Yahoo!ニュース

【2021.9/4版】妊産婦を含む女性の方へ 信頼できる新型コロナウイルスの情報まとめ

重見大介産婦人科専門医 / 公衆衛生学修士 / 医学博士
(写真:アフロ)

日本でも、デルタ株の出現によって感染拡大に拍車がかかっている新型コロナウイルス感染。

2021年9月3日時点で、国内の累積感染者数(PCR検査陽性者数)は150万人を超え、死亡者数は1万6千人を超えました。(文献1)

ただ、ワクチン接種も急速に進んでおり、ワクチンの累計接種回数は2021年9月2日時点で1億3305万回となっています。これは、総人口の約47%にあたり、2回の接種が完了した人も5959万人に達しています。(文献2)

世界各国で妊産婦の感染事例が増加している

このような中で、海外では妊産婦の感染報告が増加しています。

また、その多くはワクチン未接種者であることがわかってきています。

なお、英国から2021年7月末に出された調査報告では、妊娠中のコロナウイルス感染で入院した妊婦(約150名)のうち、

・ワクチンを2回接種済みの妊婦はゼロ

・1回接種後の妊婦が3名のみ(2%)

・98%は未接種者

だったことが示されています。

(文献3、4)

なお、妊娠中、特に妊娠後期(28週以降)でのコロナウイルス感染は、母体の重症化(集中治療室への入室など)だけでなく、早産のリスクが増加することがわかってきています。

そして、早産は産まれた赤ちゃんの健康状態に最も大きく影響するため、早産によるさまざまな合併症が増えていることが報告されています。

参考:「妊娠中に新型コロナウイルスに感染すると、産まれた赤ちゃんにはどんな影響があるの? 産婦人科医の解説」

信頼できる情報源はどこにあるの?

このように、妊産婦を含む女性のみなさんにとって、以下のような心配や不安を抱くことは当然でしょう。

・コロナワクチンは将来の妊娠や不妊に影響はない?

・妊娠初期に接種しても大丈夫?

・妊娠中の接種で赤ちゃんに影響はあるの?

・授乳中に接種しても母乳をあげられる?

・子宮や卵巣、月経状態に問題は生じない?

これらの疑問に対する科学的根拠に基づいた回答・情報は、すでに国内外から発信されています。

しかし、ご自身で情報を探すのは大変ですし、信頼できる情報源がどれなのかを判断することは簡単ではないかもしれません。

そこで、国内外の公的機関や専門学会などから出されている「妊産婦を含めた女性向けの新型コロナウイルスに関する情報源」をまとめました。

ぜひ、情報を探す際に参考にご活用ください。

日本国内の情報源

(1)厚生労働省

最近では、厚生労働省のページにも、わかりやすいQ&A形式の情報が掲載されています。

・Q&A. 「私は妊娠中・授乳中・妊娠を計画中ですが、ワクチンを接種することができますか。」

不妊になるって本当?妊娠中でも大丈夫?女性のための新型コロナワクチン(mRNAワクチン)解説(2021.9/3)

(2)各種専門学会

産婦人科や小児科に関連した学会からも、海外の動向や研究報告も踏まえた通知や見解が出されています。

産婦人科関連学会による妊娠中のコロナワクチンに関する合同のお知らせ(2021.8/14)

日本産科婦人科学会. 新型コロナウイルス感染で妊娠中に自宅や宿泊療養(ホテルなど)となられた方へ.(2021.8/23)

日本小児科学会. 現在の新型コロナウイルス感染流行下での学校活動について.(2021.8/26)

日本小児科学会. 新型コロナワクチン~子どもならびに子どもに接する成人への接種に対する考え方~.(2021.9/3改訂)

(3)国立成育医療研究センター

国立の代表的な周産期センターです。

ワクチン情報のほか、副反応への解熱剤使用についてもわかりやすく説明してくれています。(*)

また、主な候補治療薬の妊娠中の安全性についても記載されています。(**)

妊娠・授乳中の新型コロナウイルス感染症ワクチンの接種について.(2021.8/24更新)*

妊婦さんの新型コロナウイルス感染症について - 母性内科と妊娠と薬情報センターより -.(2021.8/4更新)**

海外の情報源

(1)米国CDC

世界中が参考にしている米国の感染症研究機関です。

妊産婦のワクチン接種に関する大規模なデータも保有し、2021年8月には「妊娠中の女性へもコロナワクチン接種を改めて推奨する」と述べています。

2021年8月30日時点で、ワクチンを妊娠中に接種した15万5千人の女性が登録され、5100人の接種済み妊婦のレジストリ調査が進行中です。

COVID-19 Vaccines While Pregnant or Breastfeeding.(2021.8/11更新)

V-safe and Registry Monitoring People Who Report Pregnancy.(2021.8/30更新)

(2)米国産婦人科学会(ACOG)

米国の産婦人科専門学会です。

とても積極的に一般の方向け、そして医療者向けの情報を発信しています。

CDCと同様に、妊婦や授乳婦、そして将来妊娠を考えている女性へのワクチン接種を推奨しています。

COVID-19 Vaccination Considerations for Obstetric–Gynecologic Care.(2021.7/30更新)

ACOG and SMFM Recommend COVID-19 Vaccination for Pregnant Individuals.(2021.7/30更新)

(3)英国NHS

英国の国営国民保健サービスです。

16歳以上の(妊産婦を含む)全ての女性でワクチン接種が可能と明記しています。

なお、英国ではすでに5万人以上の妊婦がワクチンを接種していると報告されています。

Coronavirus (COVID-19) vaccines.(2021.8/19更新)

Pregnancy, breastfeeding, fertility and coronavirus (COVID-19) vaccination.(2021.8/19更新)

*本記事の内容は2021.9/4時点で得られた情報に基づいています。日々更新される可能性があるため、なるべく最新情報を確認してご参照ください。

参考文献:

1. 厚生労働省.

2. 日本経済新聞.

3. Bloomberg. Pregnant, Unvaccinated and Intubated: Case Surge Alarms Doctors.

4. NHS. Chief midwife urges pregnant women to get NHS COVID jab.

産婦人科専門医 / 公衆衛生学修士 / 医学博士

「産婦人科 x 公衆衛生」をテーマに、女性の身体的・精神的・社会的な健康を支援し、課題を解決する活動を主軸にしている。現在は診療と並行して、遠隔健康医療相談事業(株式会社Kids Public「産婦人科オンライン」代表)、臨床疫学研究(ヘルスケア関連のビッグデータを扱うなど)に従事している。また、企業向けの子宮頸がんに関する講演会や、学生向けの女性の健康に関する講演会を通じて、「包括的性教育」の適切な普及を目指した活動も積極的に行っている。※記事は個人としての発信であり、いかなる組織の意見も代表するものではありません。

重見大介の最近の記事