大学二強(順天堂大・日体大)を猛追!~全日本体操団体選手権で、鹿屋体育大学が存在感を見せる!

全日本体操団体選手権に出場する鹿屋体育大学チーム

2017年11月25~26日、群馬県高崎アリーナで、「第71回全日本体操団体選手権」が開催される。

日本のトップ16チームが、「日本一」を懸けて激突するこの大会は、個人総合とはまた違ったチーム戦の面白さを堪能できる大会だ。

とくに、男子は、ここ数年、トップ6の顔ぶれだけを見てもかなり入れ替わりが激しく、今年もどうなるのか興味が尽きない。

昨年の全日本団体では、順天堂大が優勝、2位が日体大。さらに2015年に遡れば日体大が優勝、順天堂大が2位と、ここ2年、大学生チームが頂点争いをしている。

もちろん、社会人チームであるコナミスポーツ、セントラルスポーツ、徳洲会体操クラブ、朝日生命なども虎視眈々と王座を狙っているに違いないが、そこに果敢に挑んでいこうとしているのが、今年の全日本学生選手権団体で初の3位となった鹿屋体育大学だ。

全日本学生選手権では、優勝した順天堂大のチーム得点が422.450。2位の日体大が419.350、続く鹿屋体育大は、410.400とやや差はあった。

しかし、全日本シニアでの優勝チーム、セントラルスポーツのチーム得点は、418.600。4位の徳洲会体操クラブは414.850と、その距離は少し小さくなる。もちろん、試合が違えば審判も変わり、多少、基準も変わるので、そこで比べることにはあまり意味はない。

ただ、大学生団体3位の鹿屋体育大にとっては、社会人チームをひとつでも多く食うことは明確な目標と言えるだろう。

じつは、全日本団体選手権は、鹿屋体育大学にとっては「ゲンのいい大会」だ。

現在の4年生が1年生だった2014年の全日本団体で、鹿屋体育大は、予選を4位という好成績で通過。(当時は予選、団体と試合が2日間にわたっていた)その勢いのまま決勝でもコナミ、順天堂、日体に続いての4位という大躍進を遂げたのだ。

2014年の全日本学生選手権では、団体6位にすぎなかった鹿屋体育大のこの飛躍ぶりは、多くの人の度肝を抜いた。

鹿児島のそれもかなり不便な場所にある鹿屋体育大は、かつては「全日本インカレでも2部落ちの可能性が高いチーム」と言われていた。しかし、近年は、高校までにすでに実績をもった選手たちがかなり進学してくるようになっているが、この流れは、この2014年の全日本団体での快進撃から始まったとも言えるだろう。

もちろん、それだけではない。

指導力に定評のある村田憲亮を2010年にコーチとして招聘。4年前からは体操部専用の寮を完備するなど、「大学でもっと力をつけたい選手たち」にとって、魅力あるチーム作りに取り組んできたその結果が、選手獲得、さらに競技成績として表れてきたのだ。

「全日本団体では、なかなか2014年の成績が超えられなくて。ここ2年は、7位、8位と落ちてきているので、今年はなんとか上げたいです。」と村田監督は言う。

全日本団体の順位だけを見ればたしかにそうだ。

だが、それはコナミスポーツ以外の社会人チームも、ここ数年、戦力が非常に充実してきたことを思えば無理もない。

現に、全日本学生選手権での団体順位は、2014年の6位から4位、5位、そして今年は3位と上がってきているのだから。「順天堂大」「日体大」の二強と言われがちな、大学生だがそこに鹿屋体育大学も食らいついていける力をつけつつある。

今年は、国際大会でのメダルも数多く獲得した。

前野風哉(3年/市立船橋高出身)は、9月に出場したハンガリー国際ではゆかで金、あん馬と鉄棒で銀メダルと3つのメダルを獲得。

前野風哉(3年)
前野風哉(3年)

「海外の試合のほうがメダル獲れる気がします。国内には強い選手が多すぎて…。」

と言う前野は、今年もどの試合にも6種目出場し、高値安定の演技を見せ、それ相応の得点は出してきている。それでも、前野の最大の目標である、「同期(96年組)に勝つ!」がまだ実現できていない。とくに全日本学生選手権では、ミスが2つ出てしまった結果の個人総合6位。白井健三、萱和磨、谷川航、千葉健太はまた自分より上にいた。ミスがなければ食い込めた、そこまで差が縮まってきていただけに、この6位は悔しかった。

団体では初の3位。それは嬉しかったというが、個人がこれでは「心からは喜べなかった」。

全日本団体にも6種目に出場する予定だという前野は、この大会での目標を「チームとしては3位以内。個人的にはミスなくやって、来年4月の全日本選手権に繋げたい。」と意気込む。

大学生最後の年となる2018年。前野は本気で「全日本選手権優勝、NHK杯優勝」を目指すという。こちらがひるむほどの高い目標だが、「そこを目指さないと世界選手権には出られない」と言い切った。たしかに、それはそうだ。

悔しさも残った2017年だが、ナショナルに入れたこと、国際大会でメダルが獲れたことなど、「スタートできた年」ではあったと前野は言う。だから、もう後戻りはしない。2018年の大ブレイクに向かって、まずは全日本団体で最高の演技をする。

杉野正尭(1年/鯖江高出身)
杉野正尭(1年/鯖江高出身)

鹿屋にきて1年目から大飛躍したのが、全日本種目別選手権あん馬で優勝し、世界選手権代表候補にまでなった杉野正尭(1年)だ。6月、種目別選手権の前に取材に行ったときに、「目標はあん馬で優勝して世界選手権代表入り」と言ってのけた選手だが、まさに有言実行。世界選手権への出場こそはあと一歩のところで逃したものの、フランス国際のあん馬では、しっかり金メダルを獲得した。

「体操人生で一番調子のよかった1年でした。」と杉野は2017年を振り返る。

「代表候補に入って、代表合宿も経験できたことで、トップ選手たちの練習も間近で見ることができて、自分の意識も変わった。練習に対する気持ちも変わったし、目標も定まってきた。」という杉野。

フランス国際での金メダルは、「代表に落ちた悔しさもあり、絶対に『杉野はあん馬が強い』と思わせたいという気持ちが強く、狙って獲った金」だと言う。じつは、この大会が初の海外での試合だった。予選には、ゆか、あん馬、鉄棒で出場したが、最初の種目ゆかでは、国内の試合とあまりに勝手が違って舞い上がってしまい、自分の演技ができなかった。が、それも「最初があん馬じゃなくてよかった」と切り替え、あん馬では落ち着いて演技できたことが金メダルに繋がった。その経験は、間違いなくこれからの杉野の財産になる。

全日本団体では、あん馬だけでなくゆか、跳馬、鉄棒などにも出場して、チームに貢献したいと考えている。

「全日本学生選手権でも団体3位に入り、鹿屋には勢いがあると思う。順天堂大、日体大にどれだけ詰めていけるか。」それによっては、表彰台もあり得る、とチーム力には自信をもっている。さらに、「この大会であん馬以外もできるところを見せておきたい。来年の全日本に向けてアピールしたい。」と、自分自身の目標も明確にもっている。

金田浩斗(4年/市立船橋高出身)
金田浩斗(4年/市立船橋高出身)
森近直樹(4年/習志野高出身)
森近直樹(4年/習志野高出身)
中野大貴(4年/れいめい高出身)
中野大貴(4年/れいめい高出身)

今シーズン活躍が目立った前野、杉野のほか、4年の中野大貴、金田浩斗、森近直樹、3年の大村幸輝、2年の大崎斐央利、1年の上田直樹が全日本団体選手権の候補メンバーに名前を連ねている。本番にエントリーできるのは6人だが、「少しでも上」を目指して、8人は一丸となっている。

大村幸輝(3年/清風高出身)
大村幸輝(3年/清風高出身)
大崎斐央利(2年/鯖江高出身)
大崎斐央利(2年/鯖江高出身)
上田直樹(1年/清風高出身)
上田直樹(1年/清風高出身)

4年生で今シーズンはキャプテンを務めていた森近は、「寮の大家さんのためにも、全日本団体ではいい演技をしたい」と言う。

4年前から鹿屋体育大の体操部員が入居している寮は、地元の建築設計士に村田監督が交渉して建ててもらったものだという。森近は、1年のときからこの寮に住んでいるが、全て個室で部屋ごとにバス・トイレもついている。プライバシーは完璧に守られているうえに、1階には共同の食堂があり、なんとサウナもある。食事は朝と夜の2食がつく。

広々した食堂で夕食時も会話が弾む
広々した食堂で夕食時も会話が弾む

「夜、僕たちが練習を終えて帰ってくると、温めるだけになった食事が用意されています。本当に助かります。」

寮母を務めているのは、大家さんの奥様だそうだが、寮母さんが腕を奮う家庭的で栄養バランスもしっかり考えられた食事は、親元を離れて暮らすアスリート男子にはありがたいに違いない。さらに、朝食は、早朝から寮母さんが出勤してきて彼らが登校する前には食べられるように用意されているのだとか。

「以前は大学の寮に住んだり、一人暮らしが多かったんですが、どうしても食生活がおろそかになって故障もしやすかったりして。そこで村田先生が、地元の業者の方の協力を得て、この体操部専用寮が実現できたと聞いています。ここの食事に使う野菜も自家栽培の無農薬野菜だったり、大家さんも試合の応援に来てくれたり、本当に支えてもらっていると感じています。」

まさに「同じ釜の飯」を食べて仲間意識も強まる
まさに「同じ釜の飯」を食べて仲間意識も強まる

現在、体操部の部員は30名。そのうちの23名がこの寮に住んでいる。

練習から帰ってきたら、思い思いのテーブルで、温かい食事を摂る。テレビを見たり、仲間とおしゃべりしたり、食堂に設置されているマッサージチェアでくつろいでいる選手もいた。食事のかたづけは当番制になっていて、当番は手分けして食器を洗う。その手つきは慣れたものだ。

食事のあとかたづけは当番制
食事のあとかたづけは当番制

共用の冷蔵庫の扉には、寮母さんからの伝言が貼られていた。そんな温かい雰囲気からも、おそらく彼らのことを「わが子のように」熱烈応援しているのだろう、と伝わってきた。

意欲満々の選手たちがいて、それを支える人たちがいて。

ここ数年の中でも、上々の充実ぶりで鹿屋体育大学は、全日本団体選手権に挑む。

大学2強に少しでも近づき、社会人チームに食い込み、目指すは2014年(4位)超えだ。

<写真:筆者撮影>