貧困支援だけじゃない「こども食堂のカタチ」とは 大阪・西成区で3か所の食堂に密着

こども食堂で夕食をとる子ども達と仕事帰りの母親(にしなり☆こども食堂)

こども食堂のこれまで

 近年、頻繁にメディアに登場する「こども食堂」は、子どもが一人でも利用できる無料、もしくは低額の食堂とされており、2016年時点で全国約300か所だったこども食堂は、2018年現在、2289か所にまで広がりをみせている(※1)。子どもの7人に1人が相対的貧困状態(※2)、その数約280万人とされる中、こども食堂は「子どもの貧困支援」という一面が強調されてきたが、その多くは民間主体であり、取り組みは様々だ。高い子どもの貧困率を示す大阪市西成区(※3)にある3か所のこども食堂を取材すると、子育て支援や、子どもと地域住民による交流など、様々な役割・一面が見えてきた。

各こども食堂の特色

 「にしなり☆こども食堂」は、地域の児童館などで働いてきた川辺康子さんが、生活環境などが気になる子ども達と出会い、2013年に開設された食堂だ。主に週4日開催されており、子どもも大人も無料で利用できる。食事の時間以外にも子ども達は訪れ、遊んだり宿題をしたり、大学生などのボランティアも広く受け入れ、学習支援なども行われている。利用者は主に、地域の一人親や共働き世帯の子どもとその保護者。基本的に利用条件は川辺さんと保護者との面談が可能なこと。ここでは子どものみではなく、保護者も顔が見える関係性を重視する。地縁の薄い一人親家庭からの、「仕事や他出のため保育園の送迎が難しい」、「週末も仕事が入ったため子どもを預かってほしい」などのニーズにも可能な限り柔軟に応え、支える。

大学生にテスト勉強を見てもらう中学生。いまいちルールの分からない将棋で盛り上がる小学生(にしなり☆こども食堂)
大学生にテスト勉強を見てもらう中学生。いまいちルールの分からない将棋で盛り上がる小学生(にしなり☆こども食堂)

西成区では区内全ての中学校区に要保護児童対策地域協議会(以下、要対協)(※4)を設置するという、全国的にも類を見ない取り組みがなされており、川辺さんは当該校区の要対協に出席し、子ども達と接する機会の多い学校や保育園、医療関係者、自治体職員などとも連携しながら、子ども達やその家庭を地域で見守る。また、「にしなり☆こども食堂」近辺の6つの小中高校とも、「西成教育サポート6校連絡会」という形で連携し、子ども達の生活や地域の安全などを話し合っている。学校などがなかなか関係性を構築出来ない家庭に対しても、緩やかな繋がりの場であるこども食堂を通じて関係性が生まれてくるケースもあるという。

また、川辺さんはこども食堂間でのネットワーク化にも力を入れており、NPOを立ち上げ、食堂内に「こども食堂ネットワーク関西」の事務局を置き、集まってくる食材などを他のこども食堂におすそ分けしたり、立ち上げ間もないこども食堂にアドバイスもする。

「こども食堂ネットワーク関西」事務局を併設し、食材を他のこども食堂におすそ分けする(にしなり☆こども食堂)
「こども食堂ネットワーク関西」事務局を併設し、食材を他のこども食堂におすそ分けする(にしなり☆こども食堂)

 

 「こもれびカフェ えほんとごはん」(以下、こもれびカフェ)は毎週金曜日、16時30分から20時まで開催されており、食事を終えた子ども達は思い思いに遊び、保護者たちは地域の様々な情報交換や、育児の話などをしながら過ごす。代表の四宮博子さんは、地域で行われたこども食堂の講演会でその存在を知り、保育士として勤めた経験を活かしながら、子育てをする親のサポートがしたいと考え、昨年自宅を開放し、個人でこども食堂を始めた。

「この絵本のそらまめくんはこれのことだよ」と説明する四宮さん(こもれびカフェ)
「この絵本のそらまめくんはこれのことだよ」と説明する四宮さん(こもれびカフェ)

こもれびカフェの料金設定は子ども100円、大人400円。保育士時代から食育に力を入れていた四宮さんは、寄付などの食材も使いながら、なるべく旬の、体に良いものを提供したいという思いを持つ。また、これまで培ってきた保育、療育などの経験を活かし、保護者から寄せられる様々な相談にも対応する。保育園などでなかなか相談する時間が取れずにいる保護者の強い味方にもなっており、こども食堂というよりは「子育てサロン」の色合いが強いかもしれないと本人は話す。

オープンから約1年のこもれびカフェ。地域住民のボランティアにも支えられ、近隣の児童館や公民館などとも繋がりを持ちながら、利用する人たちと地域とのハブにもなってきている

各食堂で見られた光景。多世代、異年齢で繋がりが持てるのもこども食堂の大きな魅力(こもれびカフェ)
各食堂で見られた光景。多世代、異年齢で繋がりが持てるのもこども食堂の大きな魅力(こもれびカフェ)

 

 「永信食堂」の特色は、地域から提供された広いスペースに、子どもから高齢者まで100人近い人が訪れるという点だ。毎月第1第3水曜の18時から20時に開催されている永信食堂は、地域で35年間活動する児童館「山王こどもセンター」(以下、こどもセンター)により運営されている。長年、学童保育を中心に、地域の子ども達の遊び場として機能しているこどもセンターは、時に様々な家庭相談を受け、支援をしながら、こどもセンターを巣立つ障がい児のための、就労継続支援B型事業所「山王おとなセンター」を開設するなど、様々な活動を行っている。

仲良しグループで訪れるという地域の人たち(永信食堂)
仲良しグループで訪れるという地域の人たち(永信食堂)

施設長の前島麻美さんは、こどもセンターを利用する子ども達はもとより、社会に出た子ども達や、忙しく育児をする保護者の助けになればと思い、こども食堂を始めたと話す。コンセプトは「お腹をすかせてふらっと来た子が、気軽にご飯を食べられる場」だ。

料金は子ども無料、大人は10円からのカンパ制。開設前はこの広いスペースにどれだけの人が来るのか不安だったと言う前島さんだが、始めてみると毎回訪れる人が増え、こどもセンターの利用者に限らず、地域住民や近隣で働く人、地域的に日雇い労働者など不安定就労層の人も多く、近年では外国人旅行者も増えたため、多様な人々が永信食堂を利用している。また、永信食堂に訪れた子どもが、その後こどもセンターを利用するようになるといった、新たな出会いの場にもなっている。

こども食堂での様々な人との交流は、子ども達の世界観を広げてくれると話す前島さん(永信食堂)
こども食堂での様々な人との交流は、子ども達の世界観を広げてくれると話す前島さん(永信食堂)

こども食堂の有用性

 各こども食堂を訪ねて感じた事は、子ども達の年齢層の幅広さだ。小学生が乳幼児を抱っこしたり、高学年の子が年少の子と遊んだり、世話をしたりと、自分とは異なるモノ(能力・生活環境など)を持つ他者との触れ合いは、子どもにも大人にも、自分の触れた事のない世界を発見させると同時に、多様な価値観を共有する事が出来るのではないかと思う。また、自分が居てもいいんだと思える安全安心な場で、食事をしたり遊んだり、誰かに受け入れられたりする経験は、子ども達の情緒の安定にも繋がっているよう見受けられる。

 利用する保護者からは、「経済的に助かっている」という声から、「家事、育児、仕事をする中で、食事のことを考えなくていい日があるのはありがたい」、「保育園の送迎などで他の保護者に会っても、お互いに忙しい事は分かっているからゆっくり話せない」、「みんなで食事をしながらするおしゃべりが息抜きになる。お店などでは〈家事の手抜き・ちゃんとした母親像プレッシャー〉から、気持ち的に落ち着かない」という声など、多数の意見を聞くことが出来た。保護者にとっても、こども食堂で束の間の休息を取ることは、また新たに育児や仕事に向き合うモチベーションとなっているようだ。

隣りの部屋で遊ぶ子ども達を見守りつつ、保護者は息抜きの時間(こもれびカフェ)
隣りの部屋で遊ぶ子ども達を見守りつつ、保護者は息抜きの時間(こもれびカフェ)

 生活スタイルや価値観の多様化により地縁が薄れ、核家族化が進み、共働きや一人親世帯が増える中、こうした休息の場は、保護者の孤立や心の安定といった面でも有用だ。子どもが傷つき、犠牲になる虐待事案が連日のように報道される中、保護者も安心して休息出来る場の必要性も考えないとならない。保護者が心身ともに安定を崩せば、その影響はそのまま子どもに向かう

大人は有料?自己責任論について

 保護者の休息という話の続きになるが、「にしなり☆こども食堂」では大人からも料金を取らない。しかし、代表の川辺さんが色んな所に支援のお願いに行った際、時折言われるのが、「大人からは料金を取りなさい。自分のせいでそうなったんだから甘やかしてはいけない」という言葉、いわゆる自己責任論だ。これに対し川辺さんは、自らの育児期の事を引き合いに出し、「私は疲れてたまに実家へ帰ると、何もしなくてもご飯が出てきて、黙っていても後片付けをしてもらえた。このわずかな休息の時間が、明日からも頑張ろうという気持ちを引き出してくれた。私はたまに食事を提供してもらい、一息つくことが許されるのに、同じように育児や仕事で疲れている保護者に食事を提供する事がなぜ許されないのか」と話すそうだ。

社会が持つ、こども食堂や利用者に対しスティグマとなるイメージを変えていく事も重要と語る川辺さん(にしなり☆こども食堂)
社会が持つ、こども食堂や利用者に対しスティグマとなるイメージを変えていく事も重要と語る川辺さん(にしなり☆こども食堂)

 こども食堂有識者で、今回の取材に応じてくれた湯浅誠さん(※5)は、発信者でもある自身の事も含め、半ば自虐的に「自己責任論の根強いこの社会で、それでもこの相対的貧困状態をなんとかしようという社会合意を形成するため、きれいな貧困、非の打ちどころのない貧困を打ち出してきた経緯がある。そうでないと、メディアなどに登場する当事者が世間から非難され、二次被害を被ってしまうからだ」と語った。また、現在の社会は、「社会が許容できる枠」の中での貧困、5歳児がティッシュをなめて甘いと言ったなど、非の打ちどころのない貧困しか認めない社会であるということを指摘し、相対的貧困状態の高校生がスマホを持っているという状況は、「何が貧困なんだよ」と認めない。でも、そこまで含めてなんとかしようって、日本社会も法律作って合意をしているんですということを積極的に示しつつ、「社会が許容できる枠」を広げていくことが重要とも語ってくれた。

こども食堂に関する記事を多数執筆している湯浅さん
こども食堂に関する記事を多数執筆している湯浅さん

他者を想像すること

 これは私の個人的な考えだが、今時、生活は苦しくてもスマホぐらいは持ってないと、学校などで友達の輪に入りづらくなるかもしれない。だが、そこから起因して孤立を生む可能性があることは、この社会の多くの人は感知しない。想像が及ばない。

子どもは様々な環境で生まれ育つ。家庭が経済的に苦しかったり、保護者が精神的に安定していないこともあるだろう。そんな中、家庭や学校などで悩みを抱え、それを誰にも相談できず、理解してもらえずに苦しむ子もいるだろう。そんな「しんどさ」を抱えた子が、そのしんどさを理解し、受け止めてくれる「誰か」との出会いが無い中で育つと、どんな大人になるかはある程度想像がつく。そして、非難されない子ども時代を経て、大人になると急に自己責任という社会の批判の下にさらされる。そんな社会を誰が信用し、心許せるだろうか。しんどさを抱え続け育った〈元・子ども〉が、もしもこども食堂のような社会資源で、出会うべき大人と出会えていたらと考えた時、「自己責任だけではない、社会で共有すべき責任(考えなければならない事)がある」と私は感じる。

こども食堂のこれから

 一緒はめんどくさい、けど一緒は楽しいという事も子ども達に伝えられればと、取材の最後に「にしなり☆こども食堂」の川辺さんは話してくれた。

日本社会はコミュニティが持つしがらみや人間関係などを切り捨ててきたし、実際に負の側面もあった。そんな事を半世紀近くやってきた中で、会社やコンビニ以外でもう何日も人と話してないというような状況にもなってきた。そんな中、意識的にも無意識的にも、「もう少し人と接点を持ちたいな」と折り返してきており、その中で地域コミュニティというものも注目されてきていると、前出の湯浅さんは分析する。

 多くの人の善意で生まれ、支えられているこども食堂は、民間が持つ強みである「自発性と多様性」を失うことなく、社会の「インフラ(あたり前にあるもの)」となっていく事が望ましいと、湯浅さんは言う。「インフラである以上、行政の関わりも必要では?」と問いかけると、「バラつきはあるが、こども食堂に補助金を出す自治体は増えてきている。しかし、行政が出てきて制度化してしまえば、様々な条件も付いてくる」と危惧する。

例えば、「就学援助を受ける世帯の子の利用が何人以上」とか、「広さは人数に対しこれだけ」など。そうなってくると、今の「自発性と多様性」は、お金と引き換えに失われていくだろう。しかし、こども食堂の多くは財政が脆弱で、まだまだ安定していない。そんな中で閉める食堂があると聞けば、何とかした方がよいとも考える。そのためには、自発性と多様性を失わず、あたり前に「こども食堂のような場があればいい」という社会の合意形成が必要で、自治体も補助金を出すのなら、そうした「民の持つ強みを活かすためのお金なんだ」という認識を持ってほしいと語った。

公営住宅、個人宅、地域の会館、様々なカタチでこども食堂は運営されている
公営住宅、個人宅、地域の会館、様々なカタチでこども食堂は運営されている

 子どもも大人も、こども食堂という「気づきと交流の場」で出会い、同じ時を過ごしながら互いを知り、多様な価値観に触れる。そんな場で他者への想像力を鍛えられることにより、「子ども達が発する様々なサイン」に気づくことも出来るようになるだろう。こうした事の有用性をどれだけの人が感じ取れるかが、こども食堂が「インフラ」となるかどうかのカギとなる

きちんと自分の話を聞き、気持ちを理解してくれる出会うべき大人と、地域の中にある、家庭や学校とはまた別のこども食堂のような場(※6)で出会えるという事が、子ども達にとってどれだけ有用か。社会の一員である子ども達が、安心して育っていけるという事が、どれだけこの社会を豊かにするかはぜひ想像してみてほしい。

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(※1)「こども食堂2,200か所超える 2年で7倍以上 利用する子どもは年間延べ100万人超」より引用(2018/4/3ヤフーニュース 湯浅誠氏による配信)

(※2)相対的貧困状態:その国の全世帯の可処分所得の中央値の半分以下で生活すること。 4人世帯で年収約240万円、月収約20万円。飢えはしないかもしれないが生活は厳しい。

(※3)大阪市西成区:人口約11万人。こども食堂には子どもの貧困支援以外の一面もあると考え、本取材は子どもの貧困率が高い大阪府の中でも高い数値を示しつつ、子どもに関する様々な取り組みがなされている大阪市西成区のこども食堂に限定した。

(参考資料:子育て貧困世帯 20年で倍 39都道府県で10%以上(2016/2/18 毎日新聞)/子どもの貧困 大阪市15.2% 平均年収半分未満で (2017/4/14 毎日新聞)/国民生活調査 子どもの貧困13.9%、12年ぶり改善(2017/6/27 毎日新聞)/大阪市子どもの生活に関する実態調査報告書(西成区版))

(※4)要保護児童対策地域協議会:要保護児童の早期発見やその適切な保護、又は要支援児童及びその保護者または特定妊婦への適切な支援を図るため、関係機関、関係団体及び児童の福祉に関する職務に従事する者その他の関係者が当該児童等に関する情報や考え方を共有し、適切な連携の下で対応していくこと。(大阪市要保護児童対策地域協議会設置運営要綱より一部抜粋)。

簡単に言うと、地域の気になる子どもや家庭を、行政民間交えた関係機関で情報共有し、見守ろうという会議体。

(※5)湯浅誠:社会活動家/法政大学現代福祉学部教授/「こども食堂安心・安全向上委員会」代表

(※6)こども食堂の中には、補助金を受けていなかったり、こども食堂関連のネットワークに加盟していない食堂もある。また、登録制などにして、あえてクローズドで運営し、ピンポイントに支援を行うこども食堂もあれば、こども食堂とは名乗らないが、同様の取り組みを行う個人、団体もある。ここでは遊び場や無料学習支援塾なども含め、「利用する子どもが必要とし、その子にとって有用な全ての場」という意味合いから「こども食堂のような場」という表現にした。

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以下にこども食堂関連のヤフー募金ページを紹介する。本記事や今回取材させて頂いた各食堂のリンクと共にご覧いただき、こども食堂などの「こどもの居場所」に対し、社会の関心が高まることを願う。

全国のこども食堂を安心・安全な場所にこども食堂の保険加入をすすめたい! - Yahoo!ネット募金

子どもたちに温もりと栄養を~冬休み「こども食堂」プロジェクト~ - Yahoo!ネット募金

【この記事は、Yahoo!ニュース個人の動画企画支援記事です。オーサーが発案した企画について、取材費などを負担しているものです。この活動は個人の発信者をサポート・応援する目的で行っています。】