この先まだまだのびしろがありそうだ。

 上位8名だけを紹介したが、このほかにも注目すべき選手は多い。とくに、現在の新体操は手具操作が複雑になっており、またそこで得点を稼ぐこともできることから、見ている人をドキドキワクワクさせるようなテクニカルな演技をする選手が増えてきているので、そういう演技も楽しみのひとつではないかと思う。

 

 本日、20時から。

 スカイAで放送される「第70回全日本新体操選手権~女子個人総合」をぜひチェックして、現在の新体操の魅力を存分に味わってもらいたい。なお、スカイAの放送は一部のネットカフェでも視聴できる。まずは試しに見てみようという方にはネットカフェでの視聴もおすすめだ。

<写真提供:清水綾子>