動画再生1000万回超えも? 海外での評価高まる男子新体操の底力と正念場

海外のサイトで絶賛された2013井原高校の団体演技

スポーツファンの間では「リオ五輪」の話題でもちきりだ。

マスコミにもWEBメディアにも、五輪関連の話題があふれている。

しかし、五輪種目ではないスポーツには、そんな喧噪は無縁…かと思いきや、このところ、「男子新体操」の周辺が賑やかだ。

「男子新体操」は、日本では女子の新体操と同じくらいの歴史をもちながら、現在のところ、国際化しておらず、日本だけで行われている稀有なスポーツだ。当然、五輪もなければ世界選手権もない。

国内での大会も女子に比べれば極端に少なく、競技人口は近年増加傾向にあるとはいえ、1500人程度と言われている。

かつては国体種目だったが、2008年を最後に国体でも「休止」扱いになっており、厳しい状況に立たされているスポーツなのだが、

そんな窮地にありながら、2010年あたりから、その人気と注目度は徐々に上がってきている。

ひとつの大きなきっかけになったのは、Youtubeで爆発的に再生され、賞賛された2009年青森大学団体「BLUE」の動画だろう。

2009年の全日本選手権で青森大学が団体優勝したときのこの演技は、早逝した先輩への鎮魂の思いを込めた演技という背景もあいまって、多くのメディアでも取り上げられ、この動画によって、シルク・ドゥ・ソレイユも男子新体操を演目に取り入れるようになったとも言われている。

※参考記事「シルク・ドゥ・ソレイユと男子新体操」

ところが、ここにきて、この「BLUE」を上回る勢いで、海外で注目を集めている男子新体操の動画が出てきた。

2013年全日本選手権における井原高校の団体演技だ。

※井原高校2013が紹介されたFacebook

この動画は極めて短期間で1000万回以上再生され、コメント欄は賞賛の声で埋めつくされている。

イタリアで大人気を博した国士舘大学の男子新体操
イタリアで大人気を博した国士舘大学の男子新体操

7月には、国士舘大学の男子新体操部が、イタリアの「Festinal del sole」に出演し、4日間にわたり演技披露を行ったが、これも毎回大変な人気だったそうだ。

最終日に行われたクロージングセレモニーでも、国士舘大学は大トリを務め、フィナーレの花火とともにやんやの喝さいを受けている。

※詳細は国士舘大学新体操部ホームページへ

※クロージングセレモニーの動画

こういった海外遠征は、国士舘大学だけでなく、青森大学も継続的に行っているが(2016年末にもドイツ遠征が予定されている)、いずれも大人気なのだという。

シルク・ドゥ・ソレイユも、今でも2つのショー(「ONE」「Varekai」)で男子新体操を演目に入れており、男子新体操の海外での人気は無視できないものになってきている。

かねてより熱心なファンの間では、「五輪種目に」「早く国際化を」と言われていたが、国内ではなかなか進まないそういった動きを、海外からの評価といういわば外圧が、推し進めることになりそうな勢いは感じる。

この人気ぶりを見る限り、男子新体操の未来は明るい、と思われそうだが、一方で、「競技としての男子新体操」の置かれた状況は決して楽観できるものではない。

町中を歩いていても声をかけられるほどの人気だった
町中を歩いていても声をかけられるほどの人気だった

昨年まで行われていた「全日本シニア選手権(社会人大会)」が、昨年を最後に終了したことにより、毎年、シーズン最後に行われる「全日本選手権」への社会人選手の出場者を決める大会がなくなってしまった。女子の社会人選手には、「全日本クラブ選手権」「全日本クラブ団体選手権」という出場可能な大会があり、そこで上位に入れば、全日本選手権に出場できる可能性はある。しかし、男子にはそういった大会が存在しないため、社会人が全日本選手権を目指す道が閉ざされてしまいかねなかった。

そこで、苦肉の策として、2016年度から「全日本男子新体操クラブ選手権」という大会を新設することになった。社会人選手の「全日本選手権予選」もこの大会に併設し、キッズから社会人まですべての年齢層の選手にとって出場でき、予選なしの「全国大会」という非常に魅力的な大会が創設されたのだ。

※全日本男子新体操クラブ選手権の関連記事

これがうまくいけば、「全日本シニア選手権」の終了というピンチから、大きなチャンスが生まれた、とも言える。

競技としての男子新体操に、もっとも不足している「試合の場」が、こんなに大きな形でできるというのは、男子新体操関係者、そしてファンにも大歓迎されるだろう、と思った。

さらには、これだけの大会はスタートするだけでも大変な労力だが、それを成功させ、持続することにはそれ以上の労力がいる。それでも、これをやっていかなければ、「競技としての男子新体操」は、間違いなく衰退していくと思われるだけに、一丸となって盛り上げざるを得ない状況のはずだ。

しかし、開催時期が、地方大会と重なっている、岐阜開催のため遠征費がかさむなど、さまざまな理由で、出場者の獲得は難航しているようだ。初回から大成功でなくてもいいと思う。しかし、次につなげることができないほどの失敗は、なんとしても避けなければならない。が、そのことが全体にどの程度伝わっているのだろうか、と疑問を感じてしまう。

ここ数年、それぞれの地域で男子新体操の新しい大会がスタートしたり、女子の大会に男子部門が新設されるなど、前向きな取り組みも増えてきていることはたしかだ。しかし、本丸である「日本体操協会」が主催する「全日本社会人男子新体操選手権」、協力に「日本体操協会男子新体操委員会」が名前を連ねる「全日本男子新体操クラブ選手権」の出場者が少なく、失敗に終わるようなことがあれば、「競技としての男子新体操」はその程度のものだ、と判断されてしまっても仕方がない。

昨年はルール改正も行われ、せっかく「競技性」を高めていく動きにもなってきているのに、この大会を成功させられないようでは、男子新体操にとっての「競技の場」は求められていない、と思われかねないのだ。

そうならないためには、すべての男子新体操関係者が、この「男子新体操クラブ選手権」を成功に導くために、自分にできることはなにかないか? と真剣に考え、行動しなければならないと思う。

エントリー締め切りは、7月31日に迫っているが、現状は決して明るい見通しではない。

海外での高い評価を国内の競技普及につなげられるかの正念場を男子新体操は迎えている
海外での高い評価を国内の競技普及につなげられるかの正念場を男子新体操は迎えている

「海外で大人気」なのは、すばらしいことだ。

男子新体操が魅力的なスポーツであるということは、国内外でおおいに認められてきているのだ。

ただ、それを「日本の伝統芸能」的なものにしてしまうのか、「競技」として未来あるものにしていけるのか。

男子新体操は、今、そのターニングポイントに立っている。

<写真提供:国士舘大学/清水綾子>