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販売台数が急増した「プレステ5」 ついに躍進の一年が到来か

鴫原盛之ライター/日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表
※写真はイメージ(写真:ロイター/アフロ)

SIEのゲーム機「プレイステーション5(※以下、PS5)」は、2020年11月の発売以来、その人気とは裏腹に日本国内への出荷台数が極端に少なく、店頭やネット通販を問わず抽選での販売が中心のため、入手が難しい状況が続いている。

昨年9月に、同社のジム・ライアン社長はPS5の生産を大幅に拡大する方針を明らかにした。だが、筆者はそれ以降も店頭で販売しているところをまったく見た試しがなく、ネット上では相変わらず本体の転売が横行しており、増産した実感はまるでなかった。

12月に同社が開催したイベント「PlayStation Partner Awards」でも、ライアン社長は「この年末商戦から、2023年に向けて多くの日本とアジアのお客様へお届けできることを皆様にご報告させていただきます」などとコメントしていた。

それでも筆者は、ゲーム・エンタメ系のニュースサイトで「○○店で○日からPS5の抽選販売を開始」などと見出しを付けた記事の掲載が、すっかり「日常」と化した状況から鑑みて、その発言は一切信用できなかった。

だが、明けて2023年、ついに慢性的な品不足にピリオドが打たれることになるかもしれない。その根拠は、ほかでもない筆者自身が、昨年暮れに2年越しの念願がかない、ようやくPS5を購入できたからだ。

(参考サイト)

・「ソニーG、部品不足改善でPS5大幅増産 PCやモバイル向けゲーム拡大」(ロイター)

・プレイステーションの2022年を盛り上げたタイトルとクリエイターに感謝を! 「PS Partner Awards 2022」レポート(PlayStation.Blog)

筆者が2年がかり購入したプレイステーション5(の”グランツーリスモ7”同梱版)
筆者が2年がかり購入したプレイステーション5(の”グランツーリスモ7”同梱版)

「PS5」購入までの顛末

筆者がPS5を買えたのは、某量販店の抽選販売に当選したからである。PS5の発売以来、筆者は通販サイトでは注文ページに進めるどころか注文ボタンすら押せた試しがなく、あちこちの量販店で不定期に実施している抽選にも、応募しては落選を繰り返す日々が延々と続いていた。

ついでに言えば、ただPS5を買うだけのために、応募した各店舗にできることなら差し出したくない、個人情報を毎回せっせと入力するのも正直、苦痛でしかなかった。(あの迷惑極まりない、転売ヤー対策のためにはやむを得ない面もあるだろうが)。

ならばと町中にあるゲームショップに寄っても、本体に一度たりともお目にかかれない状況はまったく同じ。また「本家」ソニーのソニーストアでは、昨秋あたりから各店で抽選販売の頻度が増えた感があり、こちらもいずれはチャレンジしようと思っていた。

しかし、ソニーストアの抽選券は予約なしで入手できるものの、もし当選しても本体を購入できるのは当日限り。筆者の自宅は店から遠いこともあり、抽選券を配布する日中と、当選発表後の夕方に続けて足を運べる時間がまったく調整できず、抽選に参加したくてもできない、歯がゆい思いがずっと続いた。

実は昨年11月、都内近郊を移動中にたった一度だけ、PS5を「緊急入荷」していた某量販店の前を偶然通り掛かったことがあった。ところが、そこで本体を購入するためには、店と提携したクレジットカードを使うのが条件であり、該当するカードを持っていなかった筆者は、またも絶望の淵に叩き落された。

さらに昨年9月には、SIEが「困難な経済情勢の影響」などを理由に、あろうことかずっと買えない間に本体価格の値上げを実施する大惨事にも見舞われた。ただでさえ、幼い頃からクジ運の無さを自覚している筆者の購入モチベーションは大きく低下し、もし年内に買えなければ、新品で本体を買うのは一生あきらめようと思っていた。

そんな年末のおり、ふと届いた当選メールは、まさに僥倖(ぎょうこう)以外の何物でもなかった。

筆者私物のプレイステーション5本体
筆者私物のプレイステーション5本体

クリスマス商戦を迎えるタイミングで劇的に好転

やっとの思いで筆者がPS5を購入したのとほぼ同じ頃、先月の23~24日にかけて「PS5の在庫あります」と掲げていた量販店を、都内近郊で立て続けに目撃した。筆者の知人から「本体を買えた」との連絡が入る機会も、先月から明らかに増えた感がある。

クリスマス明けの27日にも同じ店に行ってみたら、まだ本体の在庫が残っていたので大いに驚かされた(※ただし、デジタル・エディションは完売していた)。さらに同日、2件の通販サイトで本体の「新品購入」のボタンを押し、カートに入れられる状態であったことも確認できた。

PS5の供給量増加は、単なる筆者の私見ではなく、きちんと数字にも表れている。

「ファミ通.com」の「ソフト&ハード週間販売数」によると、12月12~18日の期間で、本体の推定販売台数(※デジタル・エディションも含む)は70,496台。12月5~11日の推定販売台数は18,822台だから、前週比で実に3倍以上も売れた、すなわち出荷数も増えていた。本稿の執筆時点で最新のデータとなる、12月19~25日の推定販売台数も、前週とほぼ同じ68,819台であり、SIEがまさに有言実行を果たしたことになる。

またネット界隈でも、正月明けから「初売りに行ったら購入できた」との書き込みをかなり見掛けるようになった印象を受ける。おそらく、次回の「ファミ通.com」をはじめ、各調査機関のPS5販売台数は昨年末と同等か、それ以上の数字になるのではないかと思われる。

2020年のPS5発売当時の量販店
2020年のPS5発売当時の量販店写真:ロイター/アフロ

(参考リンク)

・【ソフト&ハード週間販売数】『ポケモンSV』が6週連続で首位を獲得! 『マリオカート8 デラックス』の累計販売本数は500万本を突破【12/19~12/25】(ファミ通.com)

「躍進の一年」になることを期待

2年遅れのPS5デビュー(※取材で何度か触った経験はあるが)となったが、ゲームのプレイに応じて揺れたり引っ張られたり、あるいは周囲の落下物の位置までもが手のひらに伝わったりする体験は、実に新鮮だった。

PS5用ワイヤレスコントローラー「DualSense」ならではの機能を生かした、画面写真や動画を見ただけでは伝わらない楽しさを、今さらながら少しでも多くの人に体験してもらいたいなと素直に思った。

ただし、販売台数が大幅に増えたとはいえ、多くの店舗では抽選販売を継続しており、簡単に入手できるとは言えない状況が依然として続いている。量販店やゲームショップでは、PS5よりもPS4コーナーのほうが広い光景も2020年から変わりはない。

転売対策などの厄介な問題は残っているだろうが、今後もSIEにはどんどん出荷、販売台数を増やして、ゲームファンからの「SIEは、日本市場を軽視するようになった」などといった批判を、ぜひ吹っ飛ばしていただきたい。

明けて2023年。年末を迎える頃には「ようやくPS5躍進の年になった」と、多くの人が実感する一年になることを心から願っている。

PS5にプリインストールされているゲーム「アストロプレイルーム」のチュートリアルより。「DualSense」ならではのさまざまな機能を体験できる
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(C)2020 Sony Interactive Entertainment Inc. Astro’s Playroom is a registered trademark or trademark of Sony Interactive Entertainment LLC.

ライター/日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表

1993年に「月刊ゲーメスト」の攻略ライターとしてデビュー。その後、ゲームセンター店長やメーカー営業などの職を経て、2004年からゲームメディアを中心に活動するフリーライターとなり、文化庁のメディア芸術連携促進事業 連携共同事業などにも参加し、ゲーム産業史のオーラル・ヒストリーの収集・記録も手掛ける。主な著書は「ファミダス ファミコン裏技編」「ゲーム職人第1集」(共にマイクロマガジン社)、「ナムコはいかにして世界を変えたのか──ゲーム音楽の誕生」(Pヴァイン)、共著では「デジタルゲームの教科書」(SBクリエイティブ)「ビジネスを変える『ゲームニクス』」(日経BP)などがある。

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