第28回ユニバーシアードに見る「日本体操の充実」と「VERNIAIEV Olegの脅威」

団体金に輝いた日本チーム(写真:田村翔/アフロスポーツ)

男女合わせての獲得メダル数はじつに14個。

第28回ユニバーシアードで、日本の体操競技はその強さを見せつけた。

団体金に輝いた男子チームのメンバーは、野々村笙吾、早坂尚人、今林開人(ともに順天堂大学)神本雄也(日本体育大学)、吉岡知紘(セントラルスポーツ)の5名。

五輪でしか体操を見ないような一般の人にとっては、もしかしたら「それ、誰? 内村とか白井は出てないの?」と思われるメンバーかもしれない。

ユニバーシアード個人総合銀メダルの野々村笙吾(順天堂大学)
ユニバーシアード個人総合銀メダルの野々村笙吾(順天堂大学)

今年10月に行われる世界選手権の代表は6人。今回のユニバーシアードのメンバーは、その6人には漏れた選手たちの中から選出されている。

つまり「日本のトップ5」というわけではないのだ。

それでも世界の大学生世代が集まり、競う大会で、団体では2位に3点以上の差をつけての圧勝。

個人総合でも野々村が2位、早坂が4位という結果を出した。

さらに種目別では、ゆかで早坂が金、野々村が銅、あん馬で早坂が銀、平行棒で神本が銀、吉岡が銅、鉄棒で野々村が銀、神本が銅とメダルを量産。

団体が3位に終わり、個人でのメダルも加藤のゆかでの金、鉄棒での田中佑典の銀、加藤の銅の3つに終わった前回大会の雪辱を果たしたと言えるだろう。

ユニバーシアードゆかで金メダルを獲得した早坂尚人(順天堂大学)
ユニバーシアードゆかで金メダルを獲得した早坂尚人(順天堂大学)

昨年の第17回アジア競技大会の体操競技でも男子団体は金メダルを獲得しているが、このときのメンバーは、長谷川智将、神本雄也(ともに日本体育大学)、白井勝太郎(コナミスポーツクラブ)、武田一志(当時日体大→徳洲会体操クラブ)、齊藤優佑、山本雅賢(ともに徳洲会体操クラブ)。こちらも「内村もいなければ、白井もいない」メンバーだった。

全日本選手権では、前人未踏の8連覇を達成、今だ衰えを見せない絶対王者・内村航平(コナミスポーツクラブ)の存在が、同世代、次世代の底上げにおおいに貢献していることは間違いない。

内村抜きのチームでも、様々な大会でメダルを量産してくる、今の日本男子体操の層の厚さ、強さはまぎれもなくホンモノだ。

五輪、世界選手権では2004年のアテネ五輪を最後に、団体金になかなか届かない日本男子体操陣だが、このところ、じわじわと「団体金」に近づいてきている空気はある。

昨年もアジア競技大会での団体金メダルを、内村航平は、「とてもうらやましい」と公言していた。今回のユニバーシアードの団体金も、内村の「団体金」への意欲をいちだんと掻き立てたのではないだろうか。

日本の団体金メダルと、内村航平の個人総合6連覇がかかる第46回世界体操選手権は、10月23日~11月1日、イギリスのグラスゴーで開催される。内村に加え、田中佑典(コナミスポーツクラブ/2014世界選手権個人総合3位)、加藤凌平(順天堂大学/2013世界選手権個人総合2位)、白井健三(日本体育大学/2013世界選手権ゆか優勝)らそうそうたるメンバーが揃う。

さらに、今回のユニバ金メダルメンバーに競り勝って、初の代表入りを決めた長谷川智将、萱和磨(順天堂大学)もいる。(※代表決定までの熾烈な戦いは、こちらの記事を参照のこと)

メダルラッシュに沸くことを期待したいが、日本にとって、ことによっては内村航平にとっても侮れないライバルになりそうな選手が現れた。

2013ワールドカップ東京大会でのOleg選手
2013ワールドカップ東京大会でのOleg選手

今回のユニバーシアードで、日本勢を抑えて個人総合優勝したVERNIAIEV Oleg(ウクライナ)だ。

じつは、このOleg選手、2013年のワールドカップ東京大会で加藤凌平を抑えての優勝も果たした選手だ。

2012年のロンドン五輪では、個人総合11位だったが、2016年のリオ五輪に向けて着々と力をつけてきている。

そんな選手だけに、ユニバーシアードでの優勝だけなら、驚きではないが、見逃せないのが、個人総合決勝でOleg選手がマークした得点だ。6種目合計で92.075。跳馬だけがわずかに15点をわっているが、他5種目はすべて15点台。平行棒では15.900をマークしている(予選の平行棒では16.050とさらに高い得点を出している)。

もちろん、ミスが出れば得点は下がるし、内村に比べたら、まだミスの確率は高い。田中佑典や加藤にとっても手強い相手ではあるが、勝てない相手というわけではない。

しかし、Oleg選手の持ち味である、どこまでも美しい脚のラインは、体操選手の中では日本勢を含めても突出しているように思う。今回のユニバーシアードを見ても、日本の体操は「美しさ」という点では、たいていの国、選手を凌いでいる。そこが現在の日本の強みであることは間違いない。しかし他国の選手達もロンドン五輪のころに比べれば、かなり線が美しくなってきた、とは感じた。そして、Oleg選手にいたっては、「美しさ」でたいていの日本選手を上回っていると認めざるを得ない。

そして、彼がミスなく6種目をまとめることができれば、92点台にのせる力をもっているということが、今回のユニバーシアードで証明された。これは、かなり脅威である。

2012年のロンドン五輪後、採点基準が見直され、跳馬の得点がそれまでよりも出にくくなった。そのため、ロンドン五輪では優勝した内村は92.690。以下、5位までの選手が90点台にのせていたが、2013年の世界選手権では、優勝した内村が91.990、2位の加藤が90.032と90点台は2人にとどまった。

2013ワールドカップ東京大会で優勝したときのOleg選手
2013ワールドカップ東京大会で優勝したときのOleg選手

2014年の世界選手権でも、優勝した内村が予選で92.165と再び92点台にのせてきたが、決勝では、91.965。90点台は上位4人までだった。

今年の4月、全日本選手権の1日目、「とても調子がよかった」という内村は、全種目会心の演技を見せ、92.150をマーク、跳馬での「リーシャオペン」の成功もあり、この得点が現時点での内村のシーズンベストとなるが、ユニバーシアードでのOleg選手の得点は、この内村の得点にかなり迫っている。

ロンドン五輪以降の主だった大会の記録を調べても、92点超えはほぼ出ておらず、内村とこのOleg選手だけのようだ。

伸び盛りとはいえ、2014年の世界選手権個人総合決勝では、90.298で4位のOleg選手が、世界選手権という大舞台で、今回のユニバーシアード並みのパフォーマンスを見せることができるかどうかはわからない。が、もしも、それができたならば、内村航平にとっては「戦いがいのある相手」となるに違いない。

10月に行われる世界選手権では、日本選手たちの活躍とともに、VERNIAIEV Oleg選手が、絶対王者・内村にどこまで食らいつけるか、にも注目したい。

写真提供<大塚達也/末永裕樹/アフロスポーツ>