青森大学団体16連覇達成!~第69回全日本学生新体操選手権~

団体・個人合わせて47名の部員全員で16連覇を勝ち取った青森大学

2017全日本学生新体操選手権が終わった。

多くの名演技、名勝負が見られた同大会だが、なんと言ってもハイライトは、

青森大学団体の16連覇達成!

これに尽きるだろう。

しかも、今年は「奇跡の逆転劇」というおまけまでついた。

大会2日目に行われた男子団体予選。

6チーム中4番目に登場した青森大学は、演技終盤の大技「ブランコ」で、かつて誰も見たことのないような大崩れを見せた。連続して行うブランコの序盤でミスが出、この大技がまったく機能しなかった。その瞬間、フロア上に選手たちは立ち尽くした。青森大学がこれまで試合では見せたことなかった大きな綻びが、16連覇のかかったこの大事な場面で出た。

得点は、17.725。

試技順1番で、「さすが青森大学!」と思わせる演技を見せた青森大学NEO(いわゆるBチーム)の17.950よりも低い得点だった。

さらに、予選最後に登場したライバル・国士舘大学は、わずかに小さなミスは見受けられたが、持ち前の美しい演技を存分に披露し、18.350を獲得し暫定首位に躍り出た。

近年では、2010年の青森インカレの際、予選で青森大学に着地のミスがあり、国士館大学と同点だったことがあった。あのときも予選終了後の青森大学の応援席は、水をうったように静まり返っていた。それが今回は、0.625のビハインドで決勝の演技を迎えることになった。

16連覇に黄色信号! 誰もがそう思った。

しかし、冷静に考えてみると、予選の得点は2分の1が持ち点となり、決勝での得点を合計して総合優勝が決まる。

つまり、国士館大学との差は、0.3125。

昨年の大会での、青森大学と国士舘大学の得点差は、全日本学生選手権決勝では1.025、全日本選手権決勝では、0.250。

青森大学が、完璧な演技をすれば、もしくは国士舘大学に少しでもミスが出れば、逆転は不可能ではない。そんな点差だった。

それでも、現在の青森大学の団体メンバーたちは「追う試合」をしたことがない。

「逆転のためには1つのミスも許されない」という状況を経験していない。

そのことが、決勝での演技にどう影響するか。

不安があるとしたらその一点だった。

8月17日。男子団体競技決勝。

競技に先立って行われた公式練習のときから、青森大学には異様なまでの気迫があった。

誰も近寄ることなどできないほどの重さ、厳しさ、そして熱さ。

この土壇場で、彼らは「絶対に負けない!」という思いで、まさにひとつになっているのが感じられた。

フロアにのっている6人と、周囲のサポートメンバーたち、さらには観客席で選手たちを見守っている部員たち。みんなが熱いひとつの塊になっていた。

予選上位3チームの中で最初に演技をするのは青森大学。

とにかくここは、ノーミスでつけいる隙のない演技を見せ、圧倒するしかない場面。

そこで。

青森大学は、見事にやりきった。

練習とおりに、もしかしたら練習以上に。

みんなが知っている「いつもの青大」の強さを見せつける演技だった。

前日は失敗した大技も、なんなくクリア。

命がけとも言えるリスキーでアクロバティックな技なのだが、寸分の狂いなく実施されると、まるで簡単なことのようにさえ見える。

表示された得点は、18.825。

王者・青森大学らしい、いつもの高得点が出た。

続く青森大学NEOも、予選でも素晴らしい演技だったが、決勝ではさらに上げてきた。

いざとなったら自分達が連覇を繋ぐ! そのくらいの思いで彼らはこの決勝に臨んでいたのだろう。得点は、18.125。予選では国士舘大学だけだった18点台にのせた。

そして。

トリで登場した国士舘大学の演技は、これもまた予選を上回る精度だった。

青森大学が「追う立場」を経験していないのと同様、国士館大学も今のメンバーたちは「リードを守る立場」を経験していない。

極度の緊張があるに違いなかった。「勝てるかもしれない」という今までに味わったことのない状況で、いつも通りにやることがどれほど難しいか。

青森大学が完璧な演技をした以上、国士館にミスが出れば0.3125差は簡単にひっくり返る。

そんな中、国士舘大学も演技は攻めに攻めていた。

タンブリングや組みは強く、速く、高く。そして、動きの美しさには、観客が息をのむ。

そして、予選以上にその精度は高かった。

「これは国士舘が逃げ切るかも」

そう思える演技を、彼らはやりきった。

得点は、18.475。決勝での青森大学の得点を超えることはできなかった。

そして、総合は…。

青森大学が、27.6875。

国士舘大学は、27.6500。わずか0.0375差で青森大学が逆転し、この瞬間16連覇を達成した。

0.0375.

「あの一歩が」とか「あのふらつきが」と言える点差ではない。

互角、だったのだ。

予選、決勝ともノーミスでハイレベルな演技で通した国士舘も優勝にふさわしいチームだった。

それでも、予選での大きなミスをカバーして逆転Vをつかめるほどに、青森大学の目指してきた強さが突き抜けていた、ということだと思う。

7月に青森取材に行ったときの中田監督の言葉を思い出す。

「ただ勝てばいいのではない。連覇すればよいのではない。

運動量ひとつとっても他チームの3倍はあると思わせる圧倒的な演技で勝ちたい。

男子新体操の認知が高まってきたのは嬉しいし、広まってきたのもいいことだと思う。

が、その過程で見落とされそうなこと、徒手とはなんなのか? 体操の質とはなにか?

それを知らしめる演技をするのが、青森大学だと思っている。」

どうしてもアクロバティックな大技だけが注目されがちだが、青森大学はそれだけでなく、体操の質、運動量、すべてにおいて「圧倒的な勝ち」を目指していた。

だからこそ、すでに何回も優勝してきた選手達をもってしても、ミスが出る。

インカレまで2週間という段階でも、練習でもがっちりノーミスとは言えない状況にあった。

(↑この動画は、7月28日に青森大学の練習場で撮影したもの。この後、構成に手直しを繰り返し、本番の演技はまた違ったものになっている。青森大学の許可いただき公開する。)

求めるところが高ければ、それだけリスクも増える。

そのリスクが露呈したのが、予選での演技だったのだろう。

そして、そこから逆転できたのは、青森大学がそこまで「圧倒的な強さ」を目指してきたからこそ、なのだ。

16連覇達成という大仕事を終えた団体メンバーの植野洵(4年)に話を聞いた。

「予選後は、中田先生から“やったことは仕方ない。今日という日は二度と帰ってこない。明日は明日。しっかり切り替えて(青大)全員でいくぞ!”と言われました。

おかげでぐっすり眠れたし、がっつり食べられました。びびってはいられないと思ったので。

決勝のときは、今日は今日でしっかり『自分達の団体』をやろうとみんなで話し合いました。決勝の演技は、部員全員と応援に来てくれた保護者や関係者がひとつになれた、と感じました。

今までに経験してきたのと違って、逃げ切ったと思ったし、意地を見せられたな、と思う優勝でした。」

彼らはさらなる高みを目指していく
彼らはさらなる高みを目指していく

16連覇達成で底力を見せた青森大学。

そして、その青森大学を、中田監督をして「しんどかった」と言わしめるところまで追いつめた国士舘大学。

その再戦は、2017年10月26~28日に行われる「全日本新体操選手権」で見ることができる。

今回以上に、熱く、美しい戦いが期待できそうだ。

※参考記事(大会前の青森大学の記事)

<撮影&インタビュー:清水綾子>