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やっぱり「マリオ」はすごかった ファミコンソフト出荷本数ランキング

鴫原盛之ライター/日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表
※写真はイメージ(写真:ロイター/アフロ)

1983年に任天堂が発売し、出荷台数が1935万台(※出典:「CESAゲーム白書」)という爆発的な人気を博したファミリーコンピュータ。最も売れた「スーパーマリオブラザーズ」を筆頭に数々の名作が登場し、いまだに多くのゲームファンから愛され続け、SNSや動画投稿サイトを日々賑わせているのは驚異的としか言いようがない。

CESA(一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会)が毎年発行している「CESAゲーム白書」によると、歴代ナンバーワンのセールス記録を長らく保持していたゲームソフトは、今月の13日に発売36周年を迎えた「スーパーマリオブラザーズ」の681万本(※注)であったが、Nintendo Switch用ソフト「あつまれ どうぶつの森」が、その記録を先日ついに更新した(※出典:「ファミ通」ゲームソフト販売本数ランキング。2021年9月5日までの集計で687万2733本)。

「スーパーマリオブラザーズ」の発売は1985年。およそ35年もの間、最多記録がずっと破られなかったのだから、本作の人気がいかにすごかったかがおわかりいただけるだろう。

※筆者注:ゲームボーイ用ソフト「ポケットモンスター」のシリーズ第1弾「赤」「緑」をはじめ、「青」「ピカチュウ」「金」「銀」「クリスタル」の出荷本数を合計すると約2300万本となるが、個別の数字は未集計のため単独での本数は「スーパーマリオブラザーズ」がトップとなる。

長年にわたり最高セールス記録を保持していた「スーパーマリオブラザーズ」(※筆者撮影。以下同)
長年にわたり最高セールス記録を保持していた「スーパーマリオブラザーズ」(※筆者撮影。以下同)

今でもネット上で多くの話題を集める一方、発売から長い年月が経過したせいなのか、エンタメ系のニュースサイトも含め、ネット界隈では誤った情報がかなり伝播されるようになった感がある。

ソフトの出荷、あるいは販売本数もまたしかりで、筆者が知る限りでは100万本を超えたとのメーカー発表や報道を一度も見たことがないタイトルを、いったいどこで調べたのか、「ミリオンセラー」と書いてしまうメディアも散見される。

以下、本稿では「CESAゲーム白書」に掲載された「国内歴代ミリオン出荷タイトル」の数字を引用し、ファミコン用ソフトのタイトル別出荷本数ランキングを改めて紹介する。

ファミコンソフト出荷本数ベスト10:全タイトルが200万本超え

「CESAゲーム白書2018」によると、出荷本数のベスト10は以下のとおりだ。

「CESAゲーム白書2018」をもとに作成
「CESAゲーム白書2018」をもとに作成

「スーパーマリオブラザーズ」の出荷本数が突出している。本作は、主人公マリオを操って跳ぶ、踏む、蹴る、泳ぐなど多彩なアクションができるだけでなく、豊富な敵キャラとステージ数、ビジュアルの美しさ、優れたサウンド、そして数々の裏技の存在など、そのすべてが衝撃的であり、発売直後から人気沸騰。ファミコン本体の売上にも大きく貢献した(※注)。

しかも、ベスト10のうち「スーパーマリオ」シリーズが3タイトルを占め、すべて合わせると1300万本を超えるのだからすごい。

※筆者注:「情報メディア白書2000」によると、ファミコン本体の出荷台数は1985年が374万台で、ピークとなった1986年が390万台である。

大人気を博し、マスコミでもたびたび取り上げられて社会現象になったRPG「ドラクエ」シリーズは、ファミコン用ソフトとして発売された4タイトルのうち、初代をのぞく3タイトルがランクインしている。なお、初代「ドラクエ」の出荷本数は150万本だ。

ちなみに、「ドラクエ」と並び称される「FF」こと「ファイナルファンタジー」シリーズは、ファミコンで発売されたシリーズのなかでは「ファイナルファンタジーIII」だけがミリオンセラー(140万本)となったが、ベスト10にはかすりもしない(それでもすごい数字だが……)。

もっとも「FF」は「ドラクエ」ように、すぎやまこういち氏や鳥山明氏など、ゲームファン以外にも著名な外部スタッフを多数起用したわけでもなく、発売前にメディアを通じて大々的なプロモーションも実施していなかったので、その前評判は「ドラクエ」とは比較にならないほど低かった。よって、本数が「ドラクエ」に遠く及ばなかったのは、いたしかたない面はあるだろう。

ファミコンで出たシリーズ作品のなかでは最も売れた「ドラゴンクエストIII」
ファミコンで出たシリーズ作品のなかでは最も売れた「ドラゴンクエストIII」

もうひとつの注目したいポイントは、スポーツゲームがベスト10に3タイトル入っていることだ。

「ゴルフ」の出荷本数は、1997年にプレイステーション用ソフトとして発売され大人気を博した、あの「みんなのGOLF」の213万本をも上回る。野球ゲームの代名詞ともなった、10位の「ファミスタ」こと「プロ野球 ファミリースタジアム」よりも、「ベースボール」のほうが売れていた事実にも改めて驚かされる。

また、実は11位のタイトルは198万本の「バレーボール」で、ほかにも「テニス」が156万本、「サッカー」が153万本を記録している。「ファミスタ」シリーズも、第2弾の「ファミスタ'87」は130万本、第3弾の「ファミスタ'88」は109万本で、当時のスポーツゲーム人気の高さがうかがえる。

実は235万本も売れていた「ベースボール」(※Nintendo Switch Online版を使用)
実は235万本も売れていた「ベースボール」(※Nintendo Switch Online版を使用)

9位の「麻雀」は、ファミコン本体とほぼ同時期の1983年8月27日に発売(※本体の発売日は同年7月15日)された。「CESAゲーム白書2018」には、本作よりも上位にランクインした麻雀ゲームの記載がないことから、本作は現在までに最も売れた麻雀ゲームであり、なおかつ最古のミリオンセラータイトル(※本書の集計対象となる、1983年以降に発売されたタイトルに限る)となる。

ファミリーコンピュータには「ファミリー」の名称を含むことから、発売当初から子供だけでなく大人もターゲットにしていたことは明白だが、その狙いが見事に成功したことは、「麻雀」や「ゴルフ」の出荷本数が如実に証明しているように思われる。

ミリオンセラーとなった最古のタイトルが「麻雀」だ
ミリオンセラーとなった最古のタイトルが「麻雀」だ

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

ライター/日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表

1993年に「月刊ゲーメスト」の攻略ライターとしてデビュー。その後、ゲームセンター店長やメーカー営業などの職を経て、2004年からゲームメディアを中心に活動するフリーライターとなり、文化庁のメディア芸術連携促進事業 連携共同事業などにも参加し、ゲーム産業史のオーラル・ヒストリーの収集・記録も手掛ける。主な著書は「ファミダス ファミコン裏技編」「ゲーム職人第1集」(共にマイクロマガジン社)、「ナムコはいかにして世界を変えたのか──ゲーム音楽の誕生」(Pヴァイン)、共著では「デジタルゲームの教科書」(SBクリエイティブ)「ビジネスを変える『ゲームニクス』」(日経BP)などがある。

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