リオ五輪女子代表候補を懸けた最後の決戦~第70回全日本体操種目別選手権展望

NHK杯4位の内山由綺(左)、5位の笹田夏実(右)

昨年の世界選手権で念願の団体金メダルを獲得し、リオ五輪でも金メダル獲得を! と色めきたつ男子体操の報道が日に日に増えている。

4年前のロンドン、さらにはその4年前の北京五輪の前とは盛り上がり方がまったく別次元に感じる。「金メダルがとれるかもしれない」ではなく、「きっととれる!」となると、こうもマスコミの扱い、世間の注目は違うのか、と思わずにはいられない。

そんな男子の盛り上がりに比べると、さすがに「メダル候補」とまでは言えない女子は、ずい分、冷遇されているように感じてしまう。

が、じつは、日本の女子体操も、このところ昇り調子なのだ。

昨年の世界選手権では団体5位と、前年度の8位を大きく上回る結果を残した。団体だけではない、個人でも村上茉愛(日本体育大学)が個人総合6位、寺本明日香(中京大学/レジックスポーツ)も最終種目の平均台の着地のミスさえなければ入賞だったという厳しい戦いの末の悔しい9位。2014年の世界選手権では寺本18位、笹田20位だったことを思えば、飛躍したと言っていい結果を残している。

さらに、昨年7月に広島で行われたアジア競技大会では、中国を僅差でおさえて団体金メダルを獲得。個人総合でも杉原愛子(朝日生命/梅花高校)が優勝という快進撃を見せたのだ。

「金メダルに一番近い」と言われる男子体操と比べると、メダルには遠く感じられてしまうかもしれないが、女子もリオ五輪での活躍は十分期待できそうなのだ。

そんな女子体操のリオ五輪代表だが、今大会で決定するのは、あくまでも代表候補ということを覚えておいてほしい。

5月のNHK杯での上位3名(寺本・村上・杉原)はすでに決定しているがこれも代表候補であり、今大会終了後に選出される4名と合わせた7名が、「リオ五輪代表候補」として、本番までの間、合宿や試技会を重ね強化され、最終的には7月に強化本部内で検討し、リオに派遣する選手5名を決定するという選抜方法になっている。

一見、まどろっこしいようだが、体操は致命的な怪我を負ってしまうことも多いスポーツで、せっかく代表選手に決まっても本番には間に合わないということがまま起こる。そういったことも含め、代表5名+補欠2名ではなく、「代表候補7名」を選考し、直前にそのときの故障の具合や調子などを考慮して最終決定をするという方法をとったものと思われる。

あくまでも「代表候補」と言っても、候補に残らなければ当然、五輪はないわけで、今大会には、残り4つの「代表候補」の座をめぐる渾身の演技の応酬が期待できる。

残り4人の代表候補のうち3人までは、「NHK杯個人総合12位以内」から選出されることが決まっている。

上位3名を除く9名にチャンスがあるわけだが、その中から候補に選ばれる条件は、

「すでに代表候補に決定している寺本、村上、杉原との組み合わせで最もチーム貢献度が高くなり、2種目以上の貢献が認められる選手」となっている。

男子にも言えるのだが、この「チーム貢献度」というのがなかなかわかりにくい。

今回は算出方法も発表されていないので、なおさらわかりにくいのだが、わかる範囲で、残り4選手に入ってくる可能性の高い選手たちを紹介していこう。

★内山由綺(スマイル体操クラブ)/NHK杯4位※2015世界選手権代表

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段違い平行棒、ゆかで高得点をマークできる力のある内山は、今大会、跳馬以外の3種目にエントリーしている。全日本選手権、NHK杯の段違い平行棒では、上位3選手をも上回る得点をマークしており、代表候補入りが有力視されている。長身でバランスのとれた美しいスタイルは海外でも目を引きそうだ。

★笹田夏実(日本体育大学)/NHK杯5位※2015世界選手権代表

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全日本選手権では9位と出遅れ、五輪出場ピンチかと思われたが、NHK杯では驚異の追い上げを見せ、5位まで順位を上げてきた。平均台では、上位選手を上回る得点力ももっている選手で、今シーズンはミスが続いているが本来は段違い平行棒も強い。今大会は跳馬以外の3種目にエントリーし、五輪切符を掴みにいく。

★河崎真理菜(平塚学園/とらい体操クラブ)/NHK杯6位

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大柄な選手で、段違い平行棒のダイナミックな演技は、はまれば14点台をマークする力がある。今大会はゆか以外の3種目でエントリー。

★畠田 瞳(セントラル目黒/日本大学高校)/NHK杯7位

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今大会は4種目にエントリー。美しい線をもった選手で、4種目に平均した力をもつオールラウンダーだ。

★小池亜優(戸田市スポーツセンター)/NHK杯8位

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脚力があり、跳馬での高得点が期待できる選手。今大会には跳馬、平均台でエントリー。

★梶田 凪(山梨ジュニア体操クラブ/甲斐清和高校)/NHK杯9位

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スレンダーな体型で、軽々とした跳躍を見せる跳馬での得点力が高い。今大会は4種目にエントリー。

★土橋ココ(レジックスポーツ)/NHK杯10位

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中学生のころから、次世代女王の呼び声の高い才能あふれる選手。課題と言われていた表現力にも今シーズンは進化が見られる。今大会は跳馬以外の3種目でエントリー。

★宮川紗江(セインツ体操クラブ)/NHK杯11位※2015世界選手権代表

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昨年の世界選手権では跳馬、ゆかで大暴れ。世界レベルの力をもった選手だが、今シーズンは足の故障があり、全日本、NHK杯と力を出し切れていない。今大会は得意種目の跳馬とゆかだけのエントリーで本領発揮できれば、代表入りの可能性は十分にある。

★佐藤亜希穂(日本体育大学)/NHK杯12位

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全日本では16位と出遅れながら、NHK杯では4種目を最小限のミスでまとめ、12位以内にすべりこむ粘りを見せた。今大会では段違い平行棒とゆかにエントリー。表現力あふれるゆかの演技にはファンも多く、会場が沸きそうだ。

この9名の中から3名が選ばれることになるが、上位3選手を上回る得点を出し得る力のある種目を2つ以上もっている選手となると、段違い平行棒、ゆかの内山、段違い平行棒、平均台の笹田、そして本来の力が出せれば跳馬、ゆかの宮川あたりが有力となりそうだ。

しかし、河崎の段違い平行棒、小池、梶田の跳馬など得意種目での得点力も侮れない。今大会で、もう1種目よい実施が出れば2種目での貢献が期待できると認められる可能性もある。

4月の全日本、5月のNHK杯の結果から言えば、すでに代表候補に決まっている「寺本・村上・杉原」の得点が低めなのは平均台だが、最後の7人目の選手として、平均台のスペシャリスト・湯元さくら(中京大学/なわら体操クラブ)の存在も無視できない。

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2015世界選手権団体決勝でも平均台1種目で出場し、しっかりチームに貢献した湯元。今シーズンは、ミスで順位を下げてはいるが、NHK杯平均台では13.750と復調の兆しを見せている。

湯元は、今大会、平均台とゆかでのエントリー。五輪に向けて平均台では渾身の1本を見せてくれそうだ。

<写真提供:末永裕樹>