Yahoo!ニュース

「うっせぇわ」大反響の驚異の18歳・Ado、台頭を果たしつつあるボカロネイティブ世代の新たな才能

柴那典音楽ジャーナリスト
(Ado 提供:ユニバーサルミュージック)

2021年にブレイクするアーティストは誰か? 昨年は紅白歌合戦にも出場を果たしたYOASOBIが音楽シーンの台風の目となったが、今年もネット発の新世代の才能が台頭していきそうだ。今回はそんな期待の存在を紹介したい。

圧倒的な迫力の歌声と反骨精神の持ち主、Ado

 まずは昨年10月23日にメジャーデビューを果たした18歳の女性シンガー、Ado。デビュー曲の「うっせえわ」は、ミュージックビデオのYouTube再生回数が3000万回を突破(1月16日時点)と、すでに大きなセンセーションを巻き起こしつつある。

まずその魅力は、10代とは思えない迫力を持つ歌声だ。「うっせえわ」では、喉を潰してがなり上げる歌声を中心に、裏声やウィスパーボイスを自在に織り交ぜ、圧倒的な表現力を持つヴォーカルを披露。「正しさとは 愚かさとは それが何か見せつけてやる」という歌い出し、「はぁ? うっせぇうっせぇうっせぇわ くせぇ口塞げや限界です」というサビなど挑発的で毒に満ちた歌詞、畳み掛けるような曲調も印象的だ。一度聴くと耳から離れない中毒性を持った楽曲となっている。

Adoは2002年生まれの18歳。小学生のときにボーカロイドをきっかけに音楽に出会ったという「ボカロネイティブ世代」のシンガーだ。2017年、14歳のときに「歌ってみた」動画をニコニコ動画に投稿し「歌い手」としての活動を始めた。注目を集めたきっかけは、ボーカロイドプロデューサーとして活動してきたコンポーザー・くじらの楽曲「金木犀 feat. Ado」に参加したことだった。

その後も様々なクリエイターの楽曲に参加してきたAdoだが、2020年3月に発表されたjon-YAKITORYの「シカバネーゼ feat. Ado」がSpotifyの国内バイラルチャートで1位となるなど急速に知名度をあげていく。

メジャーデビュー以降はボカロPを作詞作曲に迎えたオリジナル楽曲を相次いで発表。syudouが作詞作曲を手掛けた「うっせえわ」に続き、昨年12月24日に配信された「レディメイド」はすりぃが楽曲を手掛けている。スウィング・ジャズの要素を取り入れた曲調に乗せドスの利いた声で型にはまらない反骨精神を歌い上げる「レディメイド」も、Adoの独特な魅力を感じさせてくれる一曲だ。

年齢・性別非公表。儚く切ない声で孤独に寄り添うyama

続いてはyama。2020年4月に発表した「春を告げる」が再生回数5000万回超(1月16日現在)とすでにブレイクを果たした存在とも言えるが、今年はさらなる飛躍の年になりそうだ。

2018年にYouTubeとニコニコ動画にボカロ楽曲のカバーを投稿し歌い手として活動を開始。素顔も明かさず、年齢や性別や出身も一切明かされていない。謎めいた存在でありながら、儚くも芯のある中性的な声を活かしたその歌唱力だけでファンを増やしてきた。

注目を集めたきっかけは、2019年11月に発表されたくじら「ねむるまち feat. yama」にボーカリストとして参加したこと。ソロ名義初のオリジナル曲「春を告げる」も、くじらが作詞作曲を手掛けている。

2020年10月には「真っ白」でメジャーデビューを果たし、12月には一発撮りのパフォーマンスを鮮明に切り取る人気YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」にてメディア初登場。こちらも大きな反響を集めた。

先日には『報道ステーション』にてインタビューに応え、地上波テレビ初登場を果たした。仮面をつけながらの出演ではあったが、自らの声で音楽に込めた思いを訥々と語る映像は、yamaという歌い手の”素顔”を感じさせるものだった。

ネガティブなものを持ちつつも、光を、救いを求めて、

必死に葛藤しながらも頑張るというのを軸に置いている。

(中略)

自分自身のことは未だに自信ないし好きにはなれていないけれど、

でも、もがくことはやめたくない。

だんだん、本当に少しですけど、自分を許せるようになってきているなと思います。

(報ステ特集「素顔明かさず異例大ヒット yama初インタビュー」より)

インタビューの中でこう語る言葉が、とても印象的だ。

1月11日には、新曲「麻痺」が発表された。作詞作曲を手掛けたのは「真っ白」と同じくボーカロイドプロデューサーとして活躍してきたクリエイターjohnを中心とした音楽プロジェクトTOOBOE(トオボエ)だ。

青春の葛藤を描いたこちらの曲も大きな反響を呼んでいる。

くじら、syudou、 柊キライ……続々と台頭するボカロシーンの新世代の才能

また、着目すべきは、楽曲制作を手掛けるクリエイターの活躍だ。こうしたクリエイターたちはすでにボカロPとして人気を築いてきていることもあり、自らの名義で作品を発表しキャリアを重ねる土壌も築かれつつある。

たとえば、くじらは2020年10月に前述の「ねむるまち feat. yama」や「金木犀 feat. Ado」なども含め、ボーカロイドと歌い手を迎えた曲を2枚組それぞれに収録したアルバム『寝れない夜にカーテンをあけて』をリリースしている。

Ado「うっせぇわ」を手掛けたsyudouは11月にボーカロイドアルバム『必死』をリリースしている。

2020年12月に「ラブカ?」をボーカロイド・flowerとAdoによる歌唱の両バージョンで同時発表した柊キライも注目の存在だ。

イラストレーターや映像作家も含め、シンガーとクリエイターが相乗効果をもたらしつつフラットに関係を取り結ぶ音楽シーンの土壌が生まれつつある、とも言える。

新たな形で成功を掴むニューカマーの躍進に期待したい。

音楽ジャーナリスト

1976年神奈川県生まれ。音楽ジャーナリスト。京都大学総合人間学部を卒業、ロッキング・オン社を経て独立。音楽を中心にカルチャーやビジネス分野のインタビューや執筆を手がけ、テレビやラジオへのレギュラー出演など幅広く活動する。著書に『平成のヒット曲』(新潮新書)、『ヒットの崩壊』(講談社現代新書)、『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』(太田出版)、共著に『ボカロソングガイド名曲100選』(星海社新書)、『渋谷音楽図鑑』(太田出版)がある。

柴那典の最近の記事